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障害のある子の保育園の入園 (我が家の場合)

「りんちゃんって、あかちゃんなの?」

長女は3歳のとき、0歳から通った療育園を退園して、『加配枠』と呼ばれる障害児の特別枠で、地域の保育所に入りました。
その頃長女はやっと歩行ができるようになったばかりでしたが、言葉や身振りで自分の気持ちを伝えることはほとんどできませんでした。ですから、通っていた療育園の先生方には、引き続きそこに留まり、必要な療育を受けることを強く勧められました。ですが、小学校に進学するまでの3年間だけでも、同じ年代のたくさんの子どもたちと関わりを持たせたいと私が強く願ったので、大袈裟でもなく、それまでの人生でいちばん悩んだのではないかと思うほど悩み、それでも諦めきれなくて、保育所の入所を決めました。

不安の中身はこんな感じ。

・まだ歩行がおぼつかない状態だったから、誰かとぶつかってひどく倒れて大怪我をするのではないか。

・当時、長女が通った保育所では裸足保育が推奨されていて、教室内では夏でも冬でも皆裸足。長女は足首を固定する、いわば安全靴のような硬くて頑丈な靴を室内でも履き続ける必要があったから、わざとじゃなくてもお友達の足を踏んでしまって怪我をさせてしまうのではないか。

・トイレトレーニングが終わるにはまだまだ時間がかかりそうな状態だったが、保育所は紙パンツは使わない決まりだったので、一日に何度もお漏らしするのは確実で、その様子を見たお友達に、臭いとか汚いとか思われて、嫌がられたりするのではないか。

・長女は自分の持ち物とお友達の持ち物との区別がつかなかったので、お友達の持ち物を勝手に触って怒らせてしまうのではないか。

・遊びのルールが理解できないので、一緒に遊ぶということができず、ポツンと一人、取り残されてしまうのではないか。

・長女が孤立するのではないか、馴染めないのではないか、寂しい想いをするのではないか、などなど…。

また、保育士の『加配』というのは、『障害児がいるクラスには、特別に担任を2人配置する』といった意味なのであって、長女だけに四六時中、ピッタリ寄り添ってくれるわけではないということも、大きな不安材料でした。
知っている子と保護者が1人もいないという、完全アウェイな状態だったことは、長女が、というよりもむしろ、私自身が心細かったのだと思います。

ですが、そんな私の不安をのっけから、見事に吹っ飛ばしてくれたのは、元気いっぱい天真爛漫な3歳児の子どもたちでした。
明らかに“普通”と様子が違う長女に対し、どの子もみんな興味津々。近くに寄ってくる子もいれば、遠まきから様子を窺う子もいて、大きく目を見開いて、長女と私をつぶさに観察しています。
そのうち1人の女の子が長女のもとにやってきて、いろいろ尋ねていましたが、もちろん長女は無反応。それでも他の子どもたちも、どんどん周りに集まってきて、何やら質問攻めにあっていました。私が少し離れたところから様子を窺っていると、女の子が駆け寄ってきて一言!
「りんちゃんのおかあさん、りんちゃんはしゃべれないの?どうしてヨダレでてるの?りんちゃんは、あかちゃんなの?」

私は嬉しくなって、私なりになるべく丁寧に答えました。「りんちゃんは、赤ちゃんじゃないんだよ。みんなと同じ3歳なんだよ。話せないけど、うれしかったり、かなしかったりするんだよ。りんちゃんはいま、どんなふうに思ってるかな?」

私はこの時、保育所に入所させたことは間違いでなかったと確信し、心から嬉しくなりました。
以降、小学校入学までの3年間、大小さまざまな事件が毎日たくさん起こりましたが、それでもあの頃が今まででいちばん、親子とも、大きく成長できたなぁと、今でも思っています。

執筆者プロフィール

藤井奈緒

『親心の記録®』公認アンバサダー

一般社団法人「親なきあと」相談室 関西ネットワーク 代表理事

大阪府八尾市在住。八尾市教育委員会 教育委員(2019年12月~)
重度の知的障がい者である長女(18才)と、健常児の次女(12才)の母。
『親なきあと』次女一人に、長女の世話を引き受けさせることになるかもしれない状況に危機感を抱き、法的な備えについての勉強を始めました。
その後、自分と同じように『親なきあと』を心配している障がい者家族が大勢いる事を知り、講演活動等を通じて、将来に向けて備えることの重要性を訴えています。
また、メンバー全員が障がい者の親きょうだいので、尚且つ、法律や福祉、マネープランニングなどの各分野の専門家と共に【一般社団法人『親なきあと』相談室 関西ネットワーク】を設立し、個別相談やセミナーを通じて、障がい者の家族が安心して、笑顔で暮らしていくための情報提供を行っています。
また、一般的な『終活』をテーマとした講演活動も行っております。

~所持資格~
・終活カウンセラー1級®
・相続診断士®
・家族信託コーディネーター®
・メンタルヘルスマネジメントⅡ種
その他、福祉関連公的資格 多数

~講演実績~(月間平均10~12講演 ※2020年)
・支援学校PTA勉強会
・障害者団体保護者向け勉強会
・障害者施設職員研修       その他多数

~メディア実績~【テレビ・新聞・ラジオ・雑誌】
・NHK総合『ニュースほっとかんさい』特集
・産経新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞医療プレミアム
・文化時報・シニアガイド終活探訪記
・インターネットラジオ、各地の地域FM、・KBS京都ラジオ 他

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