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発達障害のある子の就学前に考えたい、健常児との関わり方

秋は子供の就学先が決まりはじめる季節です。特別支援教育はメリットがあるが、通常学級があきらめられない……など、悩んでおられるご家族もいらっしゃることでしょう。

わが家は迷わず特別支援学級を希望しました。年長の1年間だけ通った普通幼稚園でとても成長したので、特性に合わせ個別に見ていただきながら、健常児のお友だちと接点を持っていたかったのです。

けれど実際には、健常児との関わりの中で、思いがけず息子の心が傷ついてしまうこともありました。今回は障害のある子供にとって、健常児との関わりがプラスとマイナスに働くケースを、私の経験から考えます。就学先を考えるときの参考にしていただければと思います。

特別支援学級を選んだ理由

私が息子の就学先を特別支援学級に決めた理由は3つあります。

⁡⁡①幼稚園で一緒だった子が多く通う学校だった

ちょっと変わった子なのに、息子は幼稚園の人気者で、のびのびと園生活を送ってきました。先入観なく息子のことを受け入れてくれている子が多く、学校でもこのまま、息子のことを分かってくれている子が周りにいるほうが、私自身安心できました。

⁡⁡②健常児と関われるから

健常のお友だちと関わる機会が持てれば、真似してできるようになることが増えるなど、成長できると思いました。

⁡③特別支援学校は支援級が合わないときに行けばいいから

支援学校は支援級が合わないときの選択肢に残しておきました。支援学校から支援級への転校は難しいとも聞いていました。

健常児と関われてよかったこと

小学校・中学校では、基本的な教科学習は特別支援学級で受け、体育や音楽などの授業や行事の際に通常学級の児童と合流しました。掃除の時間は学年を超えた縦割り班、中学校の部活動も通常学級・特別支援学級の区別なく参加していました。

通常学級の「1組」には息子の席が常時設置されていて、参加するときはそこへ座ります。学校も息子と仲のいい子や自然とお世話してくれる優しい子を近くの席にしてくれている印象でした。

期待通り、みんなの行動に影響を受けて、なんとなくいろんなことが「できている」感じに過ごせているようでした。

小学校の頃は上級生が別棟にある支援級の教室まで遊びに来てくれたり、中学校では廊下を歩けば「よっ!○○くん」などと声をかけてくれる先輩もたくさんいました。そういうときの息子は「おう!」とマブダチにするみたいな、かっこつけた反応をします。中学生ともなれば上下関係を気にしておじぎでもしそうなものですが、後輩らしからぬ態度にも「この子はそういう子」と分かっているのでしょう、先輩も全く気にしないようすでした。

健常児ばかりの学童で笑顔が消えていった息子

シングルマザーだった私が働きに出ている日中、家におばあちゃんはいますが、息子を夏休みと冬休みの間だけ学童保育に預けてみることにしました。長く家でダラダラしていたら、長期休みが明けた時学校に馴染むのに苦労するのではないか。小さいうちから人の和の中にいて、自然にコミュニケーションを身につけてほしい。そのような思いからでした。⁡⁡

当時障害のある児童を受け入れている近隣の学童は空きがなかったため、通える距離の、健常児のみが通う別の学童保育に事情を話して受け入れていただきました。ところが、ここでの出来事が息子をあとあとまで苦しめることになったのです。

通いはじめてしばらくすると、元気のない表情をしていることが増えました。詳細まで理解できませんでしたが、何かつらいことがあったかのような訴えをしてくることもありました。先生に聞いてみても特に何かされたような話はなかったし、朝になって「学童行く?」と聞くと「行く」と出かける支度をするので、そのまま通わせていたのです。

自閉症の特性が傷を深める

先生から見てトラブルといえるほどの出来事が起きていたわけではなくても、息子にとって健常児しかいない環境は、私が考える以上にストレスになっていたのだろうと、あとになって感じました。

当時まだ、自分に起きたことを理解する力も、気持ちを伝える力も育っていなかった息子は、成長するにつれ学童での出来事を語りはじめました。それも、パニックという形で。

笑われた、からかわれた、消しゴムを投げられた、ぶつかってきた、死ねって言われた……思い出すたびそう言って、泣き叫ぶのです。

息子はみんなと同じ行動ができないことが多いし、こだわりが強く譲れなかったり、意味の分からない言葉を発することもあります。しかもここの児童の多くは、特別支援学級がない学校の子たち。息子のような珍しい生き物を笑うこともあるでしょうし、元気な男の子が転げ回ってぶつかってくることもあるでしょう。

繊細な息子にとって、学童の子たちの言動はいじめと感じるほどショックなものでした。そして自閉症の特性のひとつである「飛び抜けた記憶力」によって傷は深く刻まれ、20歳を過ぎた今も、当時の記憶がよみがえり、苦しみを繰り返し感じてしまうようになったのです。

つらい目に遭わせないことが大切

特別支援学校高等部に進学してから、息子はパニックになることが多くなり、私は何度も学校へ面談に行きました。その中で、経緯を知った学年主任の先生に言われた、印象的な言葉があります。

⁡「記憶力に優れたこういう子はつらい目に遭わせないことが大切なんです。良かれと思って健常児と過ごさせて、傷つき、あとあとまでひきずることもある。だからあえて小学校から特別支援学校に入れるという考え方もあるのです」

パニックになり癇癪を起こす息子に私ができるのは、つたない話を聴きながら落ち着くまで待つことぐらいでした。

心に傷をつけないよう、親が一生守っていくことはできません。でもせめて、言葉でのとりなしやなぐさめが通じたり、人との距離感をつかめるほどに成長するまでは、刺激のある環境に置くのを避けるべきだったと、悔やんでいます。

「子供にとっての幸せ」に向き合って

就学はお子さんの人生の大きな節目です。学力をつけさせたい、社会性を身につけさせたい、など親の希望はさまざまありますが、「子供にとっての幸せ」という本質の問いに向き合うときでもあると感じます。しかも、子供の人生経験も、親としての経験もまだまだこれからという時にそれをしなければならない。難しいですよね。

今回はわが家の経験のプラスとマイナス、双方についてお伝えしました。健常児との関わりや距離の取り方が、障害のあるお子さんに少なからず影響を及ぼすのだと、ひとつの参考にしていただければと思います。

お子さんとともに学校という新しい世界に飛び込むパパ・ママを、応援しています。

執筆者プロフィール

細川 有美子(ほそかわ ゆみこ)

1968年生まれ、福島県在住。
バックパッカーとして海外旅行中に出会ったエジプト人と2000年に結婚。現地で子供2人を出産する。2003年子供と帰国したのち、息子の発達障害が判明。夫とは2005年に離婚。
これまでに自閉症(中等度発達遅滞)・ADHD・精神障害・難病(クローン病)の診断を受けた息子の子育てと現在を、Instagramで発信。
2014年より取材・執筆活動を開始し、現在は事業所でのパート勤務、再婚の夫とふたりで米づくりにも奮闘している。
◇たきちゃん農場 https://www.takirice.com/
◇Instagram https://www.instagram.com/yumiko_days

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