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クックドゥと自閉症

息子が特別支援学校中学部時代の話です。学校からのお便りにこんな写真が載っていました。

調理実習の授業のメニューは、回鍋肉だったようですが、なんと!市販の合わせ調味料※この日は味の素株式会社の「Cook Do®」(クックドゥ)を使い、さらに学校からのお便りにはパッケージ裏掲載のレシピが載っていました

まず、授業で市販の合わせ調味料を使って調理実習することにびっくりしました。実際にクレームを言っている親御さんもいました。

が、しかし!いい方に解釈すると、学校側は、偏食で味覚過敏もあることが多い自閉症の子のために、どこでも手に入っていつでも同じ味を再現できる、おなじみの市販の合わせ調味料を使ったのかもしれません。

家でこれらを使ってない家庭も、子どもの偏食で悩んでいたら、調理実習と同じものを作ってあげれば、もしかして食べてくれるかもしれませんし、作るのも簡単だから、将来自立して自分で料理することの練習にもなります。

お殿さまな息子

息子はルールを重んじてキッチリカッキリしています。その点、いつでも、誰が作っても味が変わらない市販の合わせ調味料は便利です。でも、一つ問題があります。タレはそのまま説明通りに使えばいいのですが、野菜や肉は私が用意し、切らなくてはならないことです。

こういった商品は大抵パッケージに、親切に仕上がりの写真を美しく載せてくれているのですが、これにルールに厳しい息子のセンサーがピピッ!と反応。野菜の種類がパッケージ通りでないと、息子は違うと言って怒りだしました。

例えば…麻婆茄子をつくったときに、うっかりピーマンを入れ忘れてしまったことが ありました。麻婆茄子に必ずピーマンを入れなくてはならないという決まりはないのですが、箱にはピーマンが写っています。息子はピーマンが入っていないことを許してはくれませんでした。

私が「あんたはお殿さまだね」と皮肉で言ったら、比喩が通じないため「お殿さまじゃない、立石○○(自分の名前)」と言い、さらに怒りをかってしまいました。

八宝菜の椎茸

我が家で八宝菜をつくるためには、パッケージの写真通りのたくさんの野菜を準備しなくてはなりません。息子は椎茸が苦手なのですが、合わせ調味料のパッケージには椎茸、白菜、豚バラ、いか、海老、人参が使われたできあがり写真が載っています。息子のために椎茸抜きで作ったら「椎茸、入っていない」と激怒しました。その日は八宝菜を食べてくれませんでした。

こんなことがあったので、今度はパッケージの写真通り、椎茸も入れて作りました。息子は前回のように激怒することはないもののしかし!椎茸を全部横にどかして、椎茸抜きの八宝菜を完食しました。

写真通りに作らなくてはならないけれども、食べるときにはそれをどかす。椎茸の味が染みていてもそこは平気、謎です。

市販の合わせ調味料を使えば自炊もできるようになった息子

実家に息子を連れていったとき祖母が完全手作りの麻婆茄子を作ってくれました。案の定、いつもと味が違うので残していました。

最近では市販の合わせ調味料を使って自分で調理もできるようになった息子です。

食べることは生きること、生きるために避けて通れないのが食べること。料理って分量通り作ればその通りになりますが、それがより厳密な市販の合わせ調味料は、変化が苦手な自閉症の子には、少なくとも我が子には、最適のような気がします。調理実習にクックドゥを使ってくれた学校の対応に感謝しています。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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