「親なきあと」相談事例① 

親が現役世代で子どもは20代のケース

「親なきあと」相談室にいらっしゃる方は、年齢や状況などさまざまです。そこで今回の連載では、具体的な事例をあげながら、親なきあとの生活をどう想定すればいいのかを、見ていきます。ご自分のケースではどう考えたらよいかの参考にしていただければと思います。

※なおここに紹介した事例は、現実にあった事例に基づいて、家族や環境などは個人が特定できないように変更を加えています。

■今は穏やかに過ごしていますが、将来が不安です

障害者本人は20代前半の女性。療育手帳の総合判定では重度知的障害者で、障害者総合支援法の障害支援区分は5。日中活動は生活介護施設に通所しています。

家族は50代の両親との3人暮らし。両親はそれぞれ働いていて、経済的な心配はいまのところありません。5才上の兄がいますが、別な場所に住んで働いています。

本人はひとりでは外出できませんし、お金の管理などもまったくできません。着がえや食事など、家の中での活動はほぼ介助はいりませんが、入浴やトイレなどは声がけしないと一人で出てこられないことがあります。

人とのコミュニケーションはとれるので、自分の意思を伝えたり、相手の言うことを聞いたりは問題なくできます。また、休日はヘルパーさんと外出することもあります。ショートステイも定期的に利用しています。

今は特に困っていることはありませんが、自分たちが面倒みられなくなったときのことがやはり心配です。親なきあとの準備は、まずどんなことから始めればいいでしょうか?

■地域のつながりを大切に、すぐに動く必要はありません

この方の場合、地域とのつながりはしっかりできているので、いますぐ何かしなくてはいけないということはありません。このまま生活介護施設に通い、移動支援などの福祉サービスを積極的に利用しましょう。

また、ショートステイもぜひ継続的に利用してください。親なきあとにどのような場所で生活することになるかはわかりませんが、いろいろな経験を積むことで本人の中にも将来のイメージを持つことができると思います。合わせて、成年後見制度を利用する可能性があるので、基礎的なことは勉強しておいてほしいと思います。

ただ、障害者本人の将来について、家族間で、特に本人の兄と情報共有しておいてほしいと思います。きょうだいは、親がいなくなったあとのことを彼なりに考えています。兄自身がどうすべきかを判断できるように、親の気持ちも伝えながら、彼の気持ちも尊重してあげてください。

本人には社会経験を積ませてあげながら、親のほうは有益な情報を得るために、家族会などが開いている勉強会には積極的に出席しておく、といった努力は怠らないようにしましょう。

執筆者プロフィール

渡部 伸

  • 1961年生、福島県会津若松市出身
  • 「親なきあと」相談室主宰
  • 東京都行政書士会世田谷支部所属
  • 2級ファイナンシャルプランニング技能士
  • 世田谷区区民成年後見人養成研修終了
  • 世田谷区手をつなぐ親の会会長
著書
障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」
障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
(ともに主婦の友社刊)

渡部 伸
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