fbpx

障害のある子と第二子出産 (我が家の場合)

「あの頃が人生でいちばん辛かった」

長女には6歳離れた妹がいます。妹が産まれたのは、長女が支援学校に入学してまだ間もない頃でした。
待望の2人目ではありましたが、出産に臨むときは大変でした。通常は産院で出産したら、4~5日は入院することになるわけですが、その時、誰が長女の面倒を見るのか?という問題がありました。

私の両親は私が独身の頃にすでに他界していましたから、いわゆる「里帰り出産」は叶いませんでした。また、主人の母も遠方で、頼ることができませんでした。ですから、私は入院せずに自宅で出産する方法を検討しましたが、長女が染色体異常で産まれたことを告げると、ハイリスクだからという理由で、病院での出産を強く勧められました。

友人が「長女と一緒に入院できる病院」を見つけてくれたのは妊娠8ヵ月の時で、藁にもすがる想いで慌てて転院しました。個室が入院の条件でしたが、出産から退院まで、長女と一緒に入院させて貰えるとのことで、「誰が面倒をみるのか?」という問題は一応クリアできました。

しかし私の算段は甘かった…。その時長女は6歳になったばかり。トイレも食事も全介助でしたので、私は出産直後から、輸血と点滴、導尿の管に繋がれながら、長女の世話をしていました。それでもそんなことは苦労のうちにも入らなくて、私はただただ嬉しくて、可愛い2人の娘と一緒に過ごせることが幸せでした。

地獄のような苦しい日々は、退院後から始まりました。

「助けてください」

自宅に戻ると長女の様子が一変しました。あんなにニコニコと笑顔を絶やさず、穏やかでご機嫌さんだった長女から、表情が消えてしまいました。全く笑わなくなったのです。そして、次女が泣き声をあげるたび、長女はパニックを起こして泣き叫びました。そのうち自傷行為が始まり、傷になって血が出ても、自分を痛めつけることを止めようとしません。また、泣いてばかりいる生後間もない次女にも怒りの矛先が向かうので、ほとんど首もすわっていない新生児なのに、私は四六時中抱っこやおんぶをして過ごしていました。

母を妹に取られた嫉妬と、音の過敏から子どもの泣き声が大嫌いなのとで、家の中は長女にとって、安心して過ごせる場所ではなくなってしまったのです。

「どうして妹を受け入れてくれないんだろう…」
「なんでそんなにも冷たい眼差しで睨みつけるんだろう…」

長女の辛さがわかりつつも、どうしてやることもできずに追い込まれていく日々でした。

「もうダメだ…このままでは私が子どもたちを手にかけてしまう…」

絶望的な気持ちで役所のあらゆる課に電話をしたけど堂々巡り。そして最後に、一縷の望みを託して児童相談所に助けを求めたのですが、結局、市役所の関連部署の電話番号を教えられただけでした…。とうとう私は精神的に追い込まれ、身動きが取れなくなりました。

「活動の原点」

そんな私たち親子を見るに見かねて助けてくれたのは、私の友人たちでした。互いに面識のない彼女たちでしたが、毎日誰かは必ず家に来て、「赤ちゃん抱っこしとくから、りんちゃんとお散歩に行っておいで」「たまには美容室行っておいで」「家事手伝うよ」と、私を助け、励まし続けてくれました。私は彼女らに救われました。大袈裟ではなく、命の恩人と思っています。あの頃が人生でいちばん辛かった…。今思い出しても涙が溢れてきます。

次女が産まれて半年くらいして、ようやく長女も少しずつ笑顔を見せるようになりました。支援学校に入学したばかりだったから、そうでなくても生活が激変し、幼い長女は私なんかより、もっともっと心細くて辛くて寂しかったのだと思います。

そして私自身は、寄り添い支えてくれる存在が、どれほどありがたく大切なのかも、この経験でよくわかりました。人が助けを求めたとき、本当に必要な支援とは、どうあるべきかを知りました。

娘たちから学び、心優しい友人たちが教えてくれた大切なことの数々…。
その経験が、今の私の活動の原点です。

執筆者プロフィール

藤井奈緒

『親心の記録®』公認アンバサダー

一般社団法人「親なきあと」相談室 関西ネットワーク 代表理事

大阪府八尾市在住。八尾市教育委員会 教育委員(2019年12月~)
重度の知的障がい者である長女(18才)と、健常児の次女(12才)の母。
『親なきあと』次女一人に、長女の世話を引き受けさせることになるかもしれない状況に危機感を抱き、法的な備えについての勉強を始めました。
その後、自分と同じように『親なきあと』を心配している障がい者家族が大勢いる事を知り、講演活動等を通じて、将来に向けて備えることの重要性を訴えています。
また、メンバー全員が障がい者の親きょうだいので、尚且つ、法律や福祉、マネープランニングなどの各分野の専門家と共に【一般社団法人『親なきあと』相談室 関西ネットワーク】を設立し、個別相談やセミナーを通じて、障がい者の家族が安心して、笑顔で暮らしていくための情報提供を行っています。
また、一般的な『終活』をテーマとした講演活動も行っております。

~所持資格~
・終活カウンセラー1級®
・相続診断士®
・家族信託コーディネーター®
・メンタルヘルスマネジメントⅡ種
その他、福祉関連公的資格 多数

~講演実績~(月間平均10~12講演 ※2020年)
・支援学校PTA勉強会
・障害者団体保護者向け勉強会
・障害者施設職員研修       その他多数

~メディア実績~【テレビ・新聞・ラジオ・雑誌】
・NHK総合『ニュースほっとかんさい』特集
・産経新聞・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞医療プレミアム
・文化時報・シニアガイド終活探訪記
・インターネットラジオ、各地の地域FM、・KBS京都ラジオ 他

この執筆者の記事一覧

関連記事

おすすめの記事