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自立とは、迷惑をかけないことではなく人に頼れること

私はお子さん(定型発達)の親御さん相手に講演をする機会が多いのですが、皆さんに「どんな子どもに育ってほしいですか?」と聞くと「人に迷惑をかけない子に育ってほしい」「どこへ出しても恥ずかしくない子どもに育ってほしい」「何でも一人でできる子に育ってほしい、自立!」という答えが返ってくることがしばしばあります。

子どもが親や他人の手を借り、ときにわずらわせることがあるのはあたりまえです。さらに「迷惑をかけること」と「人に頼ること」は全く別物ですが、子どもはこの両者のニュアンスの違いはわからないので、「人に迷惑をかけてはいけません」と親が子どもに言い過ぎると、困っているときに誰のことも頼れなくなってしまうかもしれないし、いじめを受けていることを先生や親に相談することも出来なくなってしまうかもしれない、と心配になります。

人は誰の力も借りずに生きていくことはできないのですから、助けてもらったら「ありがとう」、迷惑をかけてしまったら「ごめんなさい」と言えれば、それで十分なのではないでしょうか。

誰かの力を借りていくのも立派な自立のかたち

子どもに発達障害があっても、「人に迷惑をかけないこと」を子育て方針として挙げている人もいます。でも私は、誰かの力を借りて生きていく、これも立派な自立のかたちだと思っているので、この子育て方針には異を唱えたいと思います。

人生100年時代、寿命はどんどん長くなっていっています。親が亡くなった後の人生が長く続くことになります。そうなると、親が子どもの障害を隠して一人で孤軍奮闘するのではなく、障害があるとオープンにして、様々な人の力をどんどん借りること、またつながりをたくさん作ることが大切なのではないでしょうか。そして、その親の姿を子どもに見せていることが、子どもの自立のために大切なのではないかと感じています。

相談する力、他人に頼れる力を養っておくことが大切

さて親が亡くなった後、グループホームで生活していた人について、こんな話を聞きました。その人はある程度自立をしていたので、クレジットカードも持っていましたが、お金の感覚や価値の理解が不十分なため、ゲームで多額の課金をしたり、通販の広告に踊らされて自分のお財布事情を考えずドンドン買ってしまっていたりしたそうです。(成年後見人を付けていたらこのような問題は起こりにくいですが、成年後見人を付けるには毎月の費用がかかってしまいます。難しいですね……)

お金が底をつき、どうしようもなくなったとき、支援員に助けを求めこれが発覚しました。もし、それもしないで借金までしていたらと想像すると恐ろしくなります。

その人が支援員に助けを求める ことができたこと、これがこのケースのポイントだと思います。「人に頼ることはよくないこと」「何でも自分で解決しなくてはならない」と強く思ってしまうと、SOSを出せなくなります。相談する力、他人に頼れる力を日頃から養っておくことが身を助けます。

息子の場合

24歳の知的障害と自閉症のある息子は計算が苦手です。小学校一年生くらいの算数の力です。自分の苦手をわかっているので「僕はお金がわからないのでこのお財布から出してください」と店員さんにお願いしていた時期もありました。治安のよい日本ですから、これで余分にお金を取られたことはありません。(タッチ決済やQRコード決済といった便利な決済ツールに「頼る」のもよい方法だと思います。ただし、クレジットカードに連動させるかは各家庭で慎重にご判断ください!)

本当の自立とは、迷惑をかけないことではなく、人に頼る力があることをいうのでは?今回はそんなお話でした。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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