お問い合わせのご連絡は

0120-322-150

 平日9時〜17時(土日・祝日・年末年始を除く)

24時間
受付

お問い合わせフォーム

精神科に失望した日、救われた日 

2026.07.24 2026.7.24

知的障害・発達障害のある息子の精神科受診のため、私はこれまで3つの病院、5人の主治医にお世話になってきました。

今感じるのは、病院によって対応が違うこと、また医師によって診察の仕方や治療法の提案、薬の出し方も様々だということです。

医療の力を借りることで、光を見いだし、救われたと感じることがある一方で、通院の意味を感じられなかったり、通院自体が家族を疲弊させているという話も耳にします。

今回は私がこれまで感じてきた、精神科に対するモヤモヤと感謝を吐露してみたいと思います。患者の家族としての、正直な思いです。医療に携わる方にも、読んでみていただきたいです。

通院という名の地獄

すみません! ごめんなさい!

待合室で走り回る子どもを落ち着かせようと、何度も頭を下げながら追いかける母親。多動性のあるその男の子は母親がひとりでは抑えきれないほどの体格で、ソファーでジャンプしていたかと思うと、他人の帽子を取って投げ、座っている人の脚を叩きながら逃げ回ります。

これは私が昔、精神科の病院で見た光景です。狭い待合室は、このお母さんにとって地獄であったに違いありません。障害のある子どもの通院は、多くの親にとって相当な負担です。

子どもへの精神薬投薬をためらったら、医師に「投薬しないなら、できることは何もない」と1分で診察室を追い出された知人もいます。

病院に来るだけで疲労困憊なのに、たどりついた診察室の中で、医師の対応でさらに傷ついていることだってあるのです。

心を扱う専門家なのに!?

息子が通院を始めたときの最初の医師は、早く診察を終わらせたいという気持ちがありありと伝わる方でした。

「病院に来るのはお母さんだけでいい」と言われた時は驚きました。

私は苦しむ息子を自分で救えないから、専門家に診て欲しくて、連れてくる大変さなどかまわずに通っているのです。息子は会話もできるのに「向き合いません」と医師の側から言われたようで、絶望しました。

自分が担当している子どもが、今日はどんな表情で来院するか、気にはならないのでしょうか。患者の心に向き合うことも、精神科医の大切な役割ではないのでしょうか。

薬は増えるばかりなのに、息子の自傷行為もチックも悪化する一方で、家庭の空気はどんどん沈んでいきました。後に、この病院から転院する決断をしました。

知ってる?5分ルール

ここで最近知った情報を紹介させてください。
精神科の診察時間が短い理由のひとつに、診療報酬制度の仕組みがあるといわれています。
精神科の再診では、診察時間によって診療報酬(点数)が定められています。

・ 5分未満 : 55点=550円
(精神科継続外来支援・指導料)

・ 5分以上 ~ 30分未満 : 315点=3,150円
・30分以上 ~ 60分未満 : 410点=4,100円
(通院精神療法 ※精神保健指定医による診察の場合)

つまり5分以上であれば、5分診ても29分診ても、病院が受け取る診療報酬は同じです。(ぜんち共済注※2026年7月現在の情報です)

医師不足や患者数の多さも相まって、精神科の診療は5分前後になることが少なくありません。その背景には、このような診療報酬制度の仕組みもあるといわれています。これが巷で「5分ルール」と呼ばれているものです。

限られた時間のなかでひとりでも多くの患者に対応し、病院経営を成り立たせるためには、日本の制度設計上、効率重視になるのも仕方のないこと、ともいえるでしょう。

また本当に大切なのは診察時間の長さではなく、症状が改善すること、たとえ短時間でも信頼関係を築き患者が安心して通院できること、ではないでしょうか。

私たち患者も、診察時間がタイトになりがちなことを考慮し、話したいことをまとめてメモを持ち込むなど、ポイントを押さえたやりとりを心がけることが必要かもしれませんね。

