お問い合わせのご連絡は

0120-322-150

 平日9時〜17時(土日・祝日・年末年始を除く)

24時間
受付

お問い合わせフォーム

災害関連死を防ぐために

2026.08.27 2026.8.27

平成28年熊本地震で亡くなった方の約8割は、地震の揺れでは亡くなっていません。熊本県のまとめでは、建物の倒壊などによる直接死が50人。一方、そのあとの避難生活で体調を崩すなどして亡くなった「災害関連死」は225人(令和7年4月時点※)。直接死の、4倍以上です。これは、脅しで書いているわけではありません。逆です。関連死は、防げる死だからこそ書いています。

平成28年熊本地震から10年目となる今年、7月28日に令和8年熊本地震が発生しました。7月31日時点で、348カ所の避難所に9,532人が避難していて、約7万9千戸で断水が続いています(熊本県発表)。

揺れを生き延びた命を、関連死で失わないために。今まさに使える制度と知識を紹介します。

 僕は、障害福祉の現場に30年立っています。阪神・淡路大震災では西宮市で1年間、被災者支援に携わりました。平成28年熊本地震では被災障害者支援のトーク&ライブを主催し、能登半島地震でも支援を続けてきました。災害の「あと」に何が起きるかを、見てきた者として伝えさせていただきます。

※参考 熊本県熊本地震10年特設サイトhttps://www.pref.kumamoto.jp/site/h28kumamoto-earthquake/

 

最初の災害関連死は、本震の2日後だった

 平成28年熊本地震で、最初の災害関連死がいつ出たか、ご存じですか。

本震の2日後です。

車中泊をしていた51歳の女性が、エコノミークラス症候群(足にできた血栓が肺に詰まる病気)で亡くなりました(平成28年熊本地震では5万台を超える車中泊が発生しました。実際、エコノミークラス症候群で入院した51人のうち、42人(約8割)が車中泊を経験していました)。

阪神・淡路大震災では、関連死が出始めたのは発生から2〜3週間後でしたが、熊本は違いました。数日後から亡くなる方が出て、そのあと急増していったのです。

そして令和8年熊本地震でも、車中泊は起きています。停電や断水、余震への不安から、駐車場や自宅の敷地で夜を過ごす方が大勢いると報じられています。高齢の方や、小さなお子さんのいる世帯ほど、「避難所は迷惑をかけるから」と避難所に行くのをためらっています。 

 

避難所にいられないのは、わがままじゃない

 ここで、はっきり書いておきたいことがあります。僕は「車中泊はやめてください」とは言いません。相談支援の現場で、避難所にいられない人たちを、たくさん見てきたからです。 

  • 音や光、人の気配で、パニックになってしまう
  • 知らない人だらけの空間に、どうしてもいられない
  •  声が出てしまう我が子への視線が、つらい

 発達障害や知的障害のある方とご家族にとって、体育館の集団生活は、それだけで特性の限界を超える環境になりえます。車を選ぶのは、逃げでも、わがままでもありません。家族を守るための、ぎりぎりの選択です。

だから、これだけお願いさせてください。車で夜を過ごすなら、 

  • 1時間に1回は車の外に出て、3〜5分歩く
  • 水分を少しずつ、こまめにとる(トイレを減らしたくて水を控えるのが、いちばん危ない)
  • 足首を回す。かかとを上げ下げする。ふくらはぎをもむ
  •  片脚だけの腫れや痛み、突然の息苦しさや胸の痛みは、ためらわず119番

 そしてもうひとつ。

熊本は連日35℃超え、体育館の約8割に冷房がないという報道もあります。昼間の車内は、命に関わります。 

熊本県がクーリングシェルター(冷房のきいた一時休憩施設)を開放しています。昼だけでも、涼しい場所に体を移してください。

 保険証がなくても、受診できます——今日使える制度

 国は発災当日の7月28日に、障害のある方への特別対応※をすでに出しています。厚生労働省の事務連絡です。今回の地震に限らず今後も災害救助法が適用されると厚生労働省から特別通達が出る、ということを知っておいてください。

内容を抜粋すると以下のような内容です。

  1.  「障害福祉サービス」の利用者負担は、減免できます
  2.  事業所は「定員オーバー」でも受け入れていい
  3. 保険証・受給者証が手元になくても、受診できます
  4. 相談支援専門員(福祉サービスの利用を一緒に考える専門職)が、いま安否確認に動いています

