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<実録>B型事業所の利用手続きをやってみた!(福祉的就労について)

発達障害(ASD)と複雑性PTSDがある私。体調が不安定になりやすい、長時間の勤務が難しいなどの制約があり、一般就労だとうまく仕事が見つからずに悩んでいました。そんななか今回、私に合っていそうなB型の事業所を見つけたので、その利用手続きをしてきました。当事者として実際に申請しにいって体験したからこそわかる、詳細な手続きの流れや、スムーズにいかせるコツをシェアします。

編集部注※
タイトルにある「福祉的就労」とは、障害のある人が障害者就労施設(主に就労継続支援A型・B型、地域活動支援センター)で働くことをいいます。厳密には、「就労系の障害福祉サービスの利用」になり、市区町村での支給決定が必要になります。なお、お住まいの地域や時期によって利用手続きの詳細が異なってくる可能性がありますので、こちらの記事はあくまで「今回の宇樹さんの場合」としてお読みください。

1.B型事業所初回利用申請の流れ(「障害福祉サービス利用受給者証」を取得し事業所と契約する)

居住自治体に対して、福祉的就労利用の申請を行います。ゴールは「障害福祉サービス利用受給者証」の発行。比較的大変な手続きで、時間もかかります。実際に事業所を利用開始するまで最低2ヶ月ぐらいは見ておいたほうがいいかもしれません。

1_1. 主治医に福祉的就労の利用許可をもらう

定期的にかかっている病院やクリニックがあれば、そこの医師に、自分が福祉的就労をしていいか相談して許可をもらいます。私の場合は障害が精神障害で、精神科にかかっているので、精神科の主治医に相談しました。特に医師から書面を出してもらうなどはありませんでした。「主治医に相談してOKをもらった」という事実があればよいようです。(編集部注※障害者手帳の有無で医師の意見書(診断書)作成の要・不要は変わります)

1_2. 自治体の障害福祉担当課で利用申請

居住自治体の障害福祉を担当する課で利用申請を行います。

持参するとスムーズなもの

マイナンバーカードがあれば下記リストのうち2〜4は持っていかなくても自治体窓口側で情報をとってきてくれますが、全て持っていったほうがスムーズです。ちなみに障害年金の番号(基礎年金番号)は訊かれませんでした。

  1. マイナンバーカード or その他の本人確認書類
  2. 障害者手帳 or その番号がわかるもの(持っていれば)
  3. 自立支援の受給者証 or その番号がわかるもの(持っていれば)
  4. お薬手帳
    (障害支援区分認定の聞き取りのとき、治療している病気、通っている病院、飲んでいる薬の名前を全部訊かれたような記憶があります)
  5. 印鑑
福祉的就労の利用者に該当するかの確認

自治体窓口の利用申請では、以下の3つのうちいずれかがあれば、基本的には「福祉的就労の利用者に該当する」と認められるようです。

1.障害者手帳
2.障害年金受給の事実
3.自立支援医療制度利用の事実

なんとなくですが、最も重視されるのは1の障害者手帳なんだろうなと感じました。私は1から3まですべてあったので、「間違いなく利用者に該当しますね」ということで、とてもスムーズに話が進みました。

障害支援区分認定(認定がまだの人の場合)

利用者に該当するかの確認のあと、身体・精神症状についての詳細な聞き取りがされました。この聞き取りの結果、「確かに一般就労は難しい」と判断されれば、障害者手帳等がなくても利用許可が出るようです。

この詳細な聞き取りは「障害支援区分認定」と言い、障害者手帳の等級とはまた別に、1〜6までの等級で、支援を要する程度をはかるものです。この認定結果によって受けられる支援が変わってくるので、見栄を張らず、できないことはできないと正直に答えるのがよいと思いました。

ここまで終わったら、福祉的就労の利用申請自体は完了。福祉的就労事業所の利用自体は申請日以降いつからでもできるのですが、あくまで仮。正式な利用に至るにはもう少し手続きが必要です。

1_3.  支援相談員に「サービス等利用計画書」を作成してもらう

ここからは、「特定(計画)相談支援事業所」に所属している「支援相談員」という専門家に、「サービス等利用計画書」を作ってもらいます。

支援相談員を見つける

びっくりしたのですが、支援相談員は自分で見つけなければいけません(なんで?? なんでですか??? 不思議です)。私の場合は自治体窓口で特定相談支援事業所のリストを渡され、「より新しい内容は当自治体のサイトで見れます」と言われました。

支援相談員は基本的に人不足のようです。ほとんどの人がキャパいっぱいにケースを抱えていて、なかなか見つからないことが多いそう。しかし、私の障害者同士のネットワークからの情報で、支援相談員を見つけやすくなるコツを手に入れました。福祉的就労の支援相談員を見つけるコツは以下。

