「自閉症ではないですよ」と言ってほしい。障害受容の5段階

「余命、一ヶ月です」の宣告。
これを言われて「はい、そうですか、わかりました。覚悟します」と直ぐに受容する人はいないと思います。

■死ぬ瞬間

次はキューブラー=ロスの“死ぬ瞬間”という書籍に書いてあったことです。

【否認・隔離】
自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階である。

【怒り】
なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階である。

【取引】
なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階である。何かにすがろうという心理状態である。

【抑鬱】
なにもできなくなる段階である。

【受容】
最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階である。

これは、死を受け入れる過程として書かれていることですが、我が子の障害受容のときも同じではないかと感じています。

■「お子さんは自閉症です」の宣告も同じ

自閉症という障害は治療すれば治るものではありません。
療育すれば行動は改善するかもしれませんが、治るものではありません。

胎児のときから自閉症で年老いても自閉症のお爺さん、お婆さんです。

ですから、発達障害の診断をうけたとき、「はい、わかりました」とすんなり受け入れる親御さんは皆無だと思います。

かつての私もそうでした。

息子は2歳3か月のとき自閉症と診断されました。私は、診断した医師を「ヤブ医者だ」と恨み、担当医を変えてほしいと看護師に交渉しました。けれども「初診でかかった医師が主治医となるので変えることは出来ません」と言われました。

主治医を変えることを断られたので、私は「もう二度とあの医師の顔は見たくない」と翌月の予約をキャンセルしました。

誤診と思い(否認)

定型発達の子と比較して、「どうしてうちの子が」と(怒り)を感じ

「自閉症ではないですよ」と言ってくれる医師を探しドクターショッピング、「自閉症を何とか改善させよう」と療育に期待しました(取引)。

でも、自閉症が治るわけではなく定型発達の子どもとの差はますます開くばかりで、抑うつ状態になりました。

■受容のきっかけになった光景

息子は当時、都立梅が丘病院の敷地内で行われていた療育に通っていました。この病院は既に廃院となりましたが、入院病床が264床ある、精神科に特化した18歳までの子ども専門の精神科の病院でした。

ある日、療育開始時刻よりも早く到着してしまいました。時間を潰すため、病院内の敷地を散歩しているとき、ふと鉄格子が目に入りました。

「ここは精神科の病院だから鉄格子があるんだ」と思いました。近づいてみると、鉄格子越しに小学校くらいの子どもの姿が見えました。部屋にはベットと椅子、そして身体拘束をするためのベルトもありました。

私は診察時に医師に「まだ小さな子がなぜ、入院しているんですか?」と尋ねました。

医師は

「この病院には子どもに過度な躾をしたり、放置したりなど障害に即した適切な養育環境がなかったため、自傷が激しかったり、家庭内暴力に至るなどの、二次障害を起こし家庭にいることが難しく入院している子がいて、ベットはほぼ満床です。お母さまも気を付けて育ててください」
と言われました。

息子が鉄格子の中にいる姿を想像しました。そして、「私が受容しないとダメなんだ」と目が覚めました。けれども、受容したあとも、「普通の子に近づけよう!出来ることを増やそう!」と躍起になりました。

こうして行きつ戻りつしましたが、息子が特別支援学校に入学したあと、楽しそうに学校生活を送っている先輩や障害を持つ子どもを育てる保護者との交流を通して、本当の意味で受け入れられたように思います。

真の受容とは、今まで持っていた親の古い価値観を捨てること。我が子に対して「あなたは、あなたのままでいい」と承認すること。

この作業は、「普通」であることの呪縛を断ち切り、「世間体」とか「世間並み」といった横並びの生き方と決別し、我が子にとって最も幸せな生き方を理解し寄り添うことなのです。

「神様、一つだけ願いを叶えてくれるのならば、息子が死ぬ翌日に私が寿命を迎えるようにしてください」と祈りたいところですが、そうはいきません。

ですから、最大の願いは息子が人生の最後の日を迎える時、「僕の人生は幸せだった」と呟いて人生を終えることです。

皆さんの願いはなんですか。その答えがきっと答えを出してくれると思います。

 

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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