知っているかどうかで、災害発生直後からの2週間が変わります。内容を解説します。

※参考 災害救助法の適用を踏まえた被災した要援護障害者等への対応について(令和8年7月28日 厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/001730376.pdf

1.障害福祉サービスの利用者負担は、減免できます

被災して支払いが難しい場合、利用料の減額・免除ができると国が明示しています。お金を理由に、サービスの利用をあきらめないでください。 

2.事業所は「定員オーバー」でも受け入れていい

災害救助法適用時は、障害福祉サービス事業所の定員超過利用が認められています。つまり、いつも通っている事業所が、そのまま日中の居場所・避難先になりえます。「定員がいっぱいだから」と、あきらめなくていい。

 3.保険証・受給者証が手元になくても、受診できます

マイナ保険証や資格確認書を家に置いたまま避難した方も、氏名などを伝えれば、保険診療が受けられます。薬が切れそうな方は、我慢せず病院へ行ってください。 

4. 相談支援専門員(福祉サービスの利用を一緒に考える専門職)が、いま安否確認に動いています

国は市町村と相談支援事業者に、避難している障害のある方の安否確認と支援を要請しています。

平時から福祉とつながっていてほしい

福祉とつながっている人のところには、向こうから連絡が来ます。これが、僕がずっと「平時から福祉とつながっておいてほしい」と言い続けている理由です。

 平成28年熊本地震では、熊本市が176カ所の福祉避難所(配慮が必要な方のための避難所)を指定していました。でも、前震から10日たった時点で、受け入れられたのはわずか104人。想定の1割未満でした。

でもこれは誰かが悪いわけではありません。施設も職員も被災するのが、災害だからです。だからこそ、仕組みが計画どおりに動かない前提で、自分から福祉との線をつないでほしいんです。

現在熊本県は、配慮が必要な方への宿泊施設の提供や入浴支援も始めています。「避難所が無理なら、車しかない」ではありません。選択肢は、増えています。

 揺れのあとの数ヶ月が、本番——阪神・淡路で見たこと

僕が福祉の道に入った原点は、阪神・淡路大震災です。西宮市で1年間、被災者の支援活動に携わりました。そこで見たのは、揺れを生き延びたあとに、少しずつ弱っていく人たちでした。

ライフラインが止まった家で、避難をあきらめて暮らす障害のある方、仮設住宅で、誰とも話さなくなっていく方。

災害関連死は、地震の瞬間ではなく、数週間、数ヶ月かけて、静かに起きます。

 そんな中、ハッとするような光景もありました。忘れられないのは、被災した障害者施設の方々が、炊き出しで「支援する側」に立っていた姿です。障害のある人は、守られるだけの存在じゃない。あの光景が、いまの僕の仕事の原点になっています。

 もうひとつ、嫌なことも書いておきます。阪神のとき、被災地では災害に便乗した悪質商法が横行しました。今回も、熊本県がすでに注意喚起を出しています。

「屋根の修理」「保険金の申請代行」。

障害のある方や高齢の方は、特に標的になりやすい。注意喚起しあってくださいね。

 結びに

 災害関連死は、報道が減ったころに増えます。ニュースが日常に戻ってからが、被災地の本番です。みんなが忘れないでいることが、支援に繋がります。

避難所にいられないのは、あなたのせいではありません。市町村の障害福祉窓口か、通っていた事業所か、担当の相談支援専門員。いつでもどこでもいい、電話やLINEなどで支援を求めてください。

知的障害・発達障害・ダウン症・てんかん身体障害※・精神障害※ のある方のための総合保険
ぜんちのあんしん保険 この保険について知る

*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

執筆者プロフィール

川田祐一 (かわだ ゆういち)

株式会社障害者ドットコム代表取締役。主任相談支援専門員として自身も現場に立つ。自らも発達障害当事者であり、妻も障害当事者。「自己実現できる障害者を増やす」をミッションに、障害者向けWebメディア「障害者ドットコム」の運営、就労継続支援、計画相談支援、障害者雇用相談援助事業を行う。スタッフ17名中13名が障害当事者。

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事