自閉症の子の友達関係

友達っていいものですよね。

でも、成人した自閉症の息子は今も学生時代も親友と呼べる友達は一人もいません。週末に友達と待ち合わせをして出かけるなんてことは一切ありません。

週末は自分のしたいことをし、行きたいところへ行く一人行動です。こんな風にスケジュールを立てています。

 

 

幼い頃も一人遊びばかりしていて友達と関わることはしませんでした。関わることがあっても、それは相手の持っている玩具が欲しいときだけでした。

私は自閉症の子を育てる親としてまだ未熟だったころ、健常者の目線で「友達を作って一緒に遊ぶことはよいことだ、楽しいことだ、だから息子にもその喜びを味わわせたい」という気持ちで焦りまくっていました。

棒切れや石ころや数字と戯れている息子の姿をみて、切なく思い、無理やり腕を引っ張り子ども達の輪に入れようとしていた時期もありました。「馬を水辺に連れて行っても水は飲まない」状態で、友達の輪の中に入れてもポツンとしているだけ、また棒切れや石ころのある場所に戻ってきてしまいました。

さて、大人になった今、「友達と関わりたくない」とか「関心がない」訳ではありません。そういう意味でも人生経験を積んで発達し成長しました。ただ、人に興味を持つこともありますが、それが相手の気持ちを考えない一方通行のこともあるので、トラブルが起こることもあります。

また、私が考えるような友達関係を望んでいないのだろうとも思うことがあります。
次にそんな具体例をお話します。

■居心地の良い相手

一緒にいて心地良い相手はいるようです。

特別支援学校時代から仲が良かったので、親同士話し合って同じ日にショートステイを申し込みました。 ショートステイの翌日には、息子はトイレ散策、A君は電車の旅と、それぞれ予定がありました。

前日の夕飯時はこんな仲良くしているのに。

翌朝、息子はA君に何の声もかけずに、好きな便器を見に行くため先に帰ってしまいました。そこで、私はA君のママとの人間関係を崩したくなかったので、「息子が何の言葉もかけずに、先に帰ってしまったようでごめんね」と直ぐにLINEをしました。

すると、A君ママから「息子が、『立石君はいい人すぎる』と言っていたよ」と返信がありました。A君は息子が黙って帰ったことを気にすることもなく、却って自分のペースを乱さない息子を好ましく思い、颯爽と電車を見にいくためショートステイを後にしたようでした。

お互い気を遣うこともなく、社交辞令もありません。不快にもなりません。ママ友と「あの2人の関係、羨ましいね」と話しました。こんな会話ができるママ友ができたことも、私にとっては嬉しいことでした。

さて、息子は現在就労移行支援事業所に通っています。そこでの昼休みも、同じような光景があるそうです。支援員さんによると、訓練生は同じ店に行くのにバラバラに行き、バラバラの席に座って各々食べている、というのです。(コロナの時期と関係なく、それ以前からずっとそんな光景だとのことです)そんな一定の距離を置いた関係が快適なのでしょう。

ついつい自分の価値観を我が子に押し付けたくなりますが、定型発達児、発達障害児に関わらず、自分とは異なる人間です。「友達ともっと交わりなさい、一緒に趣味を共有して楽しみなさい」などと親の考えを押し付けてはいけない。そう思った出来事でした。

 

 

 

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル

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