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ノスタルジーはなぜストレス解消になるのか~懐かしい場所と私の付き合い方

2026.09.17 2026.9.17

懐かしいものに触れたあと、なぜか元気になっている。そんな経験はありませんか。私は繊細な特性から日々ストレスを抱えていて、いろいろな解消法を試してきました。その中でも確実に効いているのが、懐かしいものに触れることです。

ノスタルジー(懐かしさ)が、なぜストレス解消につながるのか。長い間、理由がわからないまま続けてきました。今回は、その理由を調べてみた話を書きます。

懐かしいものに触れたあと、なぜか元気になっている

私はレトロなものが好きです。幼少期のキッチン雑貨を再現したようなグラスや鍋、文房具のサクラクレパスやフエキのりの容器をかたどったお菓子。お店で見かけると、とてもワクワクします。YouTubeで昔観ていたテレビ番組やCMを観たり、昔好きだった音楽を聴いたりすると、一瞬で過去の風景がよみがえります。つらかった出来事が、良い思い出に変わっていることもあります。最近の昭和レトロブームが、私はすごく嬉しいのです。

面白いのは、このブームを支えているのが若い世代だということです。自分が生まれる前の時代のものに、強い懐かしさを感じる方が増えていると言われています。懐かしさは、実際にその時代を生きた人だけのものではないようです。

かつて「病気」と呼ばれていた懐かしさ

調べてみて、驚いたことがあります。ノスタルジーという言葉は、もともと医学用語でした。故郷を離れた人が抱く強い郷愁を指す言葉で、長い間、治すべき病として扱われていたそうです。「昔ばかり振り返るのは後ろ向き」という感覚は、そのころの名残なのかもしれません。

今は、見方が変わってきています。昔の思い出を語る回想法(過去を振り返って語る心理療法)は、認知症の非薬物療法のひとつとして位置づけられています。科学的根拠のレベルは、それほど高くはないそうですが、気分や意欲の改善においては有効性が示されているそうです。よく効く薬ではないけれど、心を支える働きはある。この控えめな感じが私にはかえって信用できました。

心の中で母と会話をする私

私がいちばん大好きな思い出の場所は、梅田にある阪急百貨店です。母がここで働いていて、新聞記者だった父が取材で訪れ、対応した母と出会って結婚しました。私にとって、始まりの場所なのです。阪急三番街も同じです。母がよく服を買っていたお店と同じ場所にあるお店で、私も服を買います。今は別のお店になっていますが、この場所に母とよく来たということが嬉しくて、通っています。

それから、阪急電車の梅田駅の改札を出て、エスカレーターを降りたところにあるマクドナルドの前。中学生のころ、母と待ち合わせをした場所です。私はADHDの特性から、興味のある対象に夢中になってしまい、友達とはぐれることがよくありました。その日も友達とはぐれてしまい、母に電話をしたら、すぐに行くと言ってくれました。友達には悪いのですが、母が来てくれる方が嬉しかったのです。待っている間のワクワクした気持ちも、母の姿が見えた瞬間の、独り占めできる嬉しさも、いまだにハッキリと思い出します。こうした場所を訪ねて、心の中で母と会話をするのが、私の楽しみです。

継続する絆

今回調べていて、はじめて知った言葉がありました。継続する絆(Continuing Bonds)という考え方です。亡くなった方とのつながりを持ち続けることは自然で健康的なことだと、理論化したものだそうです。日本の先祖を敬う文化から着想したそうです。

驚いたのは、この考え方が広まる前のことです。亡くなった人にいつまでも話しかけたり、遺品を大切に持ち続けたりすることは、病的だとみなされやすかったそうです。心の中で故人と交わす会話は、この考え方の代表的な例として挙げられていました。私が何十年も続けてきたことに、名前がついていたのです。もし、亡くなった方を毎日思い出す自分を責めている方がいらしたら、お伝えしたいです。それは、おかしなことではないようです。

