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「働けない自分」を責めないで。立ち止まる時間は、制度で確保できます。

2026.07.16 2026.7.16

「働けない自分はダメだ」と、ご自身を責めていませんか。そんなあなたと、一緒に考えたくて書いています。働けないからといってあなたは決してダメではありません。今の状況に近いところから読んでもらえたら、と思います。

凸凹じゃない、ただの凹だと感じている方へ

「障害は個性」「凸凹だから武器になる」

この10年で増えた一見優しい言葉です。それに対し私は、現場でずっと違和感を抱えてきました。

「凸凹は武器」と言われ続けると、自分には凸がなく凹しかないと感じている方は、自分を肯定する言葉を失っていきます。自分は才能のない、価値のない人間なんだと思い詰めている人も少なくありません。

相談支援(障害福祉サービスの利用計画づくりや日々の生活相談を担う仕事)の面談で、私はこんな言葉を何度も聞いてきました。

「自分には、何の才能もないんです」「凸凹じゃなくて、ただの凹なんですよ」

返す言葉に詰まります。

でも、実際のところ「才能」を持っていない方の方が、現場では圧倒的多数です。才能なんてなくて当たり前なんです。

ここで一つ、はっきりお伝えしたいことがあります。

「才能がなくても、あなたの価値は変わりません。凡庸なまま、凡庸な幸せを選んでいいのです。」「どうやったらあなたのままで、あなたのペースで人生を送っていけるか一緒に考えませんか」

「働けない自分はダメだ」という思い込みは、どこから来たのか

「働けない自分はダメだ」という感覚。これはあなた自身が作ったものではありません。「働かざる者食うべからず」「お金を稼ぐ人が偉い」。社会が長い時間をかけて、私たちに刷り込んできた価値観です。

私の妻はパニック障害があり、仕事どころか、一時期は外出もままならない時期がありました。あの時もし、周囲から「働かないとダメだ」と言われ続けていたら、間違いなく潰れていたと思います。

まだ若いのに働かない。社会の物差しではよしとされない選択だったかもしれません。けれど、その働かない時間を尊重されたから、妻は今、自分のペースで仕事を続けられています。

立ち止まる時間は、回復を待つだけの時間ではありません。次の一歩を踏める自分に戻るための時間です。

立ち止まる時間は、制度で確保できます

「働けない自分はダメだ」という感覚は社会の刷り込みであり、あなたは決してダメではありません。「今は働けなさそうだ」、そういうときは立ち止まる時間が必要な人を支えるためにある制度を使ってください。制度を使うのは甘えではなく権利なので、引け目に感じることはありません。

ここでは立ち止まる時間を確保するための制度を5つお伝えします。全部覚える必要はありません。今の状況に近いものだけ、頭の隅に置いてください。

1.傷病手当金(在職中の方)

病気やケガで働けないとき、給与の約3分の2を、最長1年6か月受け取れます。会社員・公務員の健康保険に入っている方が対象です。うつ病や適応障害も含まれます。退職してから動こうと考える方が多いのですが、在職中の方が選択肢は広くなります。

2.失業手当の受給期間延長(退職直後の方)

退職後すぐに動けない方は、受給期間を最大4年まで延ばせます。「今は決めなくていい時期」を、制度で確保できます。ハローワークで手続きします。

3. 障害年金(長期で生活を立て直したい方)

2026年4月分から金額が改定されました。障害基礎年金は2級で月額70,608円、1級で88,260円です。働きながら受給している方もいます。「働いているから対象外」ではありません。

4.自立支援医療(通院費・薬代がきつい方)

精神科への通院費の自己負担が、原則1割に下がります。所得に応じて、月ごとの上限額も設定されます。お住まいの市区町村で申請します。

5. 重度心身障害者医療費助成制度(医療費の負担を減らしたい方)

自治体ごとに名前が違います。東京都は「マル障」、大阪府は「福祉医療費助成制度」。医療費の自己負担分が助成され、負担がほぼゼロになります。

どの制度も、申請して初めて使える制度です。知っているかどうかで、生活が変わります。

「早く決めなきゃ」を、制度で手放した方の話

ここで、ある方の話をさせてください。個人が特定されないよう、細部は調整しています。

A型事業所(雇用契約を結んで働く福祉サービス)を辞めることになった方が、面談に来られました。体調はぼろぼろでした。眠れない、食欲がない、外に出られない。それでも「次を早く決めなきゃ」と、自分を追い立てていました。

私がお伝えしたのは、一つだけです。失業手当には受給期間を延ばせる仕組みがある。「今は決めなくていい時期を、制度で確保できますよ」と。

その方は、受給期間の延長を選びました。そして3か月後の面談で、こう話されました。

「久しぶりに、朝ちゃんと起きられました」

立ち止まる時間を持てたから、また動けるようになった。順番が逆だったら、潰れていたかもしれません。焦って決めた選択は、後で自分を苦しめることがあります。先に立ち止まる時間を確保する。それから、ゆっくり次を考える。この順番が、大切なんです。

 

自分で全部抱え込まなくていい──相談支援専門員という伴走者

ここまで制度の話をしてきましたが、一つ問題があります。制度は、自分一人で調べて、選んで、申請するのが大変なんです。

そこで頼れるのが、相談支援専門員です。障害福祉サービスを使うときの計画を一緒に作り、その後も定期的に様子を確認してくれる専門職です。どの制度が合うか、どこに申請するか、一緒に整理してくれます。しかも、サービス等利用計画(福祉サービスを使うための計画書)の作成は無料です。費用はかかりません。

繋がり方はシンプルです。お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で、「相談支援事業所を紹介してほしい」と伝えてください。それだけで繋がれます。

一つ、お願いがあります。困ってから探すのではなく、元気なうちに繋がっておいてください。いざ体調を崩してから一から探すのは、消耗します。普段から相談できる関係があれば、何かあったとき、すぐに動けます。

一人で全部抱え込まなくて、いいんです。

次の一歩を踏み出す力は、誰にも奪えません

私は阪神・淡路大震災のとき、被災した障害者施設で1年間、支援活動をしていました。そこで忘れられない光景があります。施設で暮らす障害のある方々が、先頭に立って炊き出しをして、被災した人たちに振る舞っていたんです。

支援される側だと思われていた人たちが、支援する側に立っていた。あの光景が、私がこの仕事を続ける原点になっています。

才能があるかどうか。働けるかどうか。それは、その人の価値とは関係ありません。あなたの価値は、才能や仕事で測られるものではありません。今いる場所で動けなくても、そこから一歩を踏み出す力まで、誰にも奪うことはできません。

才能の有無で人を分けない社会へ。働く人も、働けない人も、働かない人も、共に支え合える社会へ。そんな社会になることを、心から願っています。

立ち止まりたいとき、制度があります。一人で抱え込まず、まず一歩、繋がってみませんか。

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*身体障害のみまたは精神障害のみの場合は現在就労されていることがご加入の条件です。
また、精神疾患は保障の対象外です。

執筆者プロフィール

川田祐一 (かわだ ゆういち)

株式会社障害者ドットコム代表取締役。主任相談支援専門員として自身も現場に立つ。自らも発達障害当事者であり、妻も障害当事者。「自己実現できる障害者を増やす」をミッションに、障害者向けWebメディア「障害者ドットコム」の運営、就労継続支援、計画相談支援、障害者雇用相談援助事業を行う。スタッフ17名中13名が障害当事者。

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