てんかんってどんな病気?

国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科の馬場信平と申します。小児の神経の病気、特にてんかんの診療に日々取り組んでいます。

この度は2回にわたり、てんかんについてのコラムを担当することとなりました。よろしくお願いします。

さて、皆さんは「てんかん」という病気をご存知でしょうか。

日頃、特に医療に触れることがない人でも、名前は聞いたことがあるのではと思います。珍しい病気だよね?と思うかもしれません。

でも実は、100人から200人に1人が一生のうちに経験するくらい、ポピュラーな病気です。

今回のコラムでは、身近なはずなのにあまり知らない、てんかんという病気を解説します。

■てんかんってどんな病気?

てんかんのお話をする前に、少しだけ、脳についてのお話をさせてください。

てんかんという病気を考える上で重要なのが、「大脳」と言われる部分です。これは人間の脳の中で、もっとも大きく育っている部分で、様々な働きを担っています。

たとえば、

・手足を動かす

・物事を覚える

・目で見たものが何か分かる

・熱い、冷たい、痛い、といった感覚が分かる

・考えごとをする

・・・などなど。

ちょっと専門的な話になりますが、大脳は部位によって役割分担をしています。ここは手を動かすところ、ここは目からの信号を受け取るところ、といった具合ですね。

では、てんかんとはどんな病気でしょうか。

てんかんとは、この様々な働きを担う大脳に突然不調が起こる。その結果、様々な症状が、繰り返し現れる病気です。

この症状のことを、「てんかん発作」、または省略して「発作」といいます。

■てんかんの診療の流れ:診断名は同じでも・・・

同じてんかんという病名でも、患者さんごとに、発作の症状も、治療内容も、先々の経過も、大きく変わってきます。

なぜ、発作の様子が人によって全然違うのか。それはてんかん発作が脳のどこから現れて、どのように広がっていくかが、人によって異なるからです。またてんかん発作が1日のどの時間帯に現れるか、どれくらい頻繁に現れるかも、これまた患者さんによって様々です。

症状の例:

(例)月に1回くらい、全身のけいれんが起こって、倒れてしまう

(例)1日に何回も、10秒くらい、ぼーっとして反応がなくなる

(例)年に2回くらい、寝ている間だけ、顔の右側がぴくぴくする

医師の側からすると、てんかんの診療は、この患者さんごとの特徴を把握するところからスタートします。

脳波をはじめとしたいくつかの検査の結果を見る必要もあります。

てんかんである、と診断がつけば、たくさんの種類があるてんかん発作を止める薬(=抗てんかん薬)のうち、どれが患者さんに合っていそうかを考えます。

ひとたび治療を始めると、年の単位で抗てんかん薬を飲む必要があります。治療の必要性や、薬ごとの特徴を理解してもらえるよう(注意するべき副作用も含めて)、私たち医師は患者さんとコミュニケーションを取る必要があります。

■てんかんのある人の生活指導:「てんかんのある人は、〇〇をしてはダメですか?」

患者さんまたはそのご家族に、てんかんという病名を伝えると、上のような質問を受けることが多いです。

〇〇には色々なものが入ります。

小・中学生だと水泳、マラソン、その他色々な部活動、ゲーム、部活の遠征、修学旅行、

年齢が大きくなると自動車免許、具体的な職業につくこと、結婚・出産についても、質問を受けることもあります。

繰り返しになりますが、てんかんのある人にどんな症状が現れて、どんな経過をたどるか、これはとても様々です。患者さんを「てんかんのある人」と一括りにして、誰にとっても当てはまる回答をすることは、なかなか難しいことです。

患者さんの「〇〇をしてはダメですか?」にきちんと向き合おうとすると、患者さんごとに、いろいろなことを考える必要があります。

その人はこれから何をしようとしているのか。

その人はいつも、どんな生活をしているのか。

その人のてんかんには、どんな特徴があるか。

発作が止まっているのか、止まっていないのか。最後に起きてどれくらい経っているのか。

薬はサボらないで毎日ちゃんと飲んでくれているか。

原則として、てんかんがあると診断されていても、ちゃんと薬を飲んでいて、1年2年と発作がないなら、ほとんどの活動を禁止する理由にはなりません。

逆に、例えば治療を開始したばかりで、まだ薬が効いているかどうかも分からない時期であれば、半年、いや1年は、発作が起こったら危険な活動は控えましょう、とお伝えすることもあります。

私は小児科医ですから、次回のコラムでは学校生活での場面を想定して、具体的な生活指導の考え方を伝えられればと思います。

■コラムのおわりに

てんかんに限らずどんな病気でも、それがあることで大なり小なり、生活の制限が必要となることがあると思います。

ただ、てんかんの場合は、その病気のことをよく知らない周りの人たちが「万一発作が起こったら危ないから・・・」という理由で、患者さんに本当なら必要のない制限を加えてしまう(または、患者さんが察して遠慮してしまう)ことが多いように感じています。

てんかんという病気のあり方が人によって様々であることが広く知られ、

患者さんごとに必要な対応を考えていける世の中になればと願っています。

もし専門的な立場からのアドバイスが必要な場合は、私たちてんかんの診療を専門とする医師にご相談ください。

 

執筆者プロフィール

馬場信平(ばば しんぺい)

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科医師。
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。
2007年東京医科歯科大学卒。
東京医科歯科大学小児科、聖隷浜松病院てんかんセンター等で研鑽を積み、
2021年4月から現職。
てんかんをはじめとした小児期発症の神経疾患の診療、臨床研究に取り組んでいる。

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター:https://www.ncnp.go.jp

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