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支援者の理想を語らないでほしいと思うこともある

私の息子は現在23歳、自閉症と知的障害があります。親子ともども支援学校の先生、療育施設や放課後等デイサービスなど今まで多くの支援者に出会ってきました。

支援者に救われたことも多々あり感謝の気持ちでいっぱいですが、時に「その言葉、正直他人の支援者だから言えるけど、親としてはそんな気持ちになれない……」と反発の気持ちを感じたことも、一度や二度ではありませんでした。

言うは易く行うは難しの「リフレーミング」

例えば、支援者がよく言うフレーズに「子どもの良い面に目を向けましょう」「リフレーミングしましょう」というものがあります。リフレーミングとは枠組みを変えて俯瞰すると言う意味です。

【リフレーミングの例】

・騒がしい、奇声を発する×
・元気〇
・明るい〇

・落ち着きがない×
・好奇心旺盛〇
・エネルギッシュ〇

・好き嫌いが多い、偏食である×
・舌が繊細でこえている〇
・将来有名シェフになる素質がある〇

・スーパーでお菓子を欲しがって地べたで泣きわめく×
・自分の意見を主張することができる〇

なるほどもっともな考え方です。でも正直、「他人だから言えるよね」「24時間年中無休で付き合う親と違って、仕事で関わるのも期間限定だから言えるよね」と思ってしまうこと多々でした。

心はそんな単純じゃない

例えば発達障害が原因の偏食があり、白いご飯しか食べず野菜や肉を食べてくれず、ドンドン痩せていって、免疫力も低下し風邪ばかり引いている子がいました。そんなとき「微妙な味の違いがわかるから、将来有名シェフね」なんて言われても親の心が救われることはありません。「きなこやゴマをかけたらタンパク質も取れますよ」とアドバイスされても、それらをかけることを嫌がり白いご飯しか食べてくれません。

落ち着きがなく、教室から出ていてしまう子、「様々なことに好奇心があるのですね」と慰められても「こんな風に一生、落ち着きがなかったら、社会生活が送れない、教室から出て行ったら授業を聞いていないことになり、学力が低下してしまう」「支援者はそういっても、担任からは毎日、叱られてばかりいて自己肯定感が下がりまくり」と親は不安に思っています。

そんなに簡単に枠組みを変えることはできません。それに枠組みを変えようとすればするほど、親は子どものできていない所に目が行ってしまうように思います。

リフレーミングするはずがマイナスにばかり目が行く……

「良いところを見るべき」と思えば思うほど、良いところを見ようとその対象に注目すればするほど悪いところに目が行くこと、これって精神科の分野では精神交互作用って呼ぶこともあるようです。(森田療法)

医学的なところはよくわかりませんが、確かに自分の胃や心臓の動きを自分でコントロールできないのと同じで、自動的に浮かんでくる不快な感情やマイナスの思考を何とかしようとしても、気合や努力でなんとかできるものではないと思います。

何とかしようとすればするほど、「こんな風に思ってしまう自分はダメだ」となり、子どもの良いところに目を向けるどころか、それができない自分自身にも更にダメ出しをしてしまうと思います。

無理に見方を変えようとしないで「ああ、発達障害の特性で舌の感覚過敏があるんだな、仕方がないな」「注意欠如/多動性障害(AD/HD)だから、情報が一度に入っているんだな。窓の外が気になるんだな」と親としての素直な感情を受け入れることが有効な場合もあるかもしれません。

親の気持ちと支援者のアドバイスの「ずれ」は必ずあります。なので、できることは受け入れ実践し、できないことは無理してやらない、できない自分を責めない。長く続く障害児育児には、そんな勇気も必要なのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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