家族で情報共有の場をどのように持つか (親なきあと相談事例)

私の著書や講演会では、「親なきあと」のために今からやってほしいこととして、家族で情報を共有する、本人のことを支援者に伝える“ライフスタイルノート(ラスカル)”を書いておくなどをお伝えしています。障害者本人のことは母親しか把握していないという家庭は良く見受けられますが、家族みんなの課題なので、ぜひ情報共有を心がけてください。

■「親なきあと」のことを家族にも伝えたいのですが

お母さんからの相談です。本人は48歳の男性、知的障害で障害者支援区分は3、療育手帳を所持しています。両親と同居していて、B型の作業所に通所しています。妹がひとりいて、結婚して隣県に住んでいますが、子どもを連れてよく遊びに来ます。
私の講演を聞いて著書も読んでいるとのことで、お金のことや住まいについて、いろいろ調べて準備もしていました。
「子どもの親なきあとの準備について、私以外の家族は良くわかっていないので、将来のことを家族で話すことは大切だというアドバイスはとても腑に落ちました。ただ、話をしようと思っても、切り出し方がわかりません。何かいい方法はあるでしょうか?」

■遺言やライフスタイルノートをきっかけにしましょう

いきなり家族に向かって、「さあこれから親なきあとの話をしよう」といっても、唐突過ぎますし、家族も「何が始まるんだろう?」と不安になって、身構えてしまうかもしれません。ここは自然な形で話の流れを作りたいところですね。
ひとつの案として、遺言をきっかけに家族に思いを伝えるというやり方があります。まず親自身が遺言を書き、配偶者と子どもたちへどのように相続させるのかを決める。障害のある子には健常の子よりも多く残すという考え方もあるでしょうし、逆の場合もあるでしょう。資産に不動産がある場合は、将来の管理をどうするかも考えなければいけません。それらのことを遺言に書き残します。家族には、細かな金額のことまで話す必要はなく、大まかな考え方を伝えればいいでしょう。なぜこういった遺言にするのかを説明することで、将来の「親なきあと」についての思いを伝えていくことができます。遺言を書くのはちょっと気が重いという方は、市販のエンディングノートを活用するという方法もあります。
また、子どものことを支援者に伝える「ライフスタイルノート」を記入して、それを家族に説明することで情報共有することもできます。日本相続知財センターが無料配布している「親心の記録®」や地域の自治体や家族会が作成しているものなどを、上手に活用してはいかがでしょう。
母親だけが将来の不安を抱えるのではなく、父親やきょうだい、そしてもちろん本人も、それぞれが情報共有することで、家族みんなで対策を考えることができます。ぜひそういった機会を作ってほしいと思います。

執筆者プロフィール

渡部伸

1961年生、福島県会津若松市出身
「親なきあと」相談室主宰
東京都行政書士会世田谷支部所属
2級ファイナンシャルプランニング技能士
世田谷区区民成年後見人養成研修終了
世田谷区手をつなぐ親の会会長

著書
障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」
障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本
(ともに主婦の友社刊)

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