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ヤングケアラーが未来に希望を持てる社会づくり

こんにちは。最近メディアでも報道されている「ヤングケアラー」をご存知ですか?

障害や病気などがある家族の世話や見守り、介護などのケアをする人のことをケアラーといいます。少子高齢化や働き方の変化から、家族のケアを担う世代は若年化しています。

ヤングケアラーは、まさにその渦中にいる18歳未満の子どもたちです。

 

イギリスでの視察で知った「ヤングケアラー」の未来像

わたしが初めて「ヤングケアラー」という言葉を知ったのは、2014年2月に開催されシンポジウムでした。イギリスから講師として来日したチルドレンズ・ソサイエティのヘレン・リードビターさんに、その場で「イギリスに視察に行きたい」と申し出て、3月にはヘレンさんの元を訪れました。

チルドレンズ・ソサイエティは、英国各地から集まる慢性疾患や障害のある親や兄弟姉妹の世話をしているヤングケアラーを支援している団体です。

現地のヤングケアラー達は、自分がヤングケアラーであることを誇りに思っていることや、ケア経験を進学や就職に生かせる仕組みがあることをわたしに教えてくれました。

日本にもヤングケアラーがいたら「あなたはひとりじゃないよ(You are not alone)」と伝えてほしい」と、ヤングケアラーたちがメッセージを託してくれました。

 

帰国してすぐに、私はヤングケアラーの啓発活動を始めました。しかし、当時は「子どもが親の手伝いをするのは良いことだ」という考えがあったので、ヤングケアラーの現状はなかなか理解されませんでした。

 ヤングケアラーは大変な子どもではない

2020年、埼玉県が県内の実態調査を公表したことをきっかけに、国でも全国調査が実施され、2021年3月には、中学生でクラスの17人にひとり、高校生でクラスの24人にひとり、ヤングケアラーがいることが公表され、メディアでも紹介され始めました。

しかし、ヤングケアラーが直面している生活の困難さだけがクローズアップされてしまっているので、子どもたちは、自らを「ヤングケアラーである」と認めることが難しくなっています。「自分はたいしたことはしていない、もっと頑張らなくちゃ」と思い込み、ますます誰にも相談できなくなってしまうのです。大人も、どこに繋げたらいいのかわからないので、気になるけれど声をかけることができません。

ヤングケアラー本人には問題はないのです。家族のケアを優先して進学を諦める、家族のことを打ち明けられない、周囲に理解されにくい、といった生きづらさや孤立感を抱えていることを見過ごしてきた社会こそが、ヤングケアラーへのサポートを「解決すべき課題」として捉えていかなければならないのです。

具体的には、子どもたちにケア経験があることで自然に身についている協調性の高さや、マルチタスクで物事をこなせるスキル、などポジティブな評価がされること、そして、「あなたもヤングケアラーだね、こんなところで仲間に会えるよ」と声をかけられる社会にしていきたいと考えています。

ヤングケアラーが未来を語るプログラム

わたしたちは、イギリスで行われている「ヤングケアラー探求プログラム」を日本版に改良し、2020年4月から中高生のヤングケアラーに提供しています。家族のために費やしている時間や労力は、単なるお手伝いではなく「ケア役割」であるということを子ども自身が認識して、その経験を自分の人生にどう生かしていくのかについて対話を深めています。

子どもたちの変化には目を見張るものがあります。

初めて参加したときはチャットのみだった高校生が、仲間がいることで自信をつけ「自分もきょうだい児のために居場所を作りたい」と人前でプレゼンテーションができるようになりました。ほかにも、障害のある弟のことを誰にも話せなかった高校生が友達に弟を紹介できるようになりました。

 

埼玉県ヤングケアラーオンラインサロン

 自治体もヤングケアラー支援に積極的に取り組んでいます。埼玉県では自治体として初の「ヤングケアラーオンラインサロン」を主催することになりました。私たちは、このオンラインサロンの運営を行っています。今年10月から来年3月まで毎月1回Zoomを使って開催されます。

ここでは自分と似たような経験をしている高校生と出会えるので、かつてイギリスのヤングケアラーたちがメッセージをくれたように「自分はひとりじゃない」ことを実感することができます。

高校生で家族のケアをしている人であれば誰でも参加することができます。ご家族や知り合いに、きょうだい児や家族のケアをしている高校生がいたら是非お声かけ下さい。

申込先:https://young-carers.com/saitama_p_onlinesalon/

 

きょうだいヤングケアラーを主役にした短編映画を制作中

 

もう一つの取り組みとして、わたしたちは、ヤングケアラーと家族が孤立しない社会をつくるために、ヤングケアラーの物語を映像化していくプロジェクトを立ち上げました。

その第一弾として、きょうだいヤングケアラーを主役にした短編映画を制作しています。12月にYouTubeで一般公開する予定です。

これから制作をすすめていくために、私たちは初めてクラウドファンディングを行います。この映画制作は、ヤングケアラーのみならず、ケアラーである家族の一人一人に支援の範囲を広げ、「家族だけでケアを抱え込まなくてもいい社会づくり」に向けた最初の一歩となります。ひとりでも多くのヤングケアラーにこの映画が届くように、是非ご協力お願いします。

お申込みは下記サイトもしくはお電話でも受け付けています。

ヤングケアラー短編映画制作プロジェクト

https://camp-fire.jp/projects/view/495666

お問い合わせ電話窓口:03-6684-6444

子どもたちが家族のケアをしながらでも自分の力を存分に発揮できるようになれば、明るい未来像を描くことができます。これからは、むしろ胸を張って「わたしもヤングケアラーです」と言えるようになる社会を皆様と共に創っていきたいと考えています。

ケアラーアクションネットワーク協会 代表理事 持田 恭子

執筆者プロフィール

持田恭子

1966年生、東京都出身。ダウン症の兄がいる妹。
海外勤務の後、外資系金融機関にて管理職を経て、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会代表理事に就任。父を看取り、親の介護と看取りを経験し、親なきあとの兄との関係性や、きょうだい児の子育てについて講演を多数行っている。障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい」を対象に「中高生のかたり場」と「きょうだいの集い」を毎月開催。その他に、きょうだい、保護者、支援者が意見交換をしながら障害者福祉と高齢者介護の基礎知識を深めるエンパワメントサポート講座を開講。親子の気持ちが理解できる、支援者として家族支援の実態がつかめる、と好評。自分らしく生きる社会づくりを目指している。

【講演実績】
・保護者向け勉強会(育成会・NPO法人・障害者支援施設)
・市民フォーラム
・大学、特別支援学校(高等科)

【職員研修】
・外資系銀行
・社会福祉事業団

【メディア実績】
・NHK Eテレ「バリアフリーバラエティ番組バリバラ」
・NHK Eテレ「ハートネットTV」
・その他ニュース番組など

【著書】
自分のために生きる
電子書籍Kindle版 https://amzn.to/3ngNMS6

【ホームページ】
https://canjpn.jimdofree.com/

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