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障害のある子を置いて旅に出る ─ショートステイ利用わが家の場合─

2026.05.28 2026.5.28

私は独身のころ、リュックひとつで海外へひとり旅に行くことが大好きでした。予約するのは往復の航空券だけ。初日の宿すら決めないで日本を発つことがほとんどで、見知らぬ土地へ足を踏み入れる冒険と、帰国の日まで誰にも何の制約も受けることない開放感に、ゾクゾクしたものです。

ところが結婚・出産してからは、当然その自由はありません。特に知的障害と発達障害のある息子は、成人したとはいえ自立にはほど遠く、歯みがきひとつ取ってもサポートが必要なので、離れるわけにはいきません。そして息子と一緒の行動は、感覚過敏やこだわりに付き合うことで、どうしても制限が出てきます。

そんな中、私は今年、再婚の夫と結婚10周年を迎えたので、夫の退職・還暦も含めてお祝いの夫婦旅行を計画しました。息子にはその間、短期入所(ショートステイ)事業所に滞在してもらうことに。

旅好きなのに、今回は置いてけぼりの息子。果たして施設利用を受け入れてくれるでしょうか。今回は息子のショートステイ利用についてのお話です。

宮古島・与那覇前浜ビーチ。青い海と、目が開けていられないほどの眩しい白砂に癒やされました。

「ぼくはショートステイに、放置されに行きます」

実は息子のショートステイ利用ははじめてではありません。3年ほど前に、日中息子を見てくれている母を旅行に行かせるため利用していました。

当時、はじめて自分が入る個室を見た息子は「わぁ!ひとり暮らしに憧れていたんです!」と目をキラキラさせ、利用後も「また行きたい」とまで言っていたのですが……。

今回、夫婦旅行へ出発する2カ月ほど前に、「ショートステイに入ってもらう」と伝えると、息子は難色を示しました。「ぼくは旅行に行けないんですか。おばあちゃんはぼくがお世話するので、みんなで行きませんか」などと、何度か説得してきたのです。

夫婦の記念の旅だからと言い聞かせ、連れて行けない代わりに、別日に息子とだけの日帰り温泉旅行を約束することで、なんとか受け入れてくれました。息子はあとで、おばあちゃんに「ぼくはショートステイに、放置されに行きます」と話していました。

ショートステイ先を選ぶときの、私なりのポイント

息子が利用する施設は相談支援員さんの紹介で知りましたが、私が「ここに決めよう」と最終的に思えたのは、実際に下見をして、面談を受けてみてからでした。

息子にはクローン病という胃腸の難病があり、当時は病状が安定していなかったので、私は食事の内容を心配していました。提供しているメニューを見せていただくと、魚中心で野菜も多く、きちんと手づくりされていることが好印象でした。

また建物の構造が、長い廊下の左右に個室が並んでいる造りで、落ち着きなく歩き回る息子が廊下へ出たときに、スタッフルームから目が届きやすいことも安心につながりました。

そもそもこの施設はグループホームで、居室の一部をショートステイ用に使っているのですが、息子が通所している生活介護事業所の利用者が数名入居しているため送迎バスが立ち寄ります。通所方法の心配もクリアできて助かりました。

「こんなこと頼んでいいのかな」

私は、普段私が息子にしているケアを、宿泊中も同じように受けてほしいという気持ちがあり、こんなこと頼めるのかなと思いながらも、利用にあたって希望する支援を施設に伝えました。

・病気のためNG食材を残すことを許してほしい
・通所しない日の朝は無理に起こさず、朝食なしで良い
・一日のはじめの食事の前に、チーズを与えてほしい(血糖値の急上昇を防ぐため。チーズは持参しました)
・薬は吐き出すこともあるので、飲み込むまで見届ける
・入浴時、体や頭の洗い方の指導を希望
・おやつや飲み物は指定の時間に与えてほしい(詳しくは後述します)

施設側はこの全てを快く引き受けてくださいました。
ショートステイは生活の場なので、利用者のペースが崩れないよう配慮してくださっているのを感じ、ありがたさを噛みしめました。

唯一断られたのは「通所日の昼食をあらかじめ外に買いに行けないか」という相談でした。息子は生活介護事業所で出される昼食の匂いが少々苦手で、普段は弁当を持参しているので、宿泊中はコンビニ弁当などを持ち込めないかと思ったのです。

