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障害のある子の就学問題(我が家の場合)

障害のある子が小学校へ上がる時、または、中学校、高等学校へ進学する時、我が子に合った教育が受けられるのはどこなのかということに、多くの保護者は頭を悩ませます。学校へ見学に行き、子どもを通学させている保護者に話を聞いた上で、やっとの思いで入学を決めます。それでも、決断が正しかったのかどうかと、ずっと悩み続けることもあります。

いったん入学したあとに、「やっぱりあっちの学校にします」「いやいや、気が変わったのでまた戻ります」なんてことは、学校現場や子ども自身を混乱させることになるので、よっぽどの事情がない限り、しないに越したことはないのです。

「手を引いて泣きながら帰ったあの日」

 

長女が小学校に上がる時、地域の小学校に入学するか、支援学校の小学部に入学するかという、2つの選択肢がありました。

私はほとんど迷うことなく、地域の小学校に通わせるつもりでいました。というよりも、3歳で療育園から、障害児枠のある一般の保育所に移ったのは、そもそもそのつもりがあってのことでした。

ところが、地域の小学校へ就学相談に出向くと、校長先生から思いも寄らないことを告げられました。

「今、うちの学校の支援学級はいっぱいいっぱいな状況です。定員も、携わる教員や補助員の人数も限られていますから、娘さんに十分なことをしてあげることは難しいでしょう。支援学校に行かれてはどうですか?あちらの先生方はプロですから…」

療育園時代、娘と同じクラスだった、同じくらいの重度の知的障害の子たちは、同じ市内の別の公立小学校に入学することが決まっていました。受け入れ側の姿勢もウェルカムで、入学に向けてあらゆる準備を進めてくれていると聞いていたので、我が子も当然、地域の小学校に入学できるものと信じて疑いませんでした。

だから、そんな風に言われるなんて夢にも思わず、その日私は長女の手を引き、人目もはばからず泣きながら歩いて家に帰りました。

私はその頃どうしても、長女を地域の小学校に入学させたかったのです。

なぜなら長女にとって、ここが“地元”なのですから。この子の家はここにあり、これからも、きっとこの地域で暮らしていくのですから。

いつの日か、この子が1人で出歩けるようになった時に、「知らない子が歩いている」ではなく、「りんちゃん、こんにちは」って、声を掛けて貰えたらいいなと思っていました。地域の住人として認められたいと、願いました。

けれども結果的にその願いはかなわず、その時の私は、まるで娘の存在自体まで否定されたかのように受け取って絶望したのです。もっとも、今のように「インクルーシブ教育」という言葉も概念も、ほとんど認知されていない時代でしたから、そのようなことは、まだまだ珍しくなかったのかもしれません。

「終わり良ければすべて良し」

 

結局娘は小学部1年生から高等部3年生までの12年間、肢体不自由児が通う大阪府立の支援学校に通いました。それでも、居住地域の子どもたちに、長女のことを知ってほしいという思いがあったので、小学生の間だけでしたが、1~2ヵ月に一度のペースで、地域の小学校に連れて行き、体験型の授業などに参加させていただくことを続けました。

そのおかげで、地元の夏祭りなどで長女を連れて歩いていると、どこからともなく「あ!りんちゃんや!」なんて言われているのをよく耳にして、うれしく思ったものでした。

12年間通った支援学校では、本当に良くしていただいたし、長女も頑張ってとても成長したと思います。

「あの時、無理にでも地域の小学校に入学させていたら…?」なんて、思わなくもないのですが、結局どのみち私自身は、後悔はしなかったと思います。

長女が元気で、ニコニコ笑顔で過ごすことができたから。娘の笑顔が答えなんだと思っています。

 

執筆者プロフィール

藤井奈緒

『親心の記録®』公認アンバサダー

一般社団法人「親なきあと」相談室 関西ネットワーク 代表理事

大阪府八尾市在住。八尾市教育委員会 教育委員(2019年12月~)
重度の知的障がい者である長女(18才)と、健常児の次女(12才)の母。
『親なきあと』次女一人に、長女の世話を引き受けさせることになるかもしれない状況に危機感を抱き、法的な備えについての勉強を始めました。
その後、自分と同じように『親なきあと』を心配している障がい者家族が大勢いる事を知り、講演活動等を通じて、将来に向けて備えることの重要性を訴えています。
また、メンバー全員が障がい者の親きょうだいので、尚且つ、法律や福祉、マネープランニングなどの各分野の専門家と共に【一般社団法人『親なきあと』相談室 関西ネットワーク】を設立し、個別相談やセミナーを通じて、障がい者の家族が安心して、笑顔で暮らしていくための情報提供を行っています。
また、一般的な『終活』をテーマとした講演活動も行っております。

~所持資格~
・終活カウンセラー1級®
・相続診断士®
・家族信託コーディネーター®
・メンタルヘルスマネジメントⅡ種
その他、福祉関連公的資格 多数

~講演実績~(月間平均10~12講演 ※2020年)
・支援学校PTA勉強会
・障害者団体保護者向け勉強会
・障害者施設職員研修       その他多数

~メディア実績~【テレビ・新聞・ラジオ・雑誌】
・NHK総合『ニュースほっとかんさい』特集
・産経新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞医療プレミアム
・文化時報・シニアガイド終活探訪記
・インターネットラジオ、各地の地域FM、・KBS京都ラジオ 他

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