障害児は天使なのか?

障害がある子を育てていると「こういう子ってピュアだよね」とか「秘めた才能あるよね」とか「天使だよね」と言われることがあります。

でも…

そもそも、障害は障害で生まれもったもの、染色体異常だったり、脳の機能障害だったりが原因です。性格だとか個性は障害の上に、育った家庭環境や幼稚園、保育園、学校環境、友人関係などが複雑に影響し作られていくものです。

私の周りにも素直なダウン症児もいますし、自閉傾向が強いダウン症児もいますし、いじわるなダウン症児もいます。息子も以前、そんな子からお金を取られたこともあります。

■天使じゃない

息子は幼い頃、奇声を発し、暴れるなどパニックを度々起こし、自らの身体を傷つける自傷行為が激しく、私は疲労困憊状態でした。

そんなわが子のことを“お世辞にも天使”とは思えませんでした。ある日、息子が渋谷で迷子になったことがあります。必死で探しながら心のどこかで「永遠に見つからなければいいのに」とさえ思いました。

障害児を育てているママに「親を選んでやってきた神様が与えてくれた天使」と励ます人もいますが、受け止める側は内心「選ばれたくなんかなかった」と思っていることもあります。

また「この子の存在で家族の絆が強くなり、幸せの源になっている」となる人もいます。そして、テレビで美談として取り上げられます。でも、子どもの障害により夫婦間に溝ができ離婚に至る人、また、育てにくい子として虐待に発展していることもあります。

■秘めた才能

「秘めた才能があるからそこを伸ばしてみたら」もよく言われます。言葉をかけた人は勇気づけようとして言っているのですが、これで療育のハシゴをしたり、才能探しの旅に出たり、温泉掘りに走ってしまう親御さんもいます。

でも、そういうときの親の顔は“眉間に皺”の怖い顔になっていたり、子どもが思い通りにならないと残念な悲しそうな顔になっていたり…。

また、「才能を生かした職業に就いたら」と励まされ、「今から職業のことも心配しなくてはならないのか!」と感じ、そのプレッシャーに押し潰されている親御さんもいるでしょう。

私も息子が幼かった頃、“カラスの泣き声で、その絵を描く”姿を見て、才能を伸ばそうと、ピアノ教室に通う日々を送っていました。そして、聴覚が過敏過ぎて音楽を嫌がる息子の才能の温泉堀りに挫折しました。

 

 

そもそも、定型発達の人であっても才能を生かして自立し、職業に生かせている人はほんの一握りです。障害がある子は何か秀でた才能を生かさなきゃいけない、という思う必要はないのではないでしょうか。

子どもを受け入れるって、秀でた才能がなくても我が子の今の状態、存在そのものを受け止めることではないでしょうか。

■友人の呟き

障害がある子を育てる友人が言っていました。(←友人の掲載許可を得ています)

「ちゃんとトイレに行けるようになったとか、
偏食が減ったとか、目的地まで歩けるようになったとか、
靴をそろえたとか、脱いだものをちゃんと洗濯かごにいれたとか、

そんなことを喜んで、育てて、暮らしてきました。

絵も描けません。字も書けません。すごい暗記力もありません。スポーツもできません。テレビ番組にも、パラリンピックにも、スペシャルオリンピックにも、出られません。ごく普通の障害者です。それでも、あなたがいてよかった。あなたでよかった。」

「秘めた才能あるはず」「親を選んでやってきた天使」の一見耳に心地よい言葉は、相手にとっては時には励ましにはなっていないこともあるので、頭の片隅に入れておいてもらえると嬉しいです。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

『発達障害に生まれて(ノンフィクション)日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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