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言葉による自傷行為もある

頭を地面に打ち付けたり、顔をパンパン叩いたり、腕を思い切り噛んだりする、自分で自分を傷つける行為、“自傷”。自閉症の子を育てている親御さんの中にも、わが子の自傷行為に悩まれている方が多くいらっしゃることと思います。そして私もその一人です。

この自傷行為は自分の混乱した心の安定を図るためにやっているのだろうと、息子が幼い頃は感じていました。ですから、それを親や保育園の先生が何とか止めさせようとすればするほど、本人は発散する場を失ってしまい、自傷が余計にひどくなりました。

また、なだめたり、言葉をかけたりすること自体が刺激になることもあったので、自傷行為が始まった時は、ただ時が過ぎるのを待っているしかありませんでした。

息子は小学生になるまで言葉を話さなかったのですが、思い通りにならないとき、こだわりが通らなかったとき、自分の頭を叩いたり、腕を噛んだりしていました。

現在22歳、腕を噛む自傷や、パソコンのマウスを思い切り叩きつけるなど物に当たり散らすことはありますが、そのほとんどが、身体を傷つける自傷行為から、言葉による自傷行為に変わってきています。

言葉による自傷-息子の場合-

息子の場合は、自分の思いと裏腹なことを口にすることで自分を傷つける自傷行為が目立ちます。例えば……

「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。(←どこに帰るんだ?)

「入院する」(←入院したくないのに)

「注射する」(←注射したくないのに)

「家出してやる」(←家出したくないのに)

「死んでやる」(←死にたくないのに)

「自殺してやる」(←自殺したくないのに)

「9時58分に寝る!」(←9時58分に寝たくないのに。)(毎日、キッカリ10時に寝るので、僅かに時間をずらす言葉の自傷)

言葉による自傷をしたときの対応法

先述の息子の言葉は心にもないこと、望んでいないことなのです。それが私にはわかるので、次のように息子の言った言葉をオウム返ししながら、共感する語尾を入れるようにしています。

息子「もう、帰る!」

私「もう、帰りたくなっちゃったんだね」

息子「入院する」

私「入院したくなっちゃったんだね」

息子「注射する」

私「注射したくなっちゃったんだね」

息子「家出してやる」

私「家出したくなっちゃったんだね」

息子「死んでやる」(←死にたくない)

私「死にたい気持ちになっちゃったんだね」

息子「自殺してやる」

私「自殺したくなるほど辛いんだね」

息子「9時58分に寝る!」

私「9時58分に寝たくなったんだね」

共感すること、時に何もしないことが大事

自殺したいくらい苦しんでいる鬱病の人に対して、心配した家族の

「元気出して」「皆、辛い時もあるんだから頑張って」

という言葉は本当に自殺の引き金になってしまうので禁句である、と聞いたことがあります。

「死にたくなるくらい辛いんですね」と共感し、耳を傾け、寄りそうことが大切だそうです。それと似ているように思います。

身体への自傷も言葉による自傷も、それが終わるのを見守り、本人の気持ちがクールダウンするのを待つしかありません。周りは積極的に「何もしない」ことが解決法だと思います。

我が家は共感の言葉でらちがあかないときは、黙って見守りながら40度くらいのお風呂を溜めそこに入ってもらうと、温かい風呂につかることで気分が変わるからか、自傷の時間が短くなるように思え、今は実践しています。

 

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

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