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特別児童扶養手当の所得制限の話

発達障害専門のFPとして、日々ライフプラン相談をお受けする中で、毎回やきもきすることの1つ「特別児童扶養手当」の「所得制限」。本来は、障害のある子供と家族を支えるための制度のはずなのに、必要としている家庭が手当てを受給できないケースがある、不十分な仕組みだと思うからです。今回は、特別児童扶養手当と所得制限について解説します。

特別児童扶養手当とは?

特別児童扶養手当とは、身体障害や知的障害、発達障害のある20歳未満のお子さんを養育している家庭に支給される国の手当です。

1級・2級があり、2025年度時点では月額5万6,800円(1級)、3万7,830円(2級)が支給されます。毎年物価上昇に合わせて数百円金額が上がっているので、上記はあくまで2025年の金額です。

特別児童不要手当の支給要件や金額、所得制限の枠等は国で定められており、基本的に全国で統一されています。ただし、診査を担う医師の個人差による判断基準によるばらつきや、自治体による運用他対応の違い(申請者への情報提供や助言のていねいさなどを含む)から、自治体による受給格差が生じている現状があります。たとえば、自治体Aでは特別児童扶養手当を受給できなかった人が自治体Bに引っ越した後に受給できたという話はいくつもあります。

このように申請・受給に課題の多い制度ではありますが、受け取れると家計にとって非常に大きな効果があるので、支給要件に当てはまる可能性があるのであれば、まずは申請をしてみることをおススメします。

特別児童扶養手当について(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html

特別児童扶養手当の所得制限の計算方法

特別児童扶養手当には「所得制限」があります。一定額以上の所得があると(詳細は上のリンクから確認してください)、特別児童扶養手当が受け取れなくなってしまうのです。他の要件をすべて満たしていても、所得制限にひっかってしまうと特別児童扶養手当は1円も受け取ることができません。

ここで要注意なのは、特別児童扶養手当の所得制限は、「収入」ではなく「所得」が対象になることです。つまり、単純な年収額ではなく、必要経費や各種控除を引いた後の金額で判断されます。

所得は給与所得から所得控除の額を差し引いて算出します。※ここでは、受給者が会社員で給与所得のみの場合を説明します。

「給与所得」ー「所得控除」=「所得」

「給与所得」の金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に記載されている金額です。この金額から所得控除を差し引きます。例えば

  • 配偶者控除
  • 障害者控除
  • 特別障害者控除
  • 小規模企業共済等掛金控除

などです。その他、全員が一律で控除できる数字もあります。

注意したいのは、特別児童扶養手当における所得控除は、所得税や住民税における所得控除の金額とは異なる点です。例えば生命保険料控除は特別児童扶養手当において控除の対象にはなりません。

特別児童扶養手当の所得制限に含まれる人

所得制限の対象になるのは、手当を受給する人だけではありません。受給者本人、配偶者、および生計をともにする扶養義務者(障害児の同居する祖父母や兄弟等)についてもそれぞれの所得額が限度額を超えていないかをチェックされます。

誰か一人でも基準を超えると、その年度の特別児童扶養手当は「全部支給停止」となります。部分的にもらえる仕組みではありません。

特別児童扶養手当の所得制限の判定は、世帯年収では決まらない

特別児童扶養手当で注意する点として、もう1つお伝えしたいことがあります。それは、特別児童扶養手当の判定は、世帯年収では決まらないという点です。以下、拙著:『発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本』168ページより引用です。

例えば、次の2つの家庭を比べてみましょう。

 ◎特別児童扶養手当が支給される家庭
 世帯年収1,200万円 (内訳:夫の年収600万円、妻の年収600万円)

 ◎特別児童扶養手当が支給されない家庭
 世帯年収900万円 (内訳:夫年収900万円、妻0万円)

このように世帯年収が共働き世帯より少なかったとしても、家族の中で最も年収の高い人の数字で判定されてしまいます。正直、現代に合っていませんよね。アップデートが必要な制度だと個人的には考えています。

皆さんはどう考えますか?

特別児童扶養手当の所得制限:今後と対策

実はここ数年、この所得制限については政治の場でも問題提起が続いています。障害児家庭の親の会や福祉関係者からは、所得制限の撤廃や大幅緩和を求める声が高まっています。

2025年8月には、国民民主党が「障害児福祉に係る所得制限撤廃法案」を参議院に再提出し、特別児童扶養手当を含む障害児向けの給付の所得制限をなくす方向性を示しました。

まだ法案が通ったわけではありませんが、制度への問題意識が、国レベルでも共有されつつある段階と言えます。

とは言え、法律と財源の問題もあるため、所得制限の撤廃がすぐに実現する可能性は高くありません。それまでに私たちにできることは、特別児童扶養手当の所得制限とご家庭の所得との距離を確認することです。

もし、少額のオーバーが理由で所得制限にかかってしまっているのであれば、働きをセーブするのも手段の1つです。なぜなら、特別児童扶養手当が受け取れないだけで、世帯の可処分所得が約44万円も変わってくるからです。

(所得制限ギリギリだったご家庭で、働きをセーブする以外にできることもあります。それは、iDeCoの活用です。これらをまだ活用していないご家庭は、iDeCoをかけることで所得を減らすことが出来ます。もしギリギリ所得制限にひっかかる場合は、ご検討ください)

最後に

一般的な共働き家庭であれば、二人の収入を合わせても所得制限に引っかからず手当を受け取れる場合もあります。ところが、お子さんのケアに時間が必要な家庭では、片方の親がフルタイムで働くことが難しく、パート収入にとどまったり、専業主婦(主夫)を選ばざるを得なかったりします。そこでもう一人の親が家計を支えるためにフルタイムで働き、残業が重なった結果、所得が所得制限をわずかに超えて、その結果特別児童扶養手当が一切受け取れなくなってしまう。そんなねじれを抱えているのが今の制度です。

そして同時に、制度が完璧でないからこそ、いま目の前にある状況の中で、各ご家庭にとっての最善を一緒に探していくことが必要です。制度に対しては声を上げ続けつつ、個々のご家庭については、今できる最善の選択肢を一緒に探していくことを、発達障害専門のFPとして取り組んでいきます。

※この原稿は2025年11月に書かれたものです。最新の情報は厚生労働省または各自治体の公式サイトにてご確認ください。

 

執筆者プロフィール

岩切健一郎(いわきり けんいちろう)

発達障害専門FP。ファイナンシャルプランニング技能士1級。
1986年生まれ、宮崎県宮崎市出身。
自身もADHDがあり、お金に苦労した経験から発達障害専門FPとして活動。
親亡きあとのマネープラン、発達障害当事者のライフプランを
年間100件以上作成。
発達障害でも加入できる様々な保険の取り扱いあります。
保険にお悩みの方や親亡き後のお金のことでの心配な方はこちらからお問い合わせください。⇒https://hinata-hoken.com/

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