比べてしまうのは人間のさが?孫自慢にうんざり、比べる病を卒業できない私

私はもう還暦を過ぎているのですが、孫が生まれる友人も次第に増えてきました。

少し前までは同級生の集まりに参加すると、飼い犬自慢で盛り上がっていましたが、子どもが就職して、家から出てしまうと“空の巣症候群”となり、犬を飼い始める友人が多くなってきたからです。

(空の巣症候群…子どもが家を出たり結婚したりしたときに、世話してやる相手がいなくなり、自分の存在価値がなくなったと感じ鬱になる状態)

最近は集まるとスマホを持ち出し、孫の写真を見せ合う“孫自慢”になってきました。

そんな空間にいると、ふと「私にはこういうことは生涯巡ってこないんだなあ」と悲しくなります。私の息子は現在21歳、知的障害のある自閉症なので「結婚することはない」とつい考えてしまうからです。

また、障害児を育てていても、他に定型発達児の兄弟姉妹が子どもにいると孫自慢も出来る日がやってくるかもしれませんが、私はシングルマザーなのでそうではありません。

ただ、定型発達の子と障害児の子を同時に育てている親御さんはどうしても障害のある子に目がいってしまうため、定型発達の子にかまってあげられる時間が少なくなります。ですから、きょうだい児を育てる苦労があると思います。

でも、私にはその経験をしていませんから、その悩みや苦悩は実際にはわかりません。誠に身勝手なのですが、子どもが複数いる人をうらやんだりすることもあります。

 

こうして、今になって、またかつて悩まされていた“比べる病”がムクムクと顔を出し始めました。

 

©今井久恵

息子に障害があることがわかってからは

・お座りが出来たのが早い、遅い

・立って歩くのが早い、遅い

・離乳食をモリモリ食べる、食べない

・言葉が早い、遅い

・オムツがとれた、とれない

 など定型発達児を育てるママ友の話題に直ぐについていけなくなりました。イヤイヤ期、習い事、中学受験、進路の悩みとママ友の話題は子ども年齢と共に変化していきましたが、息子には縁のないことだったので、友人の集まりから次第に足が遠のきました。

 ■進路決定

特別支援学校高等部の3年生だった頃、障害児を育てるママ友との話題はもっぱら卒業後の進路のことでした。

(特別支援学校高等部卒業後の進路)

・障害者雇用枠での一般就労

・就労移行支援事業所

・就労継続支援A型

・就労継続支援B型

・生活介護

企業就労する子の話を聞くと、私は「おめでとう。良かったね」と言いながら胸が苦しくなりました。どうしてかと言うと息子は企業に障害者雇用してもらう能力がなかったからです。

でも、「生活介護に行く子の親は、就労福祉支援事業所に行く息子のことを聞いて、胸がザワザワしているだろう」とも思いました。

■SNSで発信すると

息子が福祉サービスを受けていたり、特別支援教育の中で手厚い指導を受けていたりすることをSNSにアップすると、障害が軽い子の親から次のような書き込みがくることがあります。

「知的障害のない発達障害の我が子は支援の網の目から、零れ落ちてしまっている。立石さんが羨ましい」

「グレーゾーンではなく、しっかりと知的障害のある自閉症だったら、どんなに良かったか」

私は心の中で「知的遅れがなかったら、一人でお金の管理、出来るでしょ!親亡き後のこと考えなくてもいいでしょ」と叫んでいます。

比べてしまうのは人間のさがなのかもしれません。

■定着率

「知的障害のある方の正規雇用率は雲を掴むような数字で、半年更新や3ヶ月更新の有期雇用、要はアルバイト。3年以内に正社員となった人は40%を下回る」と聞いたことがあります。

私の周りでも障害者雇用枠で企業就労しても、苛めにあったり馴染めなかったりして戻ってきている人がいます。

そうなると「『企業就労おめでとう』と喜んでいられるのは今だけなのかもしれない」と負け惜しみで考えてしまいます。比べる病を卒業できていません。

けれども、そんな自分を卑下すること自体もまた、自分を追い込むことになるので、あるがままの自分の心の状態を受け入れようと思っています。

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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