成年後見人に親族はなれない?データから見る意外な事実

「障害のある子の成年後見人になりたいけど、親である私はなかなかなれないと聞きました」「きょうだいに後見人をお願いしようと思っていて、了解も得ているんだけど、裁判所が勝手に専門家を選んじゃうそうですね…」

成年後見制度について、このような相談や質問を受けることがよくあります。正直に申しますと、私もそのような傾向はあるのだろうと思っていました。しかし、実際にはどうなのでしょうか。

■新しく発表されたデータでわかったこと

 

2019年3月、最高裁が「後見人には身近な親族を選任することが望ましい」という考え方を示しました。また、これがきっかけかどうかはわかりませんが、2020年(令和2年)から、後見申立て時に親族を候補者として記載されている割合が発表されるようになりました。以前から成年後見制度に関するデータはいろいろと公表されていたのですが、新しく追加になったものです。

最高裁判所の家庭局というところが出している、『成年後見事件の概況―令和2年1月~12月』というデータなのですが、これを見てみると、ちょっと意外な事実がわかりましたので、ご紹介したいと思います。

ここにある「成年後見人等と本人の関係について」によると、親族が後見人として選任された数は7,242件となっています。全体の件数は36,746件なので、割合でいくと約19.7%です。この数字だけ見ると「やっぱり裁判所は親族の後見人は認めないんだな」と思えてしまうかもしれません。

しかし、参考資料として「成年後見人等の候補者について」というデータがついていました。成年後見の申立ての際には、後見人を誰にしたいかという候補者名を書くことができるのですが、令和2年の2月から12月までのうち、親族を候補者として申請したものは全体の23.6%、親族の候補者の記載がなかったものは全体の76.4%となっています。

そもそも後見の申立ての時に、多くの人が親族を後見人の候補者に設定していないという実情があることがわかりました。

■障害者の後見人はかなりの確率で親族が認められる

 

時期が一致していないので単純には当てはめられないのですが、試しに令和2年の後見申立ての全体件数をこのパーセンテージで計算すると約8,680件になります。先ほどの7,242件と比べると、親族を後見人として申し立てた場合、約83.5%は認められているという結果になるのです。

認められていない残りの16.5%について、その理由の記載はありませんが、以下のような事情が考えられます。

・本人である被後見人に財産が多くある場合

・申立人以外の親族の同意書がないため、親族間でトラブルが起きると予想される場合

逆にそういったことがなければ、つまり障害者本人に多額の財産がなく、家族の同意書も提出されていれば、親族後見人は認められる可能性が高いと考えてよさそうですね。

■とは言え後見制度の利用は慎重に

 

親族が認められる可能性が高ければ、後見制度利用のハードルは少し下がると思います。ただ、だからと言ってすぐに利用しよう、と考える必要はないと私は考えます。年に1回の報告書提出の負担はありますし、本人の財産額によっては後見監督人が就く場合もあり、監督人には報酬も発生します。

成年後見制度はこれからも少しずつ形を変えていくことでしょう。

一度後見制度を始めたらやめることはかなり難しいのが現状ですが、もしかしたら、本当に必要な時、例えば相続手続きやグループホームなどの契約時だけ後見人が就くというスポット的な利用ができるようになるかもしれません。

後見人等に対する報酬の決め方も変わっていくかもしれません。あわてず情報を収集しながら、本人や家族の実情に合わせて、支援機関などとも相談しながら、後見制度の利用を検討していただければと思います。

 

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都社会保険労務士会所属
東京都行政書士会世田谷支部所属
2級ファイナンシャルプランニング技能士
世田谷区区民成年後見人養成研修終了
世田谷区手をつなぐ親の会会長

主な著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
        (ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)
障害のある子が安心して暮らすために~知っておきたいお金・福祉・くらしの仕組みと制度(合同出版)

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