コラム

療育はほどほどに、普通児に近づけることが療育ではない

■療育の意味

早期発見→早期療育。子どもに発達障害があると分かると、療育を受けさせる親御さんも多いですね。でも、療育とは“健常児に近づけること”ではなく、子どもが日常生活を送りやすくするための方法を自身に学ばせること。

同時に周りが健常児の親ばかリで孤立無援の状態だった親が、同じ障害を持つ子を育てる保護者と交流が持て、居場所が見つかる。療育の様子を見学して親が支援の仕方を学ぶことが出来るなどのメリットがあります。

もし、「出来るだけ健常児に近づけるように」と療育してしまうとデメリットがあると私は感じています。

■慣れさせる練習は?

幼児期、聴覚過敏のある息子は公衆トイレのジェットタオルの音を怖がり、外出時、トイレに行けなくて困りました。そのため療育施設でこれに慣らす訓練を受けていました。

実際、ジェットタオルを怖がる自閉症児も多く、ママ友の中には家庭にまで設置し、親が“療育の先生”に変身し、練習をしている人もいました。でも、これでは家が“恐怖の館”になってしまいます。

息子は療育を施設内でトイレに行けなくなってしまいました。

当時、通っていた都立梅が丘病院の主治医に「ジェットタオルを使う練習をしている」と伝えました。すると「そんなことをしていると将来二次障害を起こして、入院することになりますよ!今すぐそんな練習は止めなさい。お母さんがジェットタオルが設置されていないトイレを探して、そこを使えば済むことです!」と叱られました。

病院には「健常児と同じことが出来るように」と親が引っ張り回した結果、鬱、リストカットなど深刻な二次障害を起こしている子どもが大勢入院していて、246床のベッドは満員でした。

そこで、医師に言われた通りジェットタオルがない公衆トイレを使うようにしました。

(一例)
・井の頭線の駅にはジェットタオルがない
・久我山駅 綺麗なトイレだがジェットタオルがない
・東急デパート  全部設置
・デニーズ 豪徳寺店 車椅子用トイレのみ。だから一人用のトイレなので、目の前で他人が使うことはない
・ジョナサン梅ヶ丘店 複数トイレに一個設置
・渋谷駅構内トイレ  汚い古いトイレ もちろんない
・ガスト 世田谷店  複数トイレに一個設置
(上記は2005年時点の情報)

それまでは、外出時にトイレを我慢している様子でしたが、私と一緒のときは公衆トイレに入れるようになりました。

これは中学生の頃、ボーリングに行ったときの写真です。

幼児期はあんなに怖がっていたのに、ふと見たら嬉しそうな顔で使っていました。

■トイレ大好きな青年に!

いつしか、トイレは息子にとって恐怖の場所ではなく、こだわりの場所になっていったようです。今や、息子が一番好きなのは公衆トイレなのです!便座のメーカーや型番をチェックするのが大好きで、トイレを見ると吸い込まれるように入っていきます。書くのもトイレのことばかり。

あんなに拒否し、怖がっていたのに、面白いですよね。

「幼い頃に親が安心安全を確保してやれば、本人の力で自然に乗り越えられるようになるんだ」と感じました。

「療育で自閉症を治す」と奮い立っていたり、誤った考えを持っていたりする人もいます。けれども、普通児に近づける療育は将来二次障害を起こします。子どもが幼いうちは“親はオアシス”でいて安心、安全を与える、そうすれば「この世は安全なんだ」と体験することで、不安なことにも挑戦できるようになるのだと思います。

誰のための療育なのか?「療育はほどほどに」の考え方も大切にしたいですね。

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立石美津子(たていし みつこ)  

20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル

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