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発達障害のある人と家族のための災害対策|避難所生活への備えとは?

日本は地震や台風、大雨など、自然災害のリスクが一年を通して高い国です。災害時に避難所での生活を余儀なくされる場面もある中、発達障害のある人とその家族にとっては、環境や生活リズムの変化が人一倍大きなストレスになることがあります。

福島県に住む私は、2011年の東日本大震災と東電原発事故を体験しました。幸い避難はせずに済みましたが、地元で連日報道される避難所のようすを目にするたびに「あの環境で、発達障害を抱えた息子と私たち家族が過ごすことは、どれほどの苦痛だろう」と想像し、強い不安を感じました。

今回は発達障害のある人とその家族が避難所で少しでも安心して過ごすために、日頃からどのような備えができるのかを考えてみたいと思います。

「いつもとは違う環境」に「突然」放り込まれる

東日本大震災と東電原発事故当時、わが家の近くに設けられた避難所には、人があふれかえっていました。テレビや新聞には、体育館に数百人が詰め込まれ、仕切りもない中で人々が布団に横たわるようすが映っていました。今はプライバシーへの配慮があるにせよ、想定を超えた人数の場合、パーテーションなどの対応はしきれないかもしれません。

原発付近の一部の自治体では全町民の避難指示が出たため、事故の翌日から、人々は大型バスに乗せられ町外や県外へ避難しました。2~3日で戻れるとの情報が広まっていたため、着の身着のままの人も多くいたのです。そのまま町に帰れなくなった人もたくさんいます。全く想定外の展開だったことでしょう。

避難生活は「いつもとは違う環境」に「突然」放り込まれるものと、認識しておいたほうがよさそうです。

福祉避難所に必ず入れるわけじゃない?事前に知っておきたいこと

避難所には「指定避難所」と、高齢者や障害者・妊産婦など、支援の必要な人が特別な配慮を受けられる「福祉避難所」があります。障害のある家族を抱えていれば、当然、福祉避難所の利用を希望する方が多いと思います(原則、家族も一緒に入れます)。

福祉避難所は、自治体と協定を結んである福祉施設などを会場に開設され、発災後すぐではなく、準備が整ってから受け入れが始まります。なので多くの自治体では、障害のある方も発災後はまず指定避難所に避難し、スクリーニング(選別、絞り込み)を経て、福祉避難所に移送されることになります(発災時すぐ受け入れる福祉避難所を設定してある場合も少数派ですがありますので、お住まいの自治体へ確認を)。

福祉避難所は、災害の状況によっては予定していた施設で開設できない場合もあります。例えば2024年1月の能登半島地震では、輪島市で福祉避難所協定を結んでいた26の施設のうち、実際に開所できたのは7か所でした※。つまり開所されても入れないかもしれないし、入れても、電気や水道が使えないなど、不自由な環境かもしれないのです。

たとえ指定避難所で過ごすことになったとしてもストレスを最小限に抑えられるよう、できる準備について考えてみました。

※参考:福祉避難所設置進まず 輪島市、26カ所中7カ所が開設 【福祉新聞】 2024年01月21日付

備え1. 災害時要援護者登録制度を利用

災害時要援護者登録制度(自治体により呼び名が変わります)は、災害時に支援が必要な人の情報を事前に登録し、地域で連携して支援を行おうとするものです。登録者の情報は自治体をはじめ関係機関が共有し、災害時の避難誘導や安否確認に活用されます。

誰かに気にしてもらえる安心感があると思い、私も息子を登録しています。障害名や状況、どのような支援をしてほしいか、緊急連絡先などを伝えてあります。万一避難所で、家族以外が息子の対応をする必要が出たときに、役に立つかもしれません。

ただこの制度は「福祉避難所へ優先的に案内される」ものではありません。また職員が支援に来てくれること(公助)や、地域の方の支援(共助)が保証されるものでもありません。自ら身を守る行動をとること(自助)が大切であると理解した上で利用しましょう。

備え2.事前シミュレーションで「はじめて」を避ける

発達障害の特性のひとつに「はじめての場所や状況が苦手」というものがあります。
「はじめて」への不安を和らげるため、災害時や避難時に直面するシーンを、極力あらかじめ経験しておくことを提案します。

・避難所を調べて、本人と一緒に歩いて行ってみる。できれば非常持ち出しリュックを背負った状態で、昼と夜、両方のシーンで。
・避難先が公民館など、普段から入れる場所であれば、中の下見をしてトイレの場所や使い方を見ておく。
・ペットボトルの水(水道水を詰めておく)だけで手や顔を洗ってみたり、紙皿で食事をする日を作る。缶詰や非常食を食べる経験をしておく。
・キャンプのような感覚で、寝袋やテントで眠る経験を夏休みなどにしてみる。

可能な範囲で、遊び感覚でやってみるのが良さそうです。

 

備え3.避難所で落ち着くための「安心アイテム」を用意する

避難所生活では、照明・音・におい・人の声など、五感への刺激が普段より強くなります。発達障害の特性によっては、これらが大きな負担になり、不安や混乱を引き起こすことがあります。

そこで、自宅から持って行ける「安心アイテム」を防災バッグに入れておきましょう。例えば、

・耳栓やノイズキャンセリングイヤホン
・アイマスクやタオル
・お気に入りのぬいぐるみやアロマオイル
・口に合うおやつや飲み物

これらは普段から使い慣れているものを使うのがポイントです。

備え4.本人が食べられる食事と常用薬の準備

避難所の食事はパンやおにぎり、カップ麺などが中心で、アレルギーや感覚過敏がある場合は食べられないことがあります。
最低でも2〜3日分は本人が食べられる食品を用意しておくと安心です。わが家は常温で長期保存できる缶詰や魚肉ソーセージ、チーカマ、サラミ、クラッカーなどを常備しています。

服薬している場合、数日分の薬とお薬手帳のコピーも準備しておきたいです。
保険証(資格確認書)、マイナンバーカードに加えて「自立支援医療」「重度心身障害者医療費」など助成制度を利用している場合や、障害者手帳を持っている場合は、これらもコピーしておきましょう(更新後のコピーの取り直しもお忘れなく)。

備え5. 理解を求める準備

知らない人ばかりの中で過ごす避難所生活。息子の場合、パニックになって声をあげてしまったり、多動性から落ち着きなく歩き回ることは目に見えています。きっと周りの方々に「怖い」「気持ち悪い」と感じさせてしまうでしょう。

周囲に息子の特徴についてひとこと伝えておくことで「変な人と思われるかも」というストレスを軽減できるのではと考えます(私のように、そのほうが楽になると感じる方だけでいいと思います)。

そこで、息子のことを理解していただきやすいように、特徴をまとめたカードを作りました。半分に折ると名刺サイズになる大きさです。接触する機会の多い近くの方に、ごあいさつがてら「こんな子なんです」と見せながら伝えることを想定しています。カードを受け取ることをためらう方には、無理に渡さなければいいし、受け取ってくださる方は、その場にいないご家族にも見せてくださるかもしれません。

避難所でも「ふつうの毎日」に近づけるために

災害が起きたときの「もしも」に本気で向き合うのは怖いし、準備は面倒でもあります(家族に障害があるならなおさら大変です)。でも本当に被災し、避難が必要になったときの苦痛を思うと、備えておいて損はないと感じます。

避難所は一定期間を過ごす「生活の場」になる可能性もあります。特性に合わせて、日常の延長としての準備を進め、家族が少しでも安心して避難所生活を送れるようにしていきたいですね。

執筆者プロフィール

細川 有美子(ほそかわ ゆみこ)

1968年生まれ、福島県在住。
バックパッカーとして海外旅行中に出会ったエジプト人と2000年に結婚。現地で子供2人を出産する。2003年子供と帰国したのち、息子の発達障害が判明。夫とは2005年に離婚。
これまでに自閉症(中等度発達遅滞)・ADHD・精神障害・難病(クローン病)の診断を受けた息子の子育てと現在を、Instagramで発信。
2014年より取材・執筆活動を開始し、現在は事業所でのパート勤務、再婚の夫とふたりで米づくりにも奮闘している。
◇たきちゃん農場 https://www.takirice.com/
◇Instagram https://www.instagram.com/yumiko_days

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