「なるべく開所したての事業所から先に連絡してみる」

私の場合、自治体のサイトで「特定相談支援」で検索して、特定相談支援事業所一覧のExcelファイルを見つけ出しました。このファイルを事業所開所年月日でソートし、開所年月日が新しい順に電話をかけてみました。

この方法で、なんと2軒めで相談員さんが見つかりました。障害者同士のネットワークに大感謝です。長期戦を覚悟していたので…これ、今のところ他のどこにも載っていないお役立ち情報なので、ぜひ活用してください。

ちなみに、相談支援事業所の人はわりとこちらの自宅まで来てくれることが多いとのことなので、事業所と自宅の位置関係はあまり気にする必要がないかもしれません。

​​支援相談員と面談(利用計画書の作成)

支援相談員さんとの面談では、家族の同席が必要なようです。夫とスケジュールを合わせて臨みました。

1回目の面談では自治体での申請時に渡された「サービス等利用計画案提出依頼書」という書類を相談員さんにお渡しし、以下のことを行いました。

・特定相談支援事業所との契約
・利用計画書作成のための聞き取り

全部で2時間半ぐらいかかりました。契約内容の説明と合わせ、現在の状況や本人・家族の希望、できることできないこと、好きなこと、苦手なこと、生い立ちやキャリア、スキル、将来の目標など、すごくいろんなことを訊かれました。

2回目の面談では、相談員さんの作ってくれた利用計画書をチェックしてフィードバック、スムーズにいけば完成として署名捺印します。

1_4.「障害福祉サービス利用受給者証」が発行される

障害福祉サービス利用受給者証が届いたら、相談員さんと、利用を予定している福祉的就労事業所の人たちが集まって会議を行って計画書を完成させてくれ、正式に福祉的就労を利用する準備が整います。

1_5. 福祉的就労事業所と契約して利用開始

ここまで来て、やっと福祉的就労を利用する事業所と契約を行い、正式利用開始となります。利用する事業所を「ここ!」と具体的に決めるタイミングは比較的いつでもよいようです。主治医や自治体が決めるのは「福祉的就労利用の可否」だけという感じでした。

​​私が利用を希望したのは別の自治体にあるB型事業所(在宅利用タイプで、居住自治体が事業所所在とは別の自治体にある人が多い)でしたが、居住自治体では「この人は福祉的就労の利用者に該当するか」の判断をするだけ。私の自治体の担当者によると「利用する事業所がほかの自治体にあっても関係なく、事業所の側が『使っていいよ』と言うならそれでOK」とのことでした。選択肢が増えるので利用者としてはとても嬉しいです。

2.手続きを一通り終えての雑感

自治体窓口での聞き取りでは、障害者手帳の診断名は聞かれなかったものの、身体症状・精神症状について詳細に聞かれました。あそこまで詳細に聞かれると思っていなかったのでちょっとびっくり。あとから、あれは「障害支援区分認定」というものだったと知って、なるほどと思いました。

障害支援区分認定には、薬やいろんな身体科・精神科疾患についての知識も必要ですし、申請者の尊厳を傷つけないようにしなければいけないので、相当にレベルの高い作業だと思います。自治体の、数年単位で配置換えするような体制では誰も幸せにならないんじゃないかな…… とちょっと感じました。

私が当たった係の人はたまたますごく有能そうな感じのいい方でとても快適に進みましたが、知識やスキルのない人に当たったらとても不快な思いをし、通る申請も通らなかったりします。いわゆる「担当者ガチャ」を回すことになるのですね。最初は臨戦態勢で行くとか、支援者など援護射撃してくれる人を連れていくなどし、少しでも違和感を感じたら担当替えをお願いするのもありだと思いました。

私の場合、自立支援医療制度や障害年金もそうでしたが、相変わらず福祉には「知らない制度には申請できない」という致命的な構造的問題がありますね。当事者同士の口伝で初めて知る情報ばかりです。情報強者や当事者ネットワークのある人でないと満足のいく福祉にたどりつけない現状はなんとかならないのでしょうか… … どんな人でもワンストップで福祉につながれる社会になってほしいですね。2025年を目途に開始されるという「就労選択支援」サービスが実際にどんなものになるのか気になっています。

執筆者プロフィール

宇樹義子(そらき よしこ)

1980年生まれ、千葉県出身、早稲田大学卒。発達障害/トラウマ性疾患当事者。 高機能自閉症(ASD)と複雑性PTSDを抱える。2023年現在、日本語教師を目指して言語学を勉強中。最愛の夫と猫(♀)と暮らしている。

【著書】
#発達系女子 の明るい人生計画―ひとりぼっちの発達障害女性、いきなり結婚してみました
80年生まれ、佐藤愛 ―女の人生、ある発達障害者の場合

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