引きこもりがちで、地域のつながりが薄いケース(親なきあと相談事例)

障害と診断されてはいないけれど、学校に行けない、働けなくなったという引きこもりの方の相談も良くお受けします。「親なきあと」の不安は同様ですし、特に本人と地域とのつながりが希薄な場合が多いので、より悩みは深いところです。

ひとり暮らしの準備を考えたい

 

息子さんは33歳。大学卒業後は一般企業に就職して、3年ほど働いていたのですが、ちょっとしたきっかけで出社できなくなり、その後はずっと家にいます。精神科には月に1度通っており、病院併設のデイケアにも顔を出すのですが、それ以外は近所のコンビニに行くくらいでほとんど外出はしていないとのことです。

両親と3人暮らし。きょうだいは遠方に住んでいる姉がひとり。身の回りのことはひと通りでき、持ち家なので親が亡くなってもこのまま家に住み続けることはでき、本人もそれを望んでいますが、税金や公共料金の支払い、ちょっとした困りごとの対応など、まったく支援がない状況では難しいだろうとのこと。親も高齢になってきたので、そろそろ将来に向けた準備を考えたいというご相談です。

福祉サービス以外でも使える制度はいろいろ

 

ひとり暮らしの支援としては、社会福祉協議会が運営している日常生活自立支援事業が考えられます。ただ、現時点ではご両親ともお元気なので、同居している状況ですぐに利用はできません。将来ひとり暮らしになったとき、あるいはご両親どちらかが亡くなり、残された親御さんにも支援が必要な状態になったところから利用することになると思います。一度詳しい話を地域の社協さんに聞きに行かれることをおススメしました。

経済的なことはあまり心配なさそうですが、相続で一時的に大きな財産を手にしてしまうと、適切な使い方ができずに短期間で無くなってしまうというリスクもあります。生命保険信託や信託銀行の遺言代用信託を利用して、本人に定期的にお金が給付される仕組みを検討したいところです。

お姉さんがいるとのことなので、ぜひ将来のことについて、話をする機会を持ってほしいということもお伝えしました。お姉さんのほうでも自分がどのように関わっていくべきなのか、そもそも弟がどんな状態なのか、心配されていることでしょう。まずは情報を共有したうえで、親がいなくなったあとはどうすべきかをお姉さん自身に考えてもらってください。合わせて、将来きょうだいで揉め事にならないように、遺言は両親それぞれ書いておき、そのことについて話しておくこともお願いしました。

今現在で一番欲しいのは、本人と地域とのつながりです。最近はひきこもりの支援について行政も力を入れていて、ボランティアの支援グループや家族会も増えてきています。無理に働きかけることはいけませんが、まずは地域の情報を手に入れておくことは重要です。いつか本人がその気になったら、こういうところにちょっと顔を出してみたら、とアドバイスしてあげたいですね。

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都行政書士会世田谷支部所属
2級ファイナンシャルプランニング技能士
世田谷区区民成年後見人養成研修終了
世田谷区手をつなぐ親の会会長

著書
障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」
障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
(ともに主婦の友社刊)

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