「親なきあと」相談室とは

■「親なきあと」相談室とは

私が主宰している「親なきあと」相談室では、メールや面談で障害のあるかたのご家族からの悩みや不安を伝えていただき、相談にお応えしています。

親が将来について、だれかに相談をしたいと思っても、現状ではなかなか適当な窓口がありません。たとえば福祉サービスだったら市の福祉課や計画相談事業所、成年後見制度であれば社会福祉協議会などで相談は受けつけてくれると思いますが、相談内容によって相手が変わってくるので、何を相談するかを明確にしなければなりません。また、相続などお金に関することは、行政では受けてくれないので民間の専門家を探すことになります。

さらに、具体的な質問ではなく、将来の親なきあとが不安だ、何から手をつければいいのかわからない、といった漠然とした悩みの場合では、どこに相談しに行けばいいかわからない、というのが現実だと思います。それだと、モヤモヤとした気持ちがどんどんふくらんできてしまい、不安で押しつぶされそう、ということになりかねません。

それはよろしくない、最初に相談できる場所があれば、不安が大きくなる前に課題が「見える化」できて、次に何をすればいいのかがわかるのではないかと考え、この「親なきあと」相談室を始めました。

とにかく漠然と不安だけれど、何から手をつけていいかわからないという場合は、困っていることを言葉にして伝えていくことで、課題が少しずつ明確になり、次のステップに進めます。

また、成年後見制度の利用について、相続に関して、グループホームについて、きょうだいにはどこまで頼っていいか……などなど、具体的な相談の場合なら、実は自分でもある程度の結論が出ていて、話すことで背中を押してもらい、考えていたことを実行に移せるという効果もあります。それ以外にも、お子さんの障害に対する身内の無理解のつらさを訴えるかたなどもいらっしゃいますが、思いを吐き出したことで、ちょっとスッキリした、またがんばろうと思えた、と言っていただけたこともありました。

相談した方が共通して言うには、「困ったときや悩んだとき、相談できる場所があると思えると心強い」ということ。早い段階から不安を話すことで、親御さんそれぞれが、本当に切迫した状態になる前に、準備が必要なことを知り、準備する状況を作ることができるのです。

「親なきあと」相談室は、何かを解決する場ではなく、あくまで予防的な対応をする場所です。病気で言えば、重病になってから大病院に駆け込むのではなく、ちょっと体調が悪いと思ってかかりつけの医者に行く、そんなイメージだと考えています。

■相談の中で反省したこと

私は相談室を始めてから8年になります。講演会や著書で情報を発信し、面談による個別相談やメール相談をお受けしていて、件数は年間でそれぞれ100件程度になります。メールで相談を受ける中で、こんなことがありました。

遠方にお住まいのある方からメールでお問い合わせをいただいたのですが、文面だけではお尋ねになりたい内容がなかなかわかりづらく、問い返しても要領を得ずという繰り返しで、10回以上メールのやりとりをいたしました。

そうこうしているうちに状況が見えてきたので、対応してくれそうな地域の支援機関を調べ、直接連絡をとるよう勧めました。

ところが、なかなかそちらには連絡をしてくれず、その後も何度も私にメールで同じ相談をするということが続きました。

このまま私に連絡しているだけでは、その方に本当に必要な支援が届かない、早く地元の相談機関につなげるにはどうすればいいかと悩んだ結果、もう私からは具体的に役に立てることはできないので、地元の機関に相談してくださいと最後のメールを送っておしまいにすることにしました。

どうやら相談者の方は、地元とはいえ知らないところに連絡することが怖かったようです。私にメールすれば、とりあえず何らかの返信が来るので、それで安心していたのかなと感じました。しかし、遠方の私では日頃の具体的な支援は残念ながらできません。これは苦い経験になったと同時に、なるべく早めに地域につなげる必要性を痛感する出来事ともなりました。

そして、私と同じような活動をしている相談窓口が、どの地域にもあれば、こういったこともなくなるだろうと考えるきっかけにもなりました。

そうこうするうちに、大分県で非常に有意義な取り組みが始まったことを知ったのです。

※次回に続く

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都社会保険労務士会所属
東京都行政書士会世田谷支部所属
2級ファイナンシャルプランニング技能士
世田谷区区民成年後見人養成研修終了
世田谷区手をつなぐ親の会会長

主な著書
障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備
障害のある子の住まいと暮らし
        (ともに主婦の友社)
まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活(自由国民社)
障害のある子が安心して暮らすために~知っておきたいお金・福祉・くらしの仕組みと制度(合同出版)

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