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発達障害に見えない人

「○○さん、発達障害に見えないですね」「本当に発達障害なの?」「気にしすぎ!普通だよ」発達障害当事者でこんな風に言われたことがある人は少なくないと思います。特に、軽度の人は言われたことがある人も多いのではないでしょうか。私も発達障害(ADHD)の当事者として、何度も言われ、そのたびに複雑な思いをしてきました。

自身の経験を通して「発達障害に見えない」という言葉について、その裏に隠れたエピソードや苦悩に焦点を当てて考えてみたいと思います。

「発達障害に見えない」理由は「代償的機能」が働いているから

発達障害に見えない人は、代償的機能が働いている可能性が高いです。代償的機能とは、障害をカバーするために後天的に身につけた機能のことです。擬態やカモフラージュと呼ばれることもあります。発達障害当事者が社会で生きていくために、身に付けた力です。

私自身もこの代償的機能を駆使して、日常生活での様々な課題に立ち向かっています。例えば、他人とのコミュニケーションで微妙な空気を読み取って円滑な会話を成り立たせる能力や、同時に複数のタスクをこなすスキル、衝動を押さえて自分を制御する力などは、後天的に身に付けた代償的機能の1つです。

代償的機能習得のための経験=無数の失敗経験

代償的機能の習得には経験が欠かせません。習得のための経験はほとんど失敗の経験です。

例えば私も、空気を読めなくてクラスで孤立してしまったり、複数のタスクを抱えてしまい抜け漏れが発生してしまったり、衝動買いで借金をしてしまったり(今は借金も完済し、発達障害専門のファイナンシャルプランナーとして開業しています)、他にもいくつもの失敗をしてきました。失敗しながら、その度に考え、特性と向き合い克服し、必要なスキルや力を身につけていきました。同じ過程を通っている当事者の人もいるのではないでしょうか。

失敗を糧に成長する―この成長のサイクルは、発達障害の人に限ったことではありませんね。ただ発達障害の人は、特性による苦手の数が非常に多く、日常のなんてことないシーンを含む、あらゆるシーンで特性を意識や工夫で抑えることを学習していく必要があります。これがとても大変なのです。

代償的機能を働かせるには集中力が欠かせない

一度スキルを習得したとしても、代償的機能を常時働かせることは基本的にはできません。なぜなら代償的機能を働かせるためには、集中力が必要だからです。
集中力を発揮するためには、2つの条件があると考えています。

集中力発揮のための条件1.体力や精神力に余裕がある

1つ目の条件は体力や精神力に余裕があること。気を張っているとも言い換えることができます。
身体が疲れているときや、心のエネルギーが十分でないときは、特性を抑えるのが難しくなります。失言が多くなったり、仕事の効率が極端に落ちたりします。

集中力発揮のための条件2.集中できる環境である

2つ目の条件は、集中できる環境であることです。周りがうるさかったり、入ってくる情報が多くなったりすると、そもそも集中できなくなり、これまで身に付けてきた代償的機能を働かせにくくなります。

代償的機能は「苦手を抑えるための成長」とも言えますが、その過程でかかるエネルギーや疲労感は相当なものがあります。

「自分をコントロールして他者と適切にコミュニケーションをとる」ということさえも、多くのエネルギーを消耗します。たとえばADHD当事者にとって、思いついたことを思いついたその時に話したい欲望を抑え、相手の話を聞くことに集中するのは、実はかなり疲れることなのです。

 

「発達障害に見えない人」の舞台裏を知ってほしい

発達障害は「できるけれど他の人よりもエネルギーがかかる」障害でもあります。

代償的機能を発揮できている人が努力していて、発揮できていない人は努力をしていない、と言いたい訳ではありません。

一見「発達障害に見えない」当事者も、社会で生きていくために、これまで数多くの失敗をしてきて、負荷がとてもかかって、今現在も見えないところで頑張って頑張ってようやく「発達障害に見えない人」になっている、ということを多くの方に伝えたいと思います。

もし、「発達障害に見えない」当事者に出会うことがあれば、「これまで頑張ってきたんだな」と少しでも思ってもらえると、当事者として嬉しく思います。

執筆者プロフィール

岩切健一郎(いわきり けんいちろう)

発達障害専門FP。ファイナンシャルプランニング技能士1級。
1986年生まれ、宮崎県宮崎市出身。
自身もADHDがあり、お金に苦労した経験から発達障害専門FPとして活動。
親亡きあとのマネープラン、発達障害当事者のライフプランを
年間100件以上作成。
発達障害でも加入できる様々な保険の取り扱いあります。
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