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特性のある子の水分補給をサポートする3つの方法

連日暑い日が続いていますね。今年は、6月から熱中症で運ばれたニュースが流れるようになりました。熱中症にならないようにと水分補給を促しても、特性のある子へのアプローチは難しいものです。わが家の高校1年生の息子も、今でこそ水分補給ができるようになりましたが、小さい頃は、「水を飲みなさい」と言葉かけをしたり、熱中症の恐ろしさを伝えたりしても、なかなかうまくいきませんでした。

熱中症は重症化すると最悪の場合、命に関わります。特性のある子に、どのようにアプローチをしていけばいいのか?親として、また家庭療育のアドバイザーとしての経験からお伝えしたいと思います。

「水を飲みなさい」という言葉かけですませていませんか?

子どもに水分補給を促すために、「水を飲みなさい」などの言葉かけをすることは当然のこと。なかなか飲まない子どもに対して、熱中症への不安からつい強く言ってしまうこともあるでしょう。最後には「飲みなさい!」と強く言ってしまうこともあるかもしれません。熱中症のリスクを考えれば、怒ってでも飲んで欲しいと思いますよね。

ただこのような場合、水分補給を習慣にすることは難しいかもしれません。

子どもの中では「水分補給=怒られること」という負のイメージがつき、ますます苦手なことと感じ、さらに水分補給を避けてしまう場合があるからです。

なぜ水分補給できない?特性のある子どもに見られる3つの原因

特性のある子は、なぜスムーズに水分補給ができないのでしょうか?考えられる原因を特性から考えてみましょう。

原因1. 感覚過敏・鈍麻があり「のどの渇き」を感じにくい

水分補給ができない原因のひとつに、「のどの渇きを感じにくい」ということがあります。

熱中症対策として、一般的に「のどが渇く前に飲みましょう」と言われていますが、この「のどが乾く状態」に気付くことが難しい原因に、感覚過敏や鈍麻があります。

例えば、暑さや寒さや痛みに鈍感な子どもや、ひとつのことに集中すると周りが見えなくなる子どもは、このような傾向があるかもしれません。息子もこのような傾向があり、頭痛や吐き気、嘔吐などの熱中症軽度の症状が出てから、実は水を飲んでいなかった、ということが何度かありました。

また、においや味に敏感な感覚過敏の子どもも水分補給に課題があります。例えば、「水しか飲まない」「味がついているものしか飲まない」など、こだわりが強いように見える場合がそれにあたります。偏食がある子どもに見られることが多いでしょう。息子も、小さい頃、ナトリウムやミネラルが豊富な麦茶が良いと思って買ったものの、一口も口にしなかったという経験があります。

 

原因2. 不器用で手先をうまく使えず水分補給のハードルが上がる

見落としがちな原因ですが、不器用な子どもや、握力の調整が難しい子どもも水分補給がスムーズにいかない場合があります。

  • コップに水を入れる時にこぼしてしまい怒られる。
  • 水筒のキャップを開けることが難しくてイライラする。

こちらも、「水分補給=怒られること」につながってしまいます。例えば、筆圧が弱すぎる・強すぎるなど、手先の力の調節が難しい子どもや、見え方(視覚)に問題がある子どもが当てはまるかもしれません。視力に問題がなくても、うまくものを捉えることができないと目と手の協応(目で見た情報を処理して手指の動作に反映させること)がスムーズにいきません。

 

原因3. 抽象的な指示を理解できない

発達障害の子どもは、「水を飲みなさい」と言われても、いつ(時間やタイミング)、どのくらいの量飲んだらいいのか分からず、「飲めない」場合があります。

例えば、「準備」や「片付け」、「宿題」などの言葉を聞いてもスムーズに行動することが難しい子どもは、抽象的な指示を理解できていない可能性があります。(すべてではありません)

「適当に」「喉が乾いたら」「喉が乾く前に」飲めばいいのにと思ってしまいますが、上にもあげた感覚過敏や鈍麻、さらにひとつのことに集中しすぎる傾向が重なると、ますます水分補給ができなくなってしまいます。

具体例でわかる!水分補給のサポート方法

今すぐできる具体的な対処法をご紹介します。

方法1.感覚特性にあった飲み物の工夫

水分補給がスムーズにいかない場合は、「何だったら飲めるのか?」中身や容器を観察してみましょう。常温がいいのか冷温がいいのか、氷のありなし、お茶、水、果汁少量を混ぜたフレーバーウォーター、薄めたスポーツドリンクなど様々な選択肢を試してください。また、中身が見えない水筒の場合には、何が入っているか分からない恐怖心から飲めない子どももいます。その場合は中身の見えるクリアボトルが有効な場合があります。

方法2.開けやすい容器や注ぐ前の準備で「飲みたい気持ち」を引き出す

まずは子どもが水筒をきちんと開け閉めできているのか確認してみましょう。苦労している様子が見られたら、子どもが開け閉めしやすい水筒にしたり、前もってコップに水を入れてあげるなど、試してみてください。これらで「こぼさない・開けられない」といったストレスを下げることができます。

方法3. 言葉かけと視覚的なサポートで「飲む時間」「飲む量」を明示する

何度も言っていることなのに子どもが行動に移せない時には、まず言葉かけを振り返ってみましょう。時間だったら、朝ごはん(7時)、学校に着いた時、休み時間毎など……。

量は、一口(1回ごっくん)、二口(2回ごっくん)など、飲むタイミングや量を決めてあげた上で「わが子」が理解できる言葉かけを探しましょう。

もし、それでもなかなかうまくいかない場合は、メモやイラストなど視覚的なサポートをしましょう。時間と飲む量を紙に書いて、机や筆箱など目に付きやすい場所に貼っておくことで、子どもが気付きやすくなります。また、ペットボトルなど透明の容器を利用し書き込むことで、中身やタイミング、量が一目で理解できるようになります。

子どもが自分で水分補給をできるようになるために

命に関わる、熱中症。飲まない子どもを見ると、つい言葉かけが多くなってしまいがちですが、「なぜ飲まないのか?」ではなく、「なぜ飲めないのか?」を観察し、サポートの設計をすることで水分補給を習慣化できます。

特性のある子どもは、刺激に左右されがち。刺激の多い園や学校でできるようになるためには、まずは自宅という落ち着いた環境でできるようになることが大切です。まずは、ご家庭での観察、視覚的なサポートを試してみてください。

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

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