こんなに違う医師の対応

大学病院へ転院したあとのことです。病院の都合により、主治医が2度変更になりました。驚いたのは、同じ病院であっても、医師によってこれほどまでにアプローチや姿勢が異なるのか、という点です。それぞれの医師の対応をご紹介します。

【医師A】
前医で息子の薬が増え続け、私も希望を失い無気力になっていましたが、この医師は薬を減らしたいという私の意向を受け止めてくださいました。
処方した薬がどう影響したかに注目して、少なくても合う薬を求めて「あれがだめなら、これ」と工夫してくださいました。
たくさん薬を飲んでいたころより、息子は調子が良くなりました。

【医師B】
息子の服薬拒否に対抗するため、医師Aからも提案のなかった「貼る薬」を処方してくださいました。薬といえば飲むものと思っていたので、こんな方法もあるのかと驚きました。
体に発作が起きず脳内でだけ起きるてんかんの可能性を挙げ、てんかんの検査もしてくださるなど、ほかの医師にない着眼点をお持ちでした。

【医師C】
現在お世話になっている女性の医師です。診察では息子本人に最近の様子をたずね、会話から状態を探ってくださいます。
一通り話すと、医師は息子を待合室で待つよう促します。息子に私と医師の会話を聞かせないためです。「自分のダメなところを話題にされる」という屈辱を、息子が味わうことのないようにという配慮です。これには感激しました。
母である私に困りごとはないか、気持ちが安定しているかを気に掛けてもくださいます。
子どもにとって母親の心身の健康が大切だとよく分かっておられるのです。

3人の医師に共通するのは、こちらの悩みや心配事をなかったものにせず、真摯に向き合ってくれたことでした。

小さな配慮が患者を救う

消化器の難病を持つ息子は、大学病院の内科にも通っています。
内科で点滴を受けている最中にパニックを起こし、大声を出して暴れてしまうこともあります。

そんなとき外来の看護師さんは、空いている処置室を私たち親子だけのために開放してくださいます。息子はまずいことをしていると自分でも分かっていますが、暴れてしまう自分を止められないし、こんな自分を見られるのはつらいことです。だから人目のないところへ移動できることは、私にも息子にもストレス軽減になり、とても助かるのです。

コラム冒頭の待合室で逃げ回るお子さんの場合も、病院側のこのような配慮が親子を救うと、心底思います。

薬よりも患者を癒やすもの

医師が抱えているものは患者だけでなく、病院の経営やスタッフの教育、書類作成、ご自身の学びなど多岐にわたり、診察に時間やエネルギーを費やせない面はあるのかもしれません。

効率化も大切だとは思います。しかし、私が医療関係者の方々に今一度問いかけたいのは、診察時間や診療報酬の枠組みに追われる中でも「人間としてのその人」に、どれだけ心を向けられているのか、ということです。「この患者さんは、ご家族は今、どんな思いでここに座っているのか」と。

そうしてひとりの人間に向き合おうとする小さな配慮や眼差しこそが、時にどんな薬よりも患者や家族の心を支える力になるのではないでしょうか。

知的障害・発達障害・ダウン症・てんかん身体障害※・精神障害※ のある方のための総合保険
ぜんちのあんしん保険 この保険について知る

*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

 

 

執筆者プロフィール

細川 有美子 (ほそかわ ゆみこ)

1968年生まれ、福島県在住。
バックパッカーとして海外旅行中に出会ったエジプト人と2000年に結婚。現地で子供2人を出産する。2003年子供と帰国したのち、息子の発達障害が判明。夫とは2005年に離婚。
これまでに自閉症(中等度発達遅滞)・ADHD・精神障害・難病(クローン病)の診断を受けた息子の子育てと現在を、Instagramで発信。
2014年より取材・執筆活動を開始し、現在は事業所でのパート勤務、再婚の夫とふたりで米づくりにも奮闘している。
◇たきちゃん農場 https://www.takirice.com/
◇Instagram https://www.instagram.com/yumiko_days

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事