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マンションの壁を破壊。パニックの理由は?

知的障害を伴う自閉症のある息子が特別支援高等部の時の話です。血が滲むくらい手足の爪をむしっていたので、「ばい菌が入るから、止めなさい」と私は注意しました。

息子は(今もそうなのですが)、親から「怒られる」「叱られる」「指摘される」「注意される」「アドバイスされる」ことに敏感で憤り、パニックにつながります。でも、日常生活を送っていく上で注意せざる得ないことも度々起こります。

そのたび息子はパニックを起こすのですが、この時も私の言葉でパニックを起こしてしまいました。そしてパニックの真っ最中にも関わらず、自閉症の特性なのか、決まった時刻19時46分になったら、マンション地下にあるゴミ捨て場に、ゴミを捨てに玄関から出て行きました。(私の住むマンションは24時間いつでも捨ててよいことになっています、夕飯後に捨てに行く家事の分担をさせています)

……いつもなら1分くらいで戻ってくるのに、いつまで経っても帰ってきません。しばらくして管理人室からインターフォンで「息子さんが、マンション共用部の壁を壊しました!」と連絡がありました。

穴が開いたマンションの共用壁(実物)

なんで、暴れるの!

タイミングの悪いことに、壁を叩いているとき、他の住人と出くわしてたようです。その方は2歳のお孫さんを連れていて、その子が恐怖で泣き出したようです。そのため、「変な人が住人にいる」と苦情が出てしまいました。

実は息子の障害のことは、入居したときからマンションの管理会社に伝えていました。お中元、お歳暮も欠かさずして「いつも大変お世話になっております…これからもご迷惑かけることもあるかと思いますが、宜しくお願い致します」と手書きの手紙も添えていました。そのためか管理人さんは息子のことをいつも気にかけてくれています。今回の苦情の際も、苦情の主に対して、私に代わって息子の障害のことを説明してくれたようでした。(もちろん、クレームを言ってきた方には私からも後に謝罪しました。)

でも、こういうことが起こるとひどく疲れます。「なんで、暴れるの!」と頭にきてしまい、私の方が暴れたくなります。

ところが、翌日、学校からの連絡帳を見たら職業訓練のための“身だしなみチェック”の項目があり、そこに「爪は短くする」と書いてありました。

これで爪をむしっていたのです。ちゃんと理由があったのです。

学校とのやりとり

翌日、担任に「学校からの指示をきちんと守って、爪を短くしようとしていますが、手も足の爪も毎日むしっています。先生からやりすぎであることを、うまく伝えてくださいませんか?」と電話をしました。

すると、担任から「『○○㎜は残す』とか『○○㎜になったら切る』では曖昧でわかりにくいので、学校に爪切りを持ってきて、毎月10日・20日・30日に切る方法ではどうでしょうか」と提案がありました。

さらに帰宅後、連絡帳を開くと「昼休みに爪切りをしました。まだ自分では切らず、私とご本人とで切りました。切る必要のない爪の長さも確認しました。繰り返し練習することで自分で切らなくてもよい長さがわかると思います。」と書いてありました。これで爪問題は解決です。

人の行動には必ず理由がある

人の行動には必ず理由があります。息子が手足の爪をむしり、それを注意されてパニックを起こしたのにも真面目な息子ならではの切実な理由がありました。

頭ごなしに注意しないで「なぜそれをするのか」を考えなくてはなりません。「私はまだまだ自閉症の子を育てる親としての修行が足りないな!」と反省しました。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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