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発達障害の方にとって保険とは?

「発達障害の診断を受けると生命保険に入れなくなる」「発達障害だと保険料が高くなる」という情報をネット上でよく見かけます。
私は発達障害専門のFPとして実際に生命保険や医療保険を取り扱っています。その中でこれらのネット上の情報は間違っているものも結構あることに気付きます。
発達障害と保険について全三回のコラムで正しい情報をお伝え出来ればと思います。

第一回目のテーマは「発達障害の方にとって保険とは?」。

■保険の役割

「発達障害の方にとっての保険」を考えるにあたり、そもそも保険とはどんな役割かを整理します。
保険は「お金を準備するための手段の1つ」です。
万一の時に必要になる大きなお金の準備や、取り崩す予定のなかった資産を医療費で取り崩さないための準備として、保険は最適な手段の1つです。
ここでお伝えしたいことは「保険が大切」ということではありません。

お伝えしたいのは、万一が起きた時や予期しないお金が発生した時の経済的リスクを軽減する手段として保険は非常に有効である、ということです。

■発達障害の方が定型発達の方よりもリスクが高い4つの理由

発達障害の方は定型発達の方よりも経済的なリスクが大きいため、保険の重要性はより高い、と感じています。
多くの方のご相談に乗らせてもらう中、4つの点で経済的なリスクが高いと感じます。

1つ目は、収入が安定しづらい点です。

発達障害の方は、定型発達の方に比べて転職回数が多くなりがちです。収入が増える転職であればいいのですが、職場での関係や仕事への適正により転職を余儀なくされる場合、転職前より収入が下がることがあります。
また二次障害により休職する方も少なくありません。
こういった事情から収入が安定しづらいため、貯金が貯まらず、万一の時に用意できるお金が多くないケースがあります。

2つ目は、お金の管理が苦手である点です。

先の見通しを立てるのが苦手なため、お金を計画的に貯めていくのが困難な方が多いです。
また、計画性のなさか、入ってきたお金をすぐに欲しいものに使ってしまったり、目の前のことだけ考えてしまい気軽にカードローンを使ってしまったりする方も少なくありません。
中には、脳の報酬系の弱さから刺激を求めてギャンブルにハマってしまう方もいます。

3つ目は、ケガや事故、病気が多い点です。

発達障害の方は、衝動的な行動やパニックにより自分自身がケガをしたり誰かを傷つけてしまったり、注意欠陥の特性から事故を起こしたりすることが定型発達の方に比べて多くなっています。
また、体調不良に気付きにくく病気が通常よりも重症化しやすい特徴もあります。

4つ目は、トラブルに巻き込まれやすい点です。

発達障害の方は、インターネットでの詐欺にかかりやすかったり、また職場での不理解からパワハラやセクハラを受けやすかったりする傾向があります。
このような理由から、発達障害の方は定型発達の方に比べ、トラブルに巻き込まれるリスクが大きく、その場合に弁護士など専門家に頼める保険の重要性は、定型発達の方に比べて大きいと言えます。

 

 

■どんな保険があるのか

続いて、生命保険にはどのような種類があるのかを整理していきます。

生命保険(死亡保障)

死亡や高度障害により保険金が発生する保険です。
発達障害の方でも加入できる生命保険はあります。
会社によっては一定の条件を満たすことで健康な方と同じ保険料で加入できることもあります。

医療保険

病気やケガでの入院や手術、通院などで給付金を受け取ることのできる保険です。
精神疾患でも給付金を受け取ることができる保険もありますが、そのタイプは診断前でなければ加入は難しいです。
「発達障害の診断を受けると緩和型※しか入れない」という情報をネット上では見ることがあります。
しかし、診断名や症状によっては健康な方と同じ保険料で加入することができる保険も存在します。

※緩和型とは、持病があっても加入しやすい保険のことで、保険料が健康な方よりも高くなります。保険料が高くなることをイメージされる方が多くいらっしゃいますが、保険の内容によっては健康な方と比べても保険料は数百円しか高くないものもあります。

がん保険

がんの診断で一時金を受け取ったり、治療したときに給付金を受け取ることができる保険の総称です。
がん保険は、発達障害でも健康な方と同じ保険料で加入することが可能なものもあります。

特定疾病一時金保険

がんや脳血管疾患、心疾患などの特定の病気での入院や手術により受け取ることができる保険です。
こちらの保険も、健康な方と同じ保険料で加入できるものもあります。

就労不能保険

働けなくなった時に給付金が受け取ることができる保険です。
支払い要件に該当すると、一時金や毎月決まった金額を受け取ることができます。
支払い要件は保険会社ごとに異なりますが、身体障害者手帳での等級や障害年金の支給、三大疾病により支払われるものが多いです。
精神障害者手帳で受け取れるものもあります。
ただ発達障害の診断を受けていると、就労不能保険への加入は困難なことが多いです。

所得補償保険

発達障害の方が働けなくなった時の保険を準備するにあたって押さえておきたいのが「所得補償保険」です。
損保分野の保険になります。休業により、給付金を受けることが出来る保険です。こちらは発達障害の方でも加入できるケースもあるので、調べてみることをおススメします。

 

このように一概に「保険」と言っても、その役割は様々です。
自分に合った保険を選んで加入できると安心ですが、発達障害の診断のため、保険種類によっては加入することが難しかったり、条件が悪くなったりすることがあります。
その場合でもすぐに諦めるのではなく、加入できる保険を組み合わせることで、元々の希望に近づけることができます。
このように保険をどのように組み合わせていくといいのか、発達障害の方の保険の入り方のコツなどを次回は解説していきます。

執筆者プロフィール

岩切健一郎(いわきり けんいちろう)

発達障害専門FP。ファイナンシャルプランニング技能士1級。
1986年生まれ、宮崎県宮崎市出身。
自身もADHDがあり、お金に苦労した経験から発達障害専門FPとして活動。
親亡きあとのマネープラン、発達障害当事者のライフプランを
年間100件以上作成。
発達障害でも加入できる様々な保険の取り扱いあります。
保険にお悩みの方や親亡き後のお金のことでの心配な方はこちらからお問い合わせください。⇒https://hinata-hoken.com/

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