ダウン症の子どもから大人までを医療でサポート 東京ダウンセンターご紹介

こんにちは。今回は、東京逓信病院で長年小児科医として診療を行いながら、院内に「東京ダウンセンター」を創設した小野正恵先生へのインタビューをご紹介します。このような貴重な機会を設けて頂き、誠にありがとうございます。

 

小野正恵先生のプロフィールは、当コラムの執筆者プロフィールにもある通り、小児科医としてダウン症のあるお子さんから成人まで幅広い年齢の方々とその家族に寄り添って来られました。とても緊張しながらお会いしたのですが、出迎えて下さった小野先生の笑顔と優しい声に包まれて、安心してインタビューをさせていただきました。

「東京ダウンセンター構想」とは

 

持田:はじめまして。この度はインタビューを受けて頂き誠にありがとうございます。まずは、小野先生が当初「ダウン外来」を立ち上げた経緯から教えていただけますか?

 

小野先生:私は小児科医として勤務を始めて間もなくから、先天性の代謝異常症の患者さんに立て続けに出会う機会がありました。さらに、先天的な(つまり、生まれつき)病気には、代謝の病気だけでなく、多くの形態異常、機能異常も含まれ、その原因も遺伝が原因のものも、そうでないものも含まれます。

すべて遺伝現象によって生じるという意味で、遺伝性疾患と言いますが、そうした広い意味での遺伝性疾患に意識が向き、セミナーを受けて勉強をしたことも染色体異常の代表でもあるダウン症候群に関心が深くなるきっかけでした。そして遺伝のカウンセリングの勉強や実践も始めました。

 

持田:遺伝カウンセリングを行う中で、ダウン症のあるお子さんと接する機会も多かったのですね。

 

小野先生:そうですね。遺伝性疾患というものは、一生の問題なのでどうやったらいい方に解決できるかをご家族と一緒に考えることが必要です。ダウン症のある方々は世界中におられます。

ご家族が苦労される部分もありますが、その中にもちろん「幸せ」もあるので、それをいかに大変じゃなく感じて明るい気持ちで過ごせるかをご家族と一緒に考えて、彼らに伴走したいと思うようになったのです。

 

持田:伴走する、という寄り添い方が家族にとっては一番安心すると思います。ダウン

外来ではどのようなことから始められたのですか?

 

小野先生:赤ちゃんの時のダウン症の発達に関しては、親御さんが抱えている「我が子は歩けるようになるのか、しゃべれるようになるのか」という不安に寄り添いながら、「歩き始めが2歳頃とゆっくりですが、上手に歩けるようになりますよ」というアドバイスをしてきました。「ダウン症児の赤ちゃん体操」を、総合診療の中に組み込む形で始めました。

※ 「ダウン症児の赤ちゃん体操」は小児科医の藤田弘子先生が、約50年近く前にダウン症候群の乳幼児とその親御さんを支援する目的で考案した、早期療育のひとつ。

このスタイルは、精神運動発達を自分の目で確かめることができるため、甲状腺ホルモンの分泌や心不全の悪化状態に早く気づくことができているのも利点のひとつです。

大学など大きな病院で定期チェックを受けている場合でも、その間隔が広いことも多く、そうした隙間を埋めることにもつながったと思います。

赤ちゃん体操のお部屋 東京逓信病院にて(持田撮影)

 

持田:ダウン症のあるお子さんの診察から始まったのですね。

 

小野先生:はい、そうです。ダウン症のある赤ちゃんのことを包括的に診てきたのですが、学童期、思春期、成人期、と歳を重ねるたびに課題が出てきて、それが切実になっていきました。

20年、30年経ったらどうなるのだろう…と不安ですよね。そこで成人期のダウン症のある方もサポートしたいと思うようになりました。

どのように開設されたのか

 

持田:小野先生は、「東京ダウンセンター」をどのように始められたのですか?

 

小野先生:総合病院なので、すべての科の先生に協力を求めました。当時の院長に掛け合いに行ったら喜んでいただいて、マルファン症候群のある人を対象にしたマルファン外来を立ち上げた経験もあるので「非常によくわかる」と仰ってくださって、部課長会議でそのプランを説明しました。「ダウン症のある方はすべての科に関わりが必要なので、よろしくお願いします」と協力を仰いだのです。

 

持田:先生方の反応は、どうでしたか?

 

小野先生:鎮静をしないと診察も検査もできない患者さんがいます。麻酔科にお願いすることもあります。皆さん、ダウン症のある方々に向き合ってくれて、徐々に科を超えた連携が定着してきました。

ダウン症には不慣れでお困りの先生には、小児科医が採血し、検査に付き添い、鎮静処置を行い、点滴のお手伝いをすることもあります。「ダウン症のある患者さんも、ゆっくりとやれば落ち着いて薬を飲んでくれる」など、ちょっとしたノウハウを皆さんと共有しながら、ここまで来ました。

 

持田:小野先生の情熱と丁寧な説明、そして信頼があったからこそ、「東京ダウンセンター」ができたのですね。

 

中編 成人期のダウン症の方が直面する課題とは】に続く

ここまでのインタビューを終えて

「東京ダウンセンター」は、多くのご家族が待ち望んでいた医療体制の先駆けだと思います。ダウン症児の赤ちゃん体操を通して、病気の早期発見にもつながり、保護者の皆さんの気持ちも和らぎます。すばらしい取り組みだと思います。

執筆者プロフィール

持田恭子

1966年生、東京都出身。ダウン症の兄がいる妹。
海外勤務の後、外資系金融機関にて管理職を経て、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会代表理事に就任。父を看取り、親の介護と看取りを経験し、親なきあとの兄との関係性や、きょうだい児の子育てについて講演を多数行っている。障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい」を対象に「中高生のかたり場」と「きょうだいの集い」を毎月開催。その他に、きょうだい、保護者、支援者が意見交換をしながら障害者福祉と高齢者介護の基礎知識を深めるエンパワメントサポート講座を開講。親子の気持ちが理解できる、支援者として家族支援の実態がつかめる、と好評。自分らしく生きる社会づくりを目指している。

【講演実績】
・保護者向け勉強会(育成会・NPO法人・障害者支援施設)
・市民フォーラム
・大学、特別支援学校(高等科)

【職員研修】
・外資系銀行
・社会福祉事業団

【メディア実績】
・NHK Eテレ「バリアフリーバラエティ番組バリバラ」
・NHK Eテレ「ハートネットTV」
・その他ニュース番組など

【著書】
自分のために生きる
電子書籍Kindle版 https://amzn.to/3ngNMS6

【ホームページ】
https://canjpn.jimdofree.com/

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事