匂いと音は、私にとって強すぎるスイッチ

私は感覚過敏があります。特に音や匂いや人混みが苦手で、つらいときは一人になって静かに過ごします。普段は困ることの方が多い特性です。ただ、懐かしさに関しては、少し違う働き方をしているように感じます。

プルースト効果という言葉があります。ある匂いを嗅いだ瞬間に、その匂いと結びついた記憶や感情が、意図せずよみがえる現象のことです。研究では、こうして思い出される記憶には特徴があるとされています。古い出来事であること、心地よく感情が強く動くこと、そして、その場に戻ったような感覚をともなうこと。刺激を強く受け取ってしまう特性は、思い出も強く運んでくるのだと思います。だから良かった、とまでは言いません。苦しい面の方が多いのが正直なところです。ただ、そういう面もあるのだなと、最近は思っています。

懐かしさが、痛みを連れてくる日もあります

ここまで良い面を書いてきましたが、大事なことをお伝えしなければなりません。懐かしさは、いつでも優しいわけではありません。私はPTSD(心的外傷後ストレス障害)があります。母の誕生日と命日がある春先は、毎年あまり調子がよくありません。阪神・淡路大震災のあった一月も同じです。同じ思い出でも、元気な日には温かく、しんどい日には胸が締め付けられます。

調べていて、気になる報告もありました。落ち込みやすい傾向や、同じことを何度も考えてしまう傾向のある方の場合、懐かしい記憶がかえってつらい感情を引き出すことがあるそうです。つまり、誰にでも効くものではないということです。だから私は、「懐かしさを楽しみましょう」とは書きたくありません。つらい日は、思い出に触れなくていい。そう思っています。

私が続けている、懐かしさとの付き合い方

私なりの付き合い方を、3つ書いておきます。

1. 元気な日に訪ねる

思い出の場所は、落ち込んだ日の特効薬にはしません。少し元気な日に行くと、いちばん心が満たされます。

2. 一人で行かない選択肢を持っておく

つらくなりそうな場所には、夫と一緒に行きます。逃げ道があると思えるだけで、行ける場所が増えます。

3. 痛みが勝つ思い出には、無理に触らない

避けている場所もいくつかあります。それでいいと思っています。

そしてさらにもうひとつ、行ける場所には行けるうちに行くことです。私の思い出の場所である梅田も、大きく変わろうとしています。家族での食事や、大人になってからは父との待ち合わせに使った大阪新阪急ホテルは、2025年1月に営業を終えました。同じ年の12月中旬から解体工事が始まり、2028年秋まで続く予定だそうです。阪急大阪梅田駅も、リニューアル工事に入りました。さみしいです。ただ、思い出の場所がすべてなくなってしまったわけではなく(母がよく服を買っていた店のあった)阪急三番街はいまも営業しています。

最後に

今は亡き、大好きだった家族や、祖父母、親友、飼っていた犬。一緒に過ごした場所や、聴いた音楽や、好きだった食べ物。懐かしいものは、私にたくさんの癒しを与えてくれる、魔法のようなものです。同じように感じている方が、ひとりでも「自分だけじゃない」と思っていただけたら嬉しいです。

大切な方を亡くした悲しみや、日々の生きづらさについて感じている方もいらっしゃると思います。私も、これからも焦らず気長に、思い出とともに歩んでいきたいです。

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執筆者プロフィール

川田直美 (かわだ なおみ)

障害者ドットコムのコラムニスト・ピアサポーター
Webメディアで自身の発達障害(ASD・ADHD)やHSP、精神疾患(パニック障害)についてコラムを書いています。オンラインサロンや計画相談支援でも自身の障害を生かして活動しています。生きづらさを抱えながらも日々楽しみを見つけて暮らしています。
◇障害者ドットコム 公式サイト
https://shohgaisha.com/
◇川田夫妻の発達障害日記 https://www.youtube.com/@yuichi_naomi_hattatsu
 

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