職員数の都合で、付き添っての外出が難しいとのこと。仕方なく、息子には生活介護の昼食を食べてもらうことにしました。さほど嫌がることなく、従ってくれました。

持ち込み食品は与える日時を指定

今回、息子は5泊利用しました。持ち物は日数に応じたタオルや着替え、歯ブラシなどの日用品、薬などです。洗濯は毎日、職員さん指導のもと本人が洗濯機にかけるので、それを考慮した衣類の枚数を持たせました。

うちの場合「一日のうちに、(施設の食事以外に)これを与えてほしい」という飲食物を持ち込みます。おやつ、チーズ、栄養剤(医師に処方された水に溶かす粉末)、ペットボトルの飲料2本(ものすごく水分を摂るうえに、施設で自由に飲める麦茶は受け付けない)、スティックタイプのコーヒーなどです。

これらを日ごとに小分けし、名前と息子本人に渡してほしい日時を記入しました。施設側からは「いつ何をしてほしいか明確であれば、要望はウェルカムです」という心強い姿勢を感じました。

ショートステイで息子が拒んだ唯一の支援

私の旅は早朝発のため、前日の夜に息子とショートステイ先に向かいました。息子は観念したように自分の個室へ荷物を運ぶと、「さっさと行ってください」と私を追い出したので、ちょっとさみしい気持ちになりました。

宿泊中の息子はパニックを起こすことなく落ち着いていて、生活介護事業所へは送迎車で問題無く通所し、通所しない日は共有スペースのダイニングで、スマホやゲーム機で遊びながら過ごしたようです。

「素直で言葉遣いがていねいなので、癒やされました」と言っていただくほど、安定した状態で宿泊期間を過ごすことができました。

ただ入浴介助(男性職員が対応)だけは、息子がかたくなに拒んだとのこと。体の洗い方を教わってきてほしい気持ちがありましたが、嫌なことにNOを言えるのも大事なことと捉えることにしました。

ショートステイ、利用する理由はなんでもいい

子どもを置いて、旅に出る。

望んでいるのに、行動を起こすにはどこか罪悪感に似たブロックがあることを自分でも感じていました。でも今回それを振り切り、行ってみて、本当によかったです。

大好きな飛行機に乗り、普段できない体験や、大自然、グルメなどを楽しんできました。自分の窓を開け放ち、風を通して空気をまるごと入れ換えたかのように、リフレッシュすることができました。常に頭をフル回転させながら、仕事と家事に追われる日々に戻っても、なんだか以前より心が楽なのです。自分を満たすことの大切さを実感しました。

もしも、「自分のリフレッシュのためにショートステイを利用するなんて許されない」と考えている方がいらっしゃったら、伝えたいです。障害のある子がショートステイを利用する理由は、親の仕事や入院などの「仕方がないこと」でなくても全然かまわないということを。ご夫婦でデート、ひとり旅、推し活、エステ、子離れの練習……あなたなら、何をしたいですか?

ディナーショーを予約し、ショーの中でバンドに記念日を祝ってもらうサプライズを夫に仕掛けました。歌い手さんから名前を呼ばれて驚き、喜ぶ夫の顔が見られて大成功でした!

自由な時間をあきらめないで!

最後に気になるショートステイ利用の料金に触れておきます。
息子(成人)が利用した施設の場合、このようになります。

・家賃     0円/日
・食材料   300円/一食
・水道光熱費 400円/日

子どもと一緒の旅も、もちろん楽しい。でも自分のためだけの時間も、私はぜひとも欲しい派です。

同じ気持ちのママ・パパも、自由はあきらめなくて大丈夫。リフレッシュして新しい気持ちで子どもに向き合うことは、きっとご家族にとって、プラスになることでしょう。

伊良部島にある「ヌドクビアブ」という洞窟。天井からガジュマルの根が垂れ下がる神秘的な空間で、神が宿る御嶽(うたき=聖地)としても知られています。

 

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*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

執筆者プロフィール

細川 有美子 (ほそかわ ゆみこ)

1968年生まれ、福島県在住。
バックパッカーとして海外旅行中に出会ったエジプト人と2000年に結婚。現地で子供2人を出産する。2003年子供と帰国したのち、息子の発達障害が判明。夫とは2005年に離婚。
これまでに自閉症(中等度発達遅滞)・ADHD・精神障害・難病(クローン病)の診断を受けた息子の子育てと現在を、Instagramで発信。
2014年より取材・執筆活動を開始し、現在は事業所でのパート勤務、再婚の夫とふたりで米づくりにも奮闘している。
◇たきちゃん農場 https://www.takirice.com/
◇Instagram https://www.instagram.com/yumiko_days

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