オウム返しで誤認逮捕?

発達障害の人が逮捕されたとき、誘導尋問にかかりやすいと聞いたことがあります。

ただし、逮捕されたとき取調室で

刑事「君がやったんだね?」

本人「君がやったんだね」

のように完璧なオウム返しをすれば、「あれ、おかしな日本語だな、もしかしてこの人は自閉症かな」と知識がある刑事はわかってくれるかもしれません。

また、大人になってもこの状態だったら、おそらく知的障害もあり、自閉症としては軽くはないでしょう。そのため、親が早い段階で障害に気付き、療育手帳を幼児期から持っているかもしれません。これで障害者であることが証明されます。

けれども、知的障害がごく軽度で手帳が発行されず(自治体によって異なりますが、概ねIQが70~75以下でなければ療育手帳は発行されません)、刑事の言葉の後半部分の「ね」を省略して「やったんだ」とか、「君がやったんだね」と詰め寄られ、条件反射で「僕がやりました」と反応したりしたら?

もしかして、誤認逮捕されるかもしれません。

■身近で起こったこと

【毛玉】

特別支援学校で保護者と警察との交流会がありました。

ある母親が

「息子は毛玉にこだわりがあり、隣に座ってる女性のニットのセーターに毛玉が付いていたら、きっと取ろうとすると思います。痴漢扱いされ逮捕される可能性はあるのでしょうか」と質問しました。

警察は

「あくまでも相手が嫌な思いをしたら、障害児であっても逮捕される可能性はある。犯意があったかどうかが焦点となるが、障害があるから絶対に逮捕されないことはない」と答えました。

【ボール】

知り合いの25歳の自閉症の青年の話です。

公園で足元にボールが転がってきました、拾ってあげて幼い子に渡しました。「人に会ったら挨拶しましょう」と躾けられていたのと、「遊びたい」という気持ちでボールを渡した後、笑いながら幼児に言葉をかけました。母親は不審者だと思い警察へ通報しました。

【バス】

特別支援学校のスクールバスで「奥から順番に座りましょう」「座席は詰めて座りましょう」と教えられていた子。公共のバスに乗りました。空いていて乗客はたった3人でした。

でも、学校で教えられてきたルールを遵守して、女性の横にピタッと座りました。空席はたくさんあるというのに、見知らぬ男性がすぐ横に座ってきたので、女性は恐怖におののき逃げました。

【気になるロゴ】

息子は幼い頃、コーチのベージュのバックのロゴに執着していました。(私は持っていなかったのですが、こだわっていました)

電車内でコーチのバックを持っている女性を見ると、ペタっと触りに行きました。当時は幼かったので許されていたのでしょう。幸い今はそのこだわりは消えましたが、19歳の今もこれが続いていたら、スリと思われ通報されていたかもしれません。

■本人が手続きできないかも

日本の福祉は自己申告制です。療育手帳を取ったり、障害基礎年金を受給したり、福祉サービスを受ける時、果たして知的障害のある本人が様々な複雑な手続きが出来るでしょうか?無理なことです。

知的障害が軽すぎたり、なかったりして手帳の発行対象者とならなくても、医師の意見書(精神科医でなくても小児科医でも可能、診断書とは別物)があれば障害福祉サービス受給者証が発行されます。

これを取得すると障害者総合支援法や児童福祉法に基づいて提供されている福祉サービスを行政の給付金を受けながら利用できるようになります。

これにより福祉とつながり、発達の凸凹があることを第三者に知らせておくことにより、もしかして誤認逮捕を免れるかもしれません。

 

親一人で「この子を何とか育てよう」と奮闘しないで、福祉サービスを利用して行政とつながっていることが、将来子どもを救うことになると私は思っています。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
オフィシャルブログURL http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/

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