発達障害者は精神障害者?我が子が精神障害者と言われ怒る人

発達障害の人達の中には、学力的なことなど知的に課題はなくても、対人関係でトラブルを起こし、生きていく上で多くの困難を伴うことがあります。小学校以降は友達関係、社会に出ても企業内で起こることもあります。

 

こんなとき、「発達障害という生まれつきの脳の機能障害があるので、本人の気合がないだとか、努力不足だとか性格の問題ではありません」ということを示すいわゆる“障害者手帳”が存在すればよいのですが、残念ながら今は発達障害者手帳というものはありません。

 

障害があることを示す手帳を取るのならば、2年に一度の更新が必要ですが二次障害などで心の病を発症したということで精神障害者に発行される“精神障害者保険福祉手帳”を持つしかありません。どうしてかというと、障害があることを証明する手帳は次の3つしかないからです。

 

・身体障害者手帳

・療育手帳

・精神障害者保健福祉手帳

 

視覚、聴覚、上肢下肢欠損、体幹障害による歩行困難など身体障害がなければ、身体障害者手帳の対象となりません。

自治体によって異なりますが東京都の場合、知能指数が76以上の場合、療育手帳の対象とはなりません。

つまり、身体に不自由もなく、知的に遅れがない場合、残りは精神障害者保健福祉手帳しか存在しないのです。

■法定雇用率にカウントされるには

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があります。民間企業の法定雇用率は2.3%、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する必要があります。(役所などの公的機関はこれ以上ですが)

一般枠で企業就労するのが難しい場合、障害者雇用枠で就労することができますが、障害を証明する手帳が必須となります。

けれども、3種類のどれかの手帳をもっていなければ、これは叶いません。

 ■怒り出す人

東京都の場合、知能指数が仮に85(一般の平均は100)の場合は療育手帳の対象とはなりません。

身体障害もなく身体障害者手帳の該当にならないと、残るのは“精神障害者保健福祉手帳”です。すると、「知能が平均より少し低いだけなのに」「うちの子は発達障害。精神障害ではない」と怒り出してしまった親御さんを目にしたことがあります。

私は心の中で

「そうじゃないのよ。制度上、知的障害のないとみなされる発達障害の人が、障害者雇用促進法の法定雇用率でカウントされて企業就労するには、なんらかの障害者手帳が必要なのよ。今の制度上では、知的障害のない発達障害児は精神障害者保健福祉手帳が必要となるのに」と叫びました。

発達障害のある人は社会生活での困難を伴う面では、知的障害、精神障害、身体障害がある人と同じです。

日本の福祉は自己申告制で、親がわが子の障害に気づいて積極的に動くことで取得できます。二次障害により鬱などの精神疾患を発症しておらず、精神障害者保健福祉手帳を取得できない場合は障害福祉サービス受給者証をとって、福祉とつながっていることを示す方法もあります。

「わが子には精神障害はないのに!」と怒るのではなく、福祉とつながることでわが子の将来の選択肢を広げられます。

人生100年時代、後の人生が長く続きます。精神障害者保健福祉手帳で雇用枠での就労を目指したり、受給者証で福祉サービスを活用したり、支援者につながる機会を増やすことがわが子を守ることにつながるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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