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「親なきあと」相談室とは②

■全国に広げたい「親なきあと」相談室

 

親が悩んでいるとき、将来を考えると不安でしかたがないときに、とりあえず駆け込める窓口が近くにあると心強い。全国各地域に相談窓口があれば、悩む親たちを支える拠り所になれる。そう考えて、私は講演会などでいろいろな場所を訪れた際に、「親なきあと」相談室を開いてください、とお願いしています。

「親なきあと」相談室が全国に広がって、障害者と家族のサポートをしてくれる団体がどの地域にもでき、親たちがいつでも相談できる状況になれば、悩みを自分たちだけで抱え込まず、不安なときには話を聞いてもらい、一歩前に踏み出せる……そんな環境ができてほしいと願っています。

社会福祉法人、弁護士や司法書士、行政書士、FPや、親の会などに、個人あるいは団体など組織の形態は問わず、取り組んでほしいと考えています。ユニークなところでは、複数のお寺が相談室を開設して、障害者家族に寄り添う支援に取り組んでくださっています。現在では相談室の数は約100か所まで増えてきました。

■大分県社会福祉事業団の取り組み

 

大分県社会福祉事業団では、2017年1月から県内6か所で「親なきあと相談室」を開設し、障害者の家族の相談に対応しています。

始まったときの取り組みの内容ですが、事業団内の相談員を対象に、親なきあとに関する制度や仕組み、相談事例検討会などの研修を行い、研修修了者は親なきあと相談員として活動します。

また、県内の行政や民間の専門職などと連携し、家族のニーズに合わせて必要な窓口につないでいるとのこと。県内のメディアなどでも取り上げられました。

そしてこの社会福祉事業団の取り組みは、行政も動かすことになりました。2019年からは、親なきあと相談員の研修事業に県が予算をつけることになりました。3年間の事業のあと、今度は市町村が独自で事業を展開できるよう、新しいステージで継続して予算化しています。大分県の事業として、「親なきあと相談室」が展開されようとしています。

現在の取り組みは次のようになっています。地域ごとに「親なきあと相談員ネットワーク」を構築し、身近な地域で誰でも相談できる体制をつくるために、市や圏域単位で「親なきあと相談研修会」を開催、県から委託を受けた社会福祉事業団がサポートします。

また、市町村が開催する「親なきあと相談会」に、事業団の相談員が出張し、指導・助言を行います。3年間の事業終了後は、市町村が持ち回りで研修会やネットワーク会議を開催できる体制を構築することになっています。

これが実現すると、最終的には、各市町村の社会福祉協議会等に「親なきあと」相談窓口があり、地域の専門職とも連携して、親や家族の相談にワンストップで対応できるようになるのです。

 

■大分県モデルをすべての都道府県に!

 

この取り組みをうかがい、やはりこういった相談室は、当事者の地域の状況や、社会資源をよく知るかたがたによって運営されるべきだ、という思いを強く抱きました。ちなみに、群馬県の社会福祉事業団でも、大分と同様の取り組みを始めています。

大分県のように、社会福祉事業団、あるいは社会福祉協議会のような、地域に根差した福祉のプロが事務局となり、相談員を養成しながら最初の相談先になる。さらに、障害福祉に理解のある司法書士や行政書士、弁護士、社会保険労務士、税理士などの専門職と連携して、お金に関する相談については具体的な対応をしてもらう。このような体制がすべての地域にできてくれれば、障害者の家族としては大変心強いと思います。

もちろんそこからは専門職に対する費用が発生しますが、悩む家族としては当然必要な対価だと理解してくれるはずです。

前述のように、現在でも私のネットワークで「親なきあと」相談室を開設している100か所の窓口があります。こういった資源もぜひ有効に活用してほしいと思います。

もしかしたら、相談室を開設してもさほど相談件数は多くないかもしれません。しかし、大切なことはいつでも相談できる窓口が存在することだと思います。

全国の福祉行政に携わるみなさんには、大分モデルを参考にしていただき、「親なきあと」相談室の開設や、地域の専門家との連携による体制づくりに取り組まれるよう、ぜひお願いしたいと思います。

大分県社会福祉事業団でも、視察やヒアリングのご要望はウエルカムとのことですし、もし私に何かできることがあるようでしたら、積極的にご協力したいと考えています。下記ホームページからお気軽にメールでご連絡ください。よろしくお願いいたします。

「親なきあと」相談室 https://www.oyanakiato.com/

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都社会保険労務士会所属。
東京都行政書士会世田谷支部所属。
2級ファイナンシャルプランニング技能士。
世田谷区区民成年後見人養成研修終了。
世田谷区手をつなぐ親の会会長。

主な著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
        (ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)
障害のある子が安心して暮らすために~知っておきたいお金・福祉・くらしの仕組みと制度(合同出版)

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