fbpx

お問い合わせのご連絡は

0120-322-150

 平日9時〜17時(土日・祝日・年末年始を除く)

24時間
受付

お問い合わせフォーム

「障害は個性」って本当?自閉症のある息子と向き合って感じた違和感

「障害は個性のひとつ」——。これまで何度となく、周囲からそう言われてきました。24歳の知的障害と自閉症のある息子を育てるなかで、この言葉に何度も出会い、そのたびに、何とも言えない違和感を覚えてきました。

「障害だなんてとらえずに、個性として見ればいいんじゃない?」
「うちの子は障害じゃない。ちょっと個性的なだけ」

そう語る人のなかには、「障害」という現実をまだ受け入れきれていない心の揺らぎも感じます。また、ときにはその「個性」という言葉が、“配慮をしないための口実”にすら聞こえてしまうことがあります。

ある知り合いが保育園に「うちの子は発達障害があるかもしれないので、少し配慮してほしい」と伝えたとき、園からはこう返されたそうです。

「それは個性の一つですよ。○○くんだけ特別扱いはできません。みんなと同じように、分け隔てなく保育していきます」

——配慮を求めた結果、「平等」の名のもとに「何もしない」と返される。このときの「個性」という言葉は、「障害ではないから特別な支援は必要ない」と伝えるための、都合の良い言い換えにしか思えませんでした。

 

「障害」と「個性」のあいだで

私は、「障害か、個性か」という議論には関心がありません。そして「障害=個性」ととらえることに違和感があります。むしろ、息子の中にある本来の個性が、自閉症や知的障害によって見えづらくなっている気がように思います

私はこんなイメージの絵を描きました。

それは、息子の“個性”の上に、大きな“障害”が重なって覆い隠しているような絵です。そしてふと、思うのです。

もし息子に障害がなかったら、どんな性格だったんだろう?
お母さんと、どんな話をしていただろう?
24歳の定型発達の青年だったら、彼女の一人や二人、いたのかな。
友達と週末に出かけて、楽しんだりしていたのかな。

そんなことを想像すると、現在友達が一人もいない息子、恋人なんてとんでもない息子、切なくなり胸が締めつけられます

けれど、それでも、息子から知的障害や自閉症を取り除いたら、もう息子ではなくなってしまう、そう思ってしまう自分もいて親として身勝手だなあと思います。

「障害」はラベルではない。「性格」でもない

さてダウン症のある方について「人懐っこい」「素直」「ダンスが好き」「やさしい」「純粋」といった“特徴”を語られることがあります。確かにそういった傾向のある方もいるかもしれませんが、必ずしも全員がそうではありません。

実際に、こだわりが強く自閉傾向のあるダウン症のある方もいますし、人懐っこくない方、ダンスに興味がない方もいます。息子も、ダウン症のある友達から、まるで“パシリ”のように使われていたことがありました。

これは、ある人の行動は、単にダウン症という障害の特性だけで決まるのではなく、その人が育ってきた環境や、親からどのような関わり方をされてきたかといった要因も大きく影響している。つまり、その人の行動は、障害の特性に加えて、環境や養育の影響が重なって形成されているということなのだろうと思います。

発達障害は“見えにくい障害”。だからこそ迷いも生まれる

ダウン症のように染色体検査をして明確に診断できるような検査は発達障害にはありません。血液検査の結果など、数値を元に明確に示すことができないため、「これは障害なのか、個性なのか」という線引きが曖昧で、専門医に診断されても、親がなかなか受け入れられないというケースも少なくありません。

「障害=個性」という言葉が覆い隠してしまうもの

でも、そもそも「個性」は誰にでもあるもの。障害の有無に関係なく、人にはそれぞれ異なる性格や傾向があり、それが個性です。

にもかかわらず、「障害のある子はみんな天使だよね」といった言葉をかけられることがあります。その言葉に込められた善意は理解できるものの、決めつけてしまうような、型にはめるような言葉のように思えてモヤモヤしてしまいます。

性格や個性はその人がどんな環境で育ち、どんな経験をしてきたかによって形作られるもの。優しかったり、頑固だったり、意地悪だったり、障害のあるなしに関係なく、皆それぞれ違って当たり前なのです。

障害者は天使ではなくただの人間でそれぞれ違った個性があります。だからこそ、私はやはり「障害=個性」という一括りの言葉に違和感を覚えるのです。

執筆者プロフィール

立石美津子(たていし みつこ)

著述家
20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。
自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル
Voicy  https://voicy.jp/channel/4272
オフィシャルサイトURL https://tateishi-mitsuko.com/
テキトー母さんのすすめ(アメブロ) https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事