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他害行為を改善する魔法の言葉

  • 欲しいものが手に入らないと、叩く…
  • 言うことを聞いてあげないと、つねる…
  • 気に入らないことがあると、蹴る…

お子さんにこのような他害の傾向があると、親御さんとして「癖になる前に止めさせなくちゃ!」と、焦ってしまいますよね。家族やお友達への他害行為が続くことが不安で、お子さんを厳しく叱るきっかけになってしまうこともあるでしょう。

わたしの息子も保育園の頃、担任の先生に噛みついてしまったことがあるんです。怒りや悲しみ、情けなさ・・・色んな気持ちがこみ上げてきたことを今でも覚えています。

やってしまいがちな3つのNGな言葉かけ

  • 「叩いたらダメって言ってるでしょ!」と、行為を否定する。
  • 「お友達、痛いでしょ!」と、他害をされた人の気持ちを考えさせる。
  • 「もうしないって約束だよ!」と、約束をさせる。

ついやってしまいがちな言葉かけですが、これらは避けたいNG例なんです。

なぜなら、発達障害やグレーゾーンのお子さんは、以下の特性を持っていることがあるからです。

  • 否定語をうまく理解できない。または、自分自身を否定されたと受け取ってしまう
  • 人の気持ちや時間の流れなど、目に見えないものを想像することが難しい
  • 「約束」など、人や場所で変化する「概念」を理解していない

また、衝動的に体が動いてしまうことがあったり、言葉よりも先に手や足が出てしまったりすることもありますよね。これらも特性のひとつで、お子さんの力で制御することはとても難しいのです。

他害に関わらず、お子さんが何か困ったことをした時には、「言い聞かせる」ということが多くなりがちです。でも、またすぐに同じことを繰り返してしまいませんか?

そんな時は、お子さんへの関わりを振り返ってみましょう。

 

手が出るお子さんの理由

他害の原因のひとつに、「他害をする前に、嫌なことを経験している」という可能性があります。例えば、次のようなことが考えられます。

(状況)お友達がお子さんの近くにあったおもちゃを使った途端、手が出た

→(お子さんの気持ち)自分の遊びを邪魔されたと思った

(状況)お友達がお子さんの近くにあったおもちゃを使った途端、手が出た

→(お子さんの気持ち)自分の遊びを邪魔されたと思った

(状況)朝食にお子さんの嫌いな食べ物を出したらお子さんにつねられた 

→(お子さんの気持ち)ママがいじわるをしてわざと出したと思った 

(状況)いつもはバスだけど電車を使ったら、お子さんに蹴られた

→(お子さんの気持ち)いつもと同じバスで行きたかった

  

このような「お子さんなりの言い分」が隠れているんです。お子さんの思い込みや勘違いもありますよね。

でも、想像力をふくらませてお子さんの気持ちやこだわりを理解することで、すれ違いが少なくなっていきますよ。

 

他害を減らす・止める「魔法の言葉」

とはいえ、お子さんが嫌な経験をしていると分かっても、共感することってすごく難しいですよね。でも、「共感されてないお子さん」は自分の感情をうまくコントロールできません。そのため、他害行為を注意した途端、かんしゃくにつながってしまうこともあります。

「うちの子、そうかも・・・・」と、心当たりのある親御さんも、いらっしゃるのではないでしょうか?

他害やかんしゃくは、「ぼくにも共感してほしい!」「わたしの気持ちも分かってほしい!」という、お子さんのサインなのかもしれません。

そんな時は、次の言葉をかけてみてください。

「嫌なことがあったんだね」

わたしの息子が先生に噛みついた時も、この魔法の言葉が大活躍!

この言葉をかける前は、先生に噛みついたことを反省する素振りはなく、どちらかというと、笑っている状態だったのです。でも、この言葉をかけた瞬間に、息子の目から涙がポロポロこぼれだしたのです。

 

他害行為を改善する日常の関わり

他害行為を改善するためには、他害が起きた時ではなく、なんでもない日常の関わりが大きな鍵になります。その理由は、他害行為が起きた時はお子さんはすでにパニック状態なこともあるからです。さらに、周りもザワザワとしてしまい、そのような環境では何を伝えても入りにくいからです。

他害行為を改善したい時には、次のことを試してみてください。

  1. 行動の代替案や環境を整える
  2. お子さんが話せる適切なセリフを教える
  3. まずは自宅で親御さんとやり取りの練習をしてみましょう。

 

例えば、

(状況)お友達がお子さんの近くにあったおもちゃを使った途端、手が出た→(お子さんの気持ち)自分の遊びを邪魔されたと思った

1.代替案:

  • 遊ぶエリアを決める(ラグや紐などで囲み、プライベートな空間を作る)
  • 時間を決めておもちゃで遊ぶ、入れ替えをする
  • お友達と距離を取って遊ぶ

2.セリフ:

  • 「まだだめ」(まだ遊んでいるから貸せないよ)
  • 「〇時になったらね」(時間を決めて入れ替えをする)
  • 「いっしょに遊ぼう」(本人がお友達と関わりたい時)

 

お子さんの年齢やお友達との関係性にもよりますが、このように分かりやすい環境やカンタンなコミュニケーションを教えていくことで自宅での成功体験を積み重ねていくことができます。

自宅での成功体験は、園や学校などの集団生活でのお友達とのやりとりにも反映できるようになります。

まとめ

他害行為を改善する・やめさせるということは、お子さん自身のために、人間関係を築くために、とても大切なことですよね。

発達障害やグレーゾーンのお子さんは、周りにいる人の目にはうつらない特性や独特の考え方を持っている場合があります。

でも、実は、「知らないだけ」だったり、「環境の調整でうまくいくこと」もたくさんあります。

手が出てしまうお子さんのせいだけにせず、「共感」や代替案・セリフも、ぜひ日常の一部に取り入れてみてくださいね。

 

執筆者プロフィール

浜田悦子(はまだ えつこ)

発達障害・グレーゾーン専門
子どもとママのための家庭療育アドバイザー

繰り返す問題行動に怒られてばかりの子どもと 孤独な子育てに苦しんでいるママに寄り添い、 子どもの自己肯定感とママの子育ての自信を取り戻し 笑顔に導く家庭療育アドバイザー。
自身の子どもが発達障害と診断されたことをきっかけに、発達支援センターの指導員へ。以来、約2,000人以上の親子に関わる。
大学、発達支援センター、放課後等デイサービスでの講演・研修多数。

【著書】
『発達障害&グレーゾーンの子どもを「急かさず」「怒らず」成長を引き出す言葉かけ 』浜田悦子 (著), 汐見稔幸 (監修) 実務教育出版

【執筆・監修】
ユーキャン 子ども発達障がい支援アドバイザー講座
ユーキャン 思春期発達障がい支援アドバイザー講座

【メディア掲載】
毎日新聞、中日新聞、朝日新聞、ひよこクラブ、朝日新聞 WEEKLY AERAなど

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