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東京パラリンピックと知的障がい者スポーツ

■知的障がい者スポーツを取り巻く現状

 

私が運営する「一般社団法人全日本知的障がい者スポーツ協会(ANISA)」は、日本における知的障がい者スポーツ団体(12団体:JPC加盟団体) を統括し、連係・協力しながら、国内外のスポーツ振興に努めています。また、同じ様な団体に「スペシャルオリンピックス(SO)」があります。両団体とも対象は、知的障がい児者と言うことになりますが、目指すところに大きな違いがあります。

 

最も大きな違いは、ANISAに加盟する団体の登録選手は、パラリンピックへの道が用意されています(以下、詳細) 一方、SOに登録している選手は、あくまでもSO独自の大会にしか出場できません。

次に、ANISA関連の登録選手は、基本的に競技性を重視しており、パラリンピックの他に国際知的障がい者スポーツ連盟(Virtus)が主催する国際大会(グローバル大会)へ出場することができ、日々、競技力の向上に努めています。逆にSOに登録している選手は、スポーツを楽しむことに重きを置いており、チャンピオンシップには、こだわりません。

 

■東京パラリンピックにおける知的障がい者アスリートの実態

 

そもそもパラリンピックに出場できる対象者に知的障がい者クラスがあること存在することさえ、殆ど認知されておりません。しかも、パラリンピックで認められているのは、「陸上競技、水泳、卓球」の3競技であり、種目も限定されています。東京パラリンピックの大会全体で争われた金メダルの数は、539個であり、上記の通り知的クラスは、合計で21個(3競技)しかありません。また、選手数全体でも約4400人に対して、120人ほどになります。

 

 

■クラス分け

 

パラリンピックとオリンピックの最大の違いは、この「クラス分け」の存在です。

主に身体障がい者を対象にしているパラリンピックは、視覚障がい、脳性麻痺、運動機能障がい、切断など、様々であり、そのような背景から、公平性を期すために、「クラス分け」を行うことで担保されており、細分化しております。例えば同じ陸上競技100mでは、16種目に分かれています。

しかし、知的障がい者クラスは、たったの1つです。上記の通り公平性を謳うのであれば、知的障がい者クラスにおいてもダウン症クラスを設けるべきです。

何故、ダウン症クラスかと言いますと、医学的にも軽度知的障がい者アスリートとダウン症アスリートが同じ土俵で勝負するには無理があります。(結果的にダウン症アスリートはパラリンピックに出場できません)他の「クラス分け」と同様に、知的障がい者クラスにおいても、せめて2つに細分化する必要を感じております。

 

■まとめ

 

ANISAでは、“重度重複障がい”まで含めた知的障がい者を対象としております。

スポーツすることは、どなたにも権利があります。是非とも、今回の東京パラリンピックにおける実情を多くの方に知って頂き、知的障がい児者のスポーツ振興が更に発展する事を切に願っております。

また、それはお子さん(あるいはアスリート)自身への良い影響だけでなく、保護者や養育者にとっても、スポーツに打ち込んでいる間は、“ひと休み”の時間として、ご自身の精神的なケアとしての意味があると感じております。

最後に、私自身は、アジア全体の責任者と言う立場もあるので、上記、パラリンピックへの対応に関して、各国関係者と協力して、引き続きIPCへ積極的な提案を継続していきたいと考えております。

執筆者プロフィール

斎藤利之(さいとう としゆき)

1974年生、静岡県浜松市出身
一般社団法人全日本知的障がい者スポーツ協会 会長/公益社団法人日本発達障害連盟 理事/保護司
専門領域:学校保健・国際保健・障がい者スポーツ・高齢者スポーツ
本業の傍ら、都内のいくつかの大学で教鞭を執る。また、地域社会へも積極的に関与し、東久留米市子ども子育て会議会長等多くの公的な委員活動を始め、内閣府の事業も多数手掛ける。一方、障がい者スポーツ分野では、2019年ブリスベンで行われた知的障がい者の国際総合大会(Virtusグローバルゲームズ)において、日本選手団団長を務め、過去最高の金メダルの獲得に貢献。更に、Virtus Asia sports Directorとして、アジア全体の知的障がい者スポーツの発展に尽力している。

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