親ときょうだいがすれ違う3つの理由

わたしには、50代後半のダウン症と中等度の知的障害のある兄がいます。両親はすでに他界し、親なき後の真っ最中です。 両親が健在の頃、わたしは親に「(兄の)将来はどうするの?」と尋ねました。すると父から「お前には迷惑をかけないから心配しなくていい」と一蹴されてしまい、それ以降は何も聞けなくなってしまいました。

<本当に聞きたいのは、どれだけ備えればいいのかということ>

親御さんは、「1分1秒でも長生きをして、障害のある我が子の面倒をみたい」と願っているのではないでしょうか。 医療の発達により、障害があっても寿命は確実に伸びているので、障害のある子どもに親が看取られる時代になってきました。 障害のある方が安心して暮らすために、法律が整備され、教育や就職の機会もできて、暮らしを支える福祉サービスも充実してきました。 これからは親なき後のご本人の暮らしを考えることが課題となっています。

わたしが親に「将来どうするの?」と尋ねた時は、「自分はいつから、どのような準備をすればいいのか、将来の見通しをつけたい」という思いがありました。 しかし、親にとってみれば、先延ばしにしていた課題に触れてほしくないし、子どもからたやすく「どうするの?」と質問されたら、そこを回避したくなる気持ちになるのは当たり前だったのかもしれません。 親から「お前には迷惑をかけない」と言われると、お前は関係ないと言われたようで悲しい気持ちになりました。「迷惑」という言葉にも否定的な意味合いを感じてしまい、安心するどころか逆に不安な気持ちになってしまいました。

ここから先は、あるひとりの「きょうだい」の視点として捉えていただきたいと思います。すべてのきょうだいが同じ思いではないかもしれませんが、いままで「きょうだいの集い」で対話をしてきたことから抜粋してお伝えします。

<親ときょうだいがすれ違う3つの理由>

1.きょうだい児が疎遠になる
「幼いころはきょうだい同士でよく一緒に遊んでいたのに、急に疎遠になってしまった・・・」そんなことはありませんか? 親は「障害があってもお兄ちゃんのことを理解してほしい」「障害があることを悪く思わないで」と、きょうだい児を諭してしまうことがありますが、それを聞いたきょうだい児は親から信用されていないと感じて反発してしまいます。 そもそも“兄弟姉妹“というものは、お互いに距離を保ちながら成長するので、疎遠になることは当たり前のことなのです。

2.手を貸す親と、手を放すきょうだい
親は障害のある子どもを社会から守るために、あるいは人様の迷惑にならないように手を貸しますが、そんな親をみて、きょうだいは「できるまで待てばいいのに。過保護すぎるよ」と思ってしまいます。 自分が経験した学びや経験を障害のある兄弟姉妹にも体験してほしいという気持ちがあるきょうだいは、あえて手を放すことがあります。 わたしもかつてはそう思っていました。 しかし、母の在宅介護をして兄の世話をしながら仕事もしていた頃のわたしは、いつの間にか兄に手を貸すようになっていきました。 時間に追われていたので手を貸す方が早かったし、「兄ができるまで待つ」という心の余裕はありませんでした。 きっと親も同じ思いだったのではないでしょうか・・・

3.障害のある子どもが将来どこで誰と暮らすのか
これは親だけではなく、きょうだいも大きな関心を持っています。親は、障害のあるお子さんのことを心配していますが、きょうだいは、障害のある兄弟姉妹だけでなく、やがては高齢になる親のことも心配なのです。自分の未来像を描く時に、常に家族のケアをすることが頭の片隅にあります。何か選択をする時には、自分がこうしたいと思うより先に家族を優先してしまうことがあるのです。

このように、親ときょうだいでは「障害」の捉え方が大きく違います。こういった違いを知った上で親子対話がスムーズに進んでくれたら幸いに思います。

執筆者プロフィール

持田恭子

1966年生、東京都出身。ダウン症の兄がいる妹。
海外勤務の後、外資系金融機関にて管理職を経て、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会代表理事に就任。父を看取り、親の介護と看取りを経験し、親なきあとの兄との関係性や、きょうだい児の子育てについて講演を多数行っている。障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい」を対象に「中高生のかたり場」と「きょうだいの集い」を毎月開催。その他に、きょうだい、保護者、支援者が意見交換をしながら障害者福祉と高齢者介護の基礎知識を深めるエンパワメントサポート講座を開講。親子の気持ちが理解できる、支援者として家族支援の実態がつかめる、と好評。自分らしく生きる社会づくりを目指している。

【講演実績】
・保護者向け勉強会(育成会・NPO法人・障害者支援施設)
・市民フォーラム
・大学、特別支援学校(高等科)

【職員研修】
・外資系銀行
・社会福祉事業団

【メディア実績】
・NHK Eテレ「バリアフリーバラエティ番組バリバラ」
・NHK Eテレ「ハートネットTV」
・その他ニュース番組など

【著書】
自分のために生きる
電子書籍Kindle版 https://amzn.to/3ngNMS6

【ホームページ】
https://canjpn.jimdofree.com/

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