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「共犯者」と言われた〜絆ホールディングス問題、一番の被害者は「一番弱い」利用者たちだった

2026.05.14 2026.5.14

「ということは、共犯者なんですね。うちには来ないでください」

先日、うちの事業所に相談に来てくれた方が、別の事業所の採用面接で実際にかけられた言葉です。絆ホールディングスのA型事業所で、ただ真面目に働いていた。それだけなのに。

この記事を書こうと思ったのは、今回の問題で傷ついた方々のことを、もっと多くの人に知ってほしかったからです。そして、もう一つ。同じ当事者として、「それでも前を向く理由」を、自分の言葉で伝えたかったのです。

絆ホールディングス問題で何が起きたのか

大阪市内で複数の就労継続支援A型事業所を運営していた絆ホールディングスが、国の給付金を不正受給していたとして、2026年3月に行政から指定取り消し処分を受けました。

不正とされている手法はこうです。

  1.  A型事業所の利用者を、グループ内の別会社に「一般就労」として移す
  2. 6ヶ月後、「就職定着の実績」として加算金を受け取る
  3. 雇用期間が終わると、また利用者に戻す
  4. これを繰り返す

 不正受給の総額は、およそ150億円。4月末に4つの事業所が閉鎖され、約1280人が職を失うことになりました。

ここで一つ、はっきり言わなければなりません。利用者の方々は、この構造を知らなかった、と。

 「長い間、一般就労で働いていたのに、気づいたらA型事業所に戻されていた。1ヶ月経ったら『もう一般就労は終わり』みたいな扱いになっていた」

 面談をしていると、こんな声が聞こえてきました。利用者は、自分が「制度悪用の道具」にされていた事実を、後から知ることになったのです。

 

二重の被害というリアル

今回、傷ついた方々は2回傷ついています。

1回目は、突然の解雇。障害のある状態で職を失うことは、健常者の離職とは意味が違います。次を探す体力、情報へのアクセス、面接の負荷。あらゆる面でハードルが高い。 そして2回目の被害が来る。就職活動で「共犯者」と言われる。

 元利用者は言います。

「絆ホールディングスのイメージがあるから、それだけをなんとかしてほしい」

 「なんとかしてほしい」という言葉の重さを、受け取れますか。

本人には何もできないんです。「自分は不正に関わっていない」と言っても、証明する手段がない。前職名を変えることも、過去を消すこともできない。

これは「組織の不正への連帯責任を、関係のない個人に押し付ける」という構造的な理不尽です。

 

 絆ホールディングスの元利用者45名と向き合って、見えてきたこと

うちの事業所には、絆ホールディングスの閉鎖を受けて、これまでに45名の方から相談がありました。  面談を重ねる中で、驚いたことがあります。                

45名中32名が「セルフプラン」を利用していたのです。

セルフプランとは、障害福祉サービスを利用するための「サービス等利用計画」を、専門職のサポートなしに本人や家族が自分で作る方式です。「自分で選んだ」と見えますが、多くの場合は「相談支援事業所が見つからなかった」「相談支援事業所を知らなかった」が実態です。

相談支援専門員がいれば、定期的なモニタリングで「今の事業所が本人に合っているか」を確認できる。もしかしたら、今回のような状況でも、早い段階で動けた方がいたかもしれない。

「最初から相談支援専門員がついてくれていたら、もっと早く動けたのに」

面談の中で、この言葉を何度も聞きました。

 

「前職の会社名」はその人の価値じゃない

僕は障害当事者でもあります。発達障害の影響で、リスクを過剰に恐れず動いてしまう特性があります。良い方向に作用することもあれば、失敗として表れることもある。

だから「環境に翻弄された経験を持つ人」の気持ちは、他人事じゃない。

採用担当者を責めたいわけではないのですが、「絆=不正=関係者全員NG」という判断は、正直かなり乱暴です。 不正を主導したのは経営陣です。利用者は、そこで支援を受けていただけ。

「絆ホールディングスで働いていた」という事実は、その人の能力や人格を何も語らない。それなのに「共犯者」と判断される。そんな困難な状況の中でそれでも次の一歩を踏み出そうとしている人を、きちんと見た上で採用できる企業は、本当に強いと思っています。

 「前職の会社名」じゃなく、「その人が何をしてきたか」を見る。それができる人や組織が増えれば、救われる人が確実にいます。

 

環境が奪えるのは、今いる場所までです

最後に、絆ホールディングスの事業所で働いていた方、利用されていた方に直接伝えさせてください。あなたが「共犯者」でないことは、明らかです。次の一歩を踏み出す力は、誰にも奪えない。

 採用面接で心ない言葉をぶつけられたとしても、それはその担当者の判断が雑だっただけで、あなたの価値とは何の関係もありません。

 就職活動は消耗します。前職バイアスという余計なものを背負わされた状態では、なおさらです。でも、どんな環境であっても、自分の仕事に向き合い続けたことは消えません。

  

次の一歩を踏み出す力は、誰にも奪えない

阪神・淡路大震災、北新地クリニック放火事件、能登半島地震。そして日々の計画相談支援の現場でも、大きな喪失を経験しながら、それでも次の一歩を踏み出していく人たちをずっと見てきました。

次の一歩を踏み出す力は、誰にも奪えない。今いる場所を奪われても、そこから動く力まで奪うことはできないのです。

一人で抱え込まず、相談できる場所に繋がってほしいと思います。うちの事業所でも、絆ホールディングスの利用者向けに相談窓口を設置しています。再就職先の情報提供、事業所移行のサポートなど、個別に対応しています。

まずは一歩、動いてみてください。

 絆ホールディングス利用者向け再就職・事業所移行支援相談窓口:https://x.gd/6P5Lq

障害者ドットコム:https://shohgaisha.com/

 

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*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

執筆者プロフィール

川田祐一 (かわだ ゆういち)

株式会社障害者ドットコム代表取締役。主任相談支援専門員として自身も現場に立つ。自らも発達障害当事者であり、妻も障害当事者。「自己実現できる障害者を増やす」をミッションに、障害者向けWebメディア「障害者ドットコム」の運営、就労継続支援、計画相談支援、障害者雇用相談援助事業を行う。スタッフ17名中13名が障害当事者。

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