「親なきあと」相談事例② 

親の年齢が高く、「親なきあと」が間近に迫っているケース

私のところに来る相談は、すぐ何か手を打たなければいけないというケースはほとんどありません。そのような状況であれば、何の権限もない私では解決できないので、市町村の福祉課などに行っていただくようにお話しします。

ただ、そこまで切迫してなくても、早めに動いていただく必要がある場合もあります。

■母親の判断能力に不安があります

障害のある弟について、姉からの相談です。障害者本人は40代男性、80代前半の母親と二人暮らしです。姉は結婚して隣の県に住んでいます。父親はすでに他界しており、住まいは賃貸のアパートです。二人の年金が主な収入で、蓄えはあまりありませんが、日々の暮らしにはさほど困ることはありません。中程度の知的障害で、身辺自立はしていますが、金銭管理などはできません。平日は就労継続支援B型施設に毎日通っています。

日常的な金銭管理は母親がすべてしていましたが、最近実家のようすを見に来たときに、母親が同じことを何度も話したり、衣服が出しっぱなしになっていたりで、言動がやや怪しくなってきているのに気がつきました。話をしてみると、最近忘れ物や失くし物が多くて、一度は銀行の通帳まで失くしたと大騒ぎになったこともあったとのことです。そのときは銀行に置き忘れただけだったので、連絡が来て事なきを得ましたが、姉は危機感を持ったとのことでした。

■成年後見制度と日常生活自立支援事業を具体的に検討しましょう

すぐに生活が立ちいかなくなるというほどではないにしても、このまま長く弟と母親の二人だけの暮らしを続けるのは難しそうです。かといって、姉がしょっちゅう訪問するのも仕事や家庭の関係で厳しいとのこと。そこで、まずは母子が住んでいる地域の社会福祉協議会に相談して、日常生活自立支援事業の利用をお勧めしました。この事業であれば、社会福祉協議会と雇用関係のある生活支援員が、定期的に訪問してくれて、金銭管理などをしてくれます。これによって、しばらくは支援を受けながら今の生活を続けて、親の判断能力のさらなる衰えが見えてきたら、社協に報告があがり、成年後見等の申立てが必要かどうかなど今後の対応策を検討してもらうことができます。

合わせて住まいのことも検討しておく必要があります。弟さんご本人はどのような住まいを希望しているか伺ったところ、通っているB型施設と同じ法人が運営している複数のグループホームのショートステイをよく利用していて、本人も気に入っているので、すでに入居の申し込みはしているとのこと。法人側も協力的だそうなので、状況を説明して早めの入居を依頼する、合わせて計画相談事業者にも連絡しておき、この法人の施設になかなか空きが出ない場合の対策も相談しておくようお伝えしました。

このような高齢の親と障害者だけという家族構成の場合は、他の人の目が届くようにして、周囲に早めに気がついてもらえるような手を打っておく必要があります。自分の判断能力が衰えていることは、自分ではなかなかわかりません。それを察知してもらう環境を作り、自分と子どもを守るために、ぜひ早めにこのような制度の利用を検討しておいてください。

執筆者プロフィール

渡部 伸

  • 1961年生、福島県会津若松市出身
  • 「親なきあと」相談室主宰
  • 東京都行政書士会世田谷支部所属
  • 東京都社会保険労務士会所属
  • 2級ファイナンシャルプランニング技能士
  • 世田谷区区民成年後見人養成研修終了
  • 世田谷区手をつなぐ親の会会長
著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
(ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)

渡部 伸