読み書き算数を学ぶよりも、感情のコントロールが出来るようになってほしい

息子は特別支援学校卒業後、就労移行支援事業所に通っていました。

■支援員からの電話

ある日のこと、支援員の方から電話がありました。

「立石さんがパソコンの訓練中、データを消してしまいパニックになりました。

小部屋で休憩するように伝えました。部屋の中を覗いてみると手をブラブラ揺すっていましたが、自傷するようなこともなく、自身を冷静にしようと頑張っていました。私(支援員)の方から、感情を文字にして紙に書きだしてみる、音楽を聴く、プチプチを潰すなどの提案をしましたが、声を荒げることなく『大丈夫です』と答えました。

パニックを起こした時の対処法を、家庭内ではない就労移行支援事業所で学ぶ機会がなかなかなかったのですが、今日はそういう意味でも貴重な時間となりました」

■その日の予定

たまたまその日は就労移行支援事業所が終わってから帰り、楽しみにしている“放課後等デイサービスの卒業生の集まり”がありました。

私は当然、「そこに行って気分転換して家に帰ってくるだろう」と思っていました。ところがしばらくして、その施設の職員から「立石君から電話がありました。気分が優れず銀座線を見て家に帰るので、欠席するとのことでした」という連絡が入りました。

私は「好きな電車を見てから、直帰する?ええええ!なんで気分転換しないんだ。卒業生の集まりは気分転換になるのに」と思いました。

それから…

「ワンクッション置かずに家に帰ってくると、私に八つ当たりして大変なことになるぞ」と想像して怖くなりました。そして、携帯で息子の位置情報を確認し、帰宅を恐る恐る待っていました。

しばらくすると、息子は物凄い勢いでドアを開けて家に入ってきたのですが、物を壊すこともなく、私に当たり散らすこともなく、自傷することもなく

「今日は9時30分に寝る!」(←本当は9時55分に寝たい)

「今日はトイレの動画を見ない!」(←本当は見たくて仕方がない)

と自分が一番望んでいない言葉を叫びました。(←これも一種の自傷、身体を傷つけるのではなく、気持ちを傷つけているのです)

昔はいったんパニックが起こると自傷行為をし、物を壊していました。

■温かい人々に囲まれている

後日、就労移行事業所の支援員の方から

「いつもの行動パターンをご自分で変えて、対処されたことは素晴らしい大きな成長ですね」

放課後デイの職員の方からも

「トラブルがあった時に、それを(自分の力で)どうやって乗り越えるか?ということは、きっと誰にとっても大変なことで、そう考えると、今日の立石君の判断と行動は本当に素晴らしいと思いました。

きっとそのままの気持ちを引きずっていたら楽しめないことを本人なり考えて、銀座線を見てから参加するのではなく、欠席する方法を選んだのだと思います」

私は、「このような温かい方々に見守られている息子は幸せだ、孤立していない私も幸せだ。福祉とつながっていることは大切なことだ」とシミジミ思いました。

読み書き計算ができるようになる、パソコンの技術が向上することも必要ですが、自分の気持ちを自分の方法でコントロールする術を知っている方が、これからの人生を送っていく上で大切なことだと思い知らされた出来事でした。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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