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ヘルプマークと、見えない障害と歩んできた私の話

2026.06.10 2026.6.10

私は、発達障害(ASDとADHD)があり、二次障害としてパニック障害、そして阪神・淡路大震災をきっかけに発症したPTSDを抱えながら暮らしています。ピアサポーターとして活動する中で最近、ニュースでも気になるのはヘルプマークについてです。「つけたほうがいいのか迷っている」「悪用する人がいると聞いて、つけづらくなった」。当事者の方の声は、本当にさまざまです。今回は、私自身がヘルプマークをつけるまでの道のりと、つけてから感じている変化について、お話ししたいと思います。

ヘルプマークとは

ヘルプマークは、義足や人工関節を使っている方、内部障害や難病のある方、妊娠初期の方、そして私のように発達障害や精神疾患のある方など、外見から分かりにくい困りごとを抱えている方が、周囲に配慮を求めやすくするためのマークです。東京都が2012年に作成し、現在は全国の自治体に広がっています。多くの自治体では、申請すれば無料で受け取ることができ、診断書の提出も求められません。

赤地に白い十字とハートが描かれたあのマークを、電車やバスで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。カバンに下げておくことで、「席を譲っていただけると助かります」「困っているように見えたら声をかけてください」という気持ちを、言葉にしなくても伝えることができます。

私がヘルプマークをつけるまでの葛藤

つけるまでに、私には時間が必要でした。私がASDとADHDの正式な診断を受けたのは、5年前のことです。PTSDやパニック障害の診断から約30年ですが、「私なんかがつけていいのだろうか」「もっと大変な方がいるのに」という気持ちが、なかなか拭えなかったのです。ヘルプマークをつけて優先席で座っていると蹴られたり、歩いているとぶつかられたり、後をつけられたりと、嫌な思いをしたという声を聞くことも多くて怖くなっていました。

ヘルプマークをつけてから変わったこと

ヘルプマークをつけてから、外出が楽になりました。ASDの感覚過敏があるため、私は人混みや特定の音、匂いがとても苦手です。電車も長らく苦手で、特に新幹線にやっと乗れるようになるまで、本当に長い時間がかかりました。電車に乗るときにヘルプマークをカバンに下げるようになってから、混雑した車内で気分が悪くなったとき、優先席を譲っていただいたり、気にかけて声をかけてくださったりすることが何度かありました。

マーク自体が魔法のようにパニック発作を止めてくれるわけではないのですが、マークがあることで優先席のある車両や思いやりスペースのあるエレベーターに乗りやすくなり、結果として発作が起こらないようにできたり、「もし何かあっても、誰かが気づいてくれるかもしれない」という安心感が、外に出る一歩を後押ししてくれます。

ヘルプマークの裏面のシールに「パニック発作が起きると、しばらく動けなくなることがあります」「落ち着くまで見守ってください」と書くのもいいと思います。発作中はうまく言葉が出てこないので、書いておくと安心です。緊急連絡先や服用中の薬の名前を書いておく方もいらっしゃいます。災害時にも役立つので、これからつけてみようという方には、ぜひ書き添えておくことをおすすめします。

災害と、見えない障害

少し話が広がりますが、私は震災の経験から、「もしもの備え」については人一倍、考えてしまうところがあります。地震や火事のニュースを見ると今でも体がこわばりますし、サイレンの音には敏感に反応してしまいます。

災害時、避難所のような環境は、感覚過敏のある人間にとっては本当に過酷です。明るすぎる照明、絶え間ない音、知らない人との距離の近さ。発達障害や精神疾患があることを口頭で説明する余裕は、おそらくその場ではありません。だからこそ、ヘルプマークのような「言葉にしなくても伝えられる手段」は、私たちにとって命綱のような意味を持ちます。普段から身につけて慣れておくこと自体が、いざというときの備えになると、私は感じています。

ヘルプマークについて周囲の方にお伝えしたいこと

ヘルプマークを安易につけるとか、悪用するという話を、私もときどき耳にします。当事者として悲しい気持ちになるのが正直なところですが、それ以上に心配なのは、そういう話が広がることで、「本当に必要な人」がつけづらくなってしまうことです。

もしご家族や周囲の方が、ヘルプマークをつけようか迷っている当事者の方がいらしたら、どうか「つけていいんだよ」と背中を押してあげてください。当事者の私たちは、想像以上に「自分なんかが」と思いがちです。診断書がなくてもつけられるという制度の趣旨は、まさにそういう方を取りこぼさないためにあるのだと、私は理解しています。

そして、街中でヘルプマークを見かけたとき、特別に何かをしなくても大丈夫です。ただ、少しだけ気にかけてくださるだけで、当事者にとっては大きな支えになります。

自分のペースで、自分が安心できる方法を

ピアサポーターとして同じ悩みを抱える方々と関わる中で、つける・つけないの正解は人それぞれだと感じるようになりました。大切なのは、自分のペースで、自分が安心できる方法を選んでいくことだと思います。同じように見えない障害を抱えている方が、ご自身の歩幅で外に出るための一歩を、ヘルプマークが支えてくれることを願っています。

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また、精神疾患は保障の対象外です。

執筆者プロフィール

川田直美 (かわだ なおみ)

障害者ドットコムのコラムニスト・ピアサポーター
Webメディアで自身の発達障害(ASD・ADHD)やHSP、精神疾患(パニック障害)についてコラムを書いています。オンラインサロンや計画相談支援でも自身の障害を生かして活動しています。生きづらさを抱えながらも日々楽しみを見つけて暮らしています。
◇障害者ドットコム 公式サイト
https://shohgaisha.com/
◇川田夫妻の発達障害日記 https://www.youtube.com/@yuichi_naomi_hattatsu
 

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