コラム

出生前診断ではわからない障害

新型出生前診断。母体の負担もなく簡単に出来る検査が広がりつつあります。陽性の場合、診断確定のため羊水検査に進み、結果により「産む、産まない」の重い決断を迫られ、9割以上が中絶している現実があります。

検査でわかる染色体異常は胎児に見られる異常のうち1/4を占めるに過ぎず、陰性であっても病気や障害がないとは言えません。分娩時の事故で障害を負ったり、視覚障害や聴覚障害、発達障害かどうかは検査ではわかりません。

18年前、私は羊水検査を受けました。事前検査のトリプルマーカーテストで「ダウン症候群の疑いあり」と言われたからです。号泣していると医師から「どんな子でも産むつもりだったら最初から検査を受けないでしょう!」と嫌みたっぷりのことばで叱責されました。結果はダウン症なかったのですが、2年後自閉症と診断されました。

息子は自傷行為が激しく身体が傷だらけ。「一生これが続くのではないか」と絶望的な気持ちになりました。そして人懐っこい笑顔のダウン症児を見て「羨ましいな、可愛いな」とまで思いました。ダウン症児にも軽重がありますが、言葉がなくても表情を通して少なくとも息子よりは意思疎通がとれていたからです。

そして「羊水検査を受けたことはつくづく意味がなかった」と思いました。

■障害の受容とは

健康な赤ちゃんを授かったとしても、病気、事故、精神疾患を患うなど人生には予期しないことが起こります。

そんな中、どんな子どもでも受け入れ、育てる過程で親になっていくのだと思います。

「友達と遊ぶべきだ」「偏食はいけない」など、今まで築いてきた「こうあるべき」と決めつけていた価値観がガラガラと崩れ、私自身が“普通という名の呪縛”から解放され、世界が広がりました。

■正しい知識を持って、選択できるように

「第1子に染色体異常があったので検査を受ける」「親亡きあと兄弟に負担がかかる」と考え、出生前診断を受ける人もいます。家庭によって事情がありますので是非は問えません。

ただ、人は“分からないこと・見えないこと”には不安を抱きます。「うちにはお金がないから、障害児を育てられない」と漠然と考えて中絶する人もいます。

でも、障害がある子どもを育てる家庭には、特別児童扶養手当や税の減免等もあり、様々な福祉サービスが用意されています。都立の特別支援学校高等部は月額授業料は100円です。

■実際に会って聞いてほしい

私は障害児のコミュニティの中で日常を送っていますが、息子よりもはるかに重い障害の子も沢山います。

感じることは、障害の重さに「軽重」はないということ。良くしゃべる知的遅れのない発達障害の子は苛めに遭うなど人間関係でつまずき不登校、引きこもり発展し辛い毎日を送っています。

重い自閉症の子の親は片時も目を離せず神経が休まりません。それぞれの家庭に子育ての苦しみ喜びがあり、懸命に育てています。

そして、周りの親たちは苦労はあっても