お問い合わせのご連絡は

0120-322-150

 平日9時〜17時(土日・祝日・年末年始を除く)

24時間
受付

お問い合わせフォーム

パニック障害があっても、旅は諦めなくていい

2026.11.05 2026.11.5

私は、発達障害のASDとADHDがあり、二次障害としてパニック障害とPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えています。

旅行が大好きな私ですが、パニック障害で電車や人混みが怖くなってから、遠くへの旅行はあまりできなくなりました。

パニック障害があると、旅行そのものを諦めてしまう方は少なくないと思います。病気に限らず、「いつか行こう」と言ったまま、何年も先延ばしにしている場所をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

何年も行けていなかった場所

宮沢賢治ファンの私にとって岩手は、行きたいけど行くのが難しい、そういう場所です。

30年前の夏、PTSDとパニック障害を発症した年に、精神科の薬を飲んで、父と新幹線で岩手へ行きました(でもその後、よく利用していたJR福知山線で2005年4月に事故が起き、そのショックで電車にあまり乗れなくなりました)。

10年前の夏に岩手へ行ったときは、(新幹線には乗れないので)夫の運転する車でした。

そして今年の夏、10年ぶりに岩手へ行くことができました。夫と新幹線で。新大阪から東京へ、東京で東北新幹線に乗り換えて新花巻駅まで、6時間近くの道のりでした。

新幹線で遠くへ行くときの私の備え

東京への日帰り出張から少しずつ慣らして、今では東京や金沢へも、すぐに新幹線で出かけられるようになりました。パニック障害のある私が、新幹線で遠くへ行くときの備えを書いておきます。

席はいちばん前か後ろ

席は、いちばん前かいちばん後ろの窓側を取ります。前や後ろに人がいないだけで、気持ちがゆったりします。

同行者がいること

隣に座ってくれる人がいます。私の場合は夫です。見回りに来てくれる乗務員さんや警備員さんの姿も、大きな安心になります。

頓服の薬と水を近くに置く

頓服の薬と水を、手元に置きます。

ノイズキャンセリングのイヤホン

ノイズキャンセリングのイヤホンをつけます。音に敏感な私には、これがあると安心です。

記録を残す

その日の体調や気持ちを、Xに日記のように書いておきます。あとで読み返すと、次の旅の準備になります。また、同行者に自分の苦手を先に伝えておくだけで、旅はずいぶん楽になると思います。私の場合は夫が私の苦手を知っていてくれているので助かっています。

障害者手帳を持参する

10年前に岩手へ行ったとき、私はまだ精神障害者保健福祉手帳を持っていませんでした。今回は持っていたので、手帳を提示することでJRの運賃割引や宮沢賢治記念館の入館料免除がありました。窓口での手続きは、思っていたよりスムーズでした。手帳の種類や等級、お住まいの自治体によって条件が変わりますので、出かける前に窓口で確認してみてください。

宮沢賢治の童話村で、夕暮れのコンサートを聴きました

今年は、宮沢賢治の生誕130年です。

私が岩手を好きになったのは、子どもの頃、父が寝る前に読んでくれた本の中に賢治の童話があったからです。父は登場人物みんなの声色を変えて、『セロ弾きのゴーシュ』を読んでくれました。当時バイオリンを習っていたのに上手ではなかった私は、ゴーシュに自分を重ねていました。動物たちと関わるうちに上達していくゴーシュに、どんどん引き込まれていきました。

それから映画『銀河鉄道の夜』に夢中になり、賢治と岩手にどんどん惹かれていきました。賢治の本を開くと、文字がキラキラと光って、芸術作品のように見えたものです。

8月23日、花巻の宮沢賢治童話村で開かれた「イーハトーブフェスティバル2026」に行きました。入場無料の、賢治にちなんだ夏の祭典です。安藤裕子さん、Salyuさん、Chimaさん(ikire)とイーハトーブ楽団の「ポラーノ・コンサート」を観ました。そこに、イーハトーヴ子ども合唱隊が加わりました。

夕方に始まった演奏は、日が暮れていくのと一緒に進んでいきます。いちばん心に残ったのは、安藤裕子さんが賢治の詩を朗読してくださった場面と、大好きな曲「海原の月」でした。暮れていく森の中で聞く賢治の言葉と歌声は、幻想的で、神がかっているとしか言えない時間でした。日が落ちると、童話村の森のライトアップが始まります。水辺の木道に沿って、色とりどりの光のオブジェが浮かび上がります。

10年前に夫と観たこの光の中に、今年は新幹線で来て、また二人で立つことができました。そのあとの映画『銀河鉄道の夜』の上映は、旅館の夕食に間に合う時間まで観ました。

最後まで観たかったけれど、続きは、また次に来る理由にとっておこうと思います。また次に来ることができると思える自分であることがうれしいです。

できないことを残したまま、帰ってきました(また来る理由に!)

遠野は、昔話や座敷童子、カッパの伝説で知られる町です。伝承園には、千体ものオシラサマが並ぶお堂があります。ここで、ひっつみ(小麦粉の生地を手でちぎって煮込む、岩手の郷土料理)をいただきました。

カッパ淵は、常堅寺というお寺の裏を流れる小さな川で、今にもカッパが顔を出しそうな緑の深さです。小さな祠の前には、きゅうりを持ったカッパの像が二体並んでいました。どこまでも続く田園風景にも癒されました。

小岩井農場では、ソフトクリームと牛乳、飲むヨーグルトをいただきました。ミルクが大好きな私には、これも岩手に来る楽しみのひとつです。農場に置かれているD51(蒸気機関車)は、30年前はSLホテルでした。夏に父と泊まり、冬には、白銀の景色の中でソリ遊びをしました。機関車は今も同じところにあって、あの頃の記憶が一気に戻ってきました。

宮沢賢治記念館のそばにある山猫軒は、父とも夫とも入ったお店で、ここでもひっつみを食べました。同じ場所に同じお店があることが、こんなに心強いとは思いませんでした。

宿は、花巻温泉郷のいちばん奥にある新鉛温泉の愛隣館に3泊しました。窓いっぱいに緑の山が見える和室で、あゆの塩焼きや美味しいお米をいただき、体も心も癒されていきました。山の中は8月でも涼しくて、虫がたくさんいました。ただ、温泉には入れませんでした。大浴場の人混みが、まだ怖いのです。次は、人の少ない時間帯を宿の方に聞くなど、工夫して挑戦してみたいです。

東日本大震災の被災地には、今回は行きませんでした。10年前に海沿いを訪れたときは、ショックがひどくて、だんだんしんどくなっていきました。今回も精神的にしんどくなると思ったので、行かないと決めました。復興した大好きな場所を、いつかまた見に行きたいと思っています。旅先で全部をやりきる必要はないのだと、今回あらためて思いました。

できないことを残したまま帰ってきても、それは失敗ではなく、また来る理由になります。

行けなくなった場所をあきらめないでほしい

行けなくなった場所は、諦めた場所ではなく、まだ戻れていない場所なのだと思います。それでも、小さな備えを重ねて、隣に誰かがいてくれれば、戻れる日は来るのだと今回の旅で知りました。

PTSDもパニック障害も、今も抱えたままです。人混みも電車も、得意にはなっていません。だからこそ焦らず気長に、自分のペースで、行きたい場所をひとつずつ増やしていきたいと思っています。不安が強いときは、主治医の先生や夫に相談しながら、無理のない範囲で進めるのがいちばんだと思います。同じように遠出を諦めている方が、行き先を消さずに持っていてくださったら嬉しいです。

30年前に岩手へ連れて行ってくれた父と、10年前も今回も一緒に来てくれた夫。そして、旅先で親切にしてくださった方々に、心から感謝しています。これからもマイペースに、楽しみを見つけながら歩んでいきたいです。

知的障害・発達障害・ダウン症・てんかん身体障害※・精神障害※ のある方のための総合保険
ぜんちのあんしん保険 この保険について知る

*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

 

執筆者プロフィール

川田直美 (かわだ なおみ)

障害者ドットコムのコラムニスト・ピアサポーター
Webメディアで自身の発達障害(ASD・ADHD)やHSP、精神疾患(パニック障害)についてコラムを書いています。オンラインサロンや計画相談支援でも自身の障害を生かして活動しています。生きづらさを抱えながらも日々楽しみを見つけて暮らしています。
◇障害者ドットコム 公式サイト
https://shohgaisha.com/
◇川田夫妻の発達障害日記 https://www.youtube.com/@yuichi_naomi_hattatsu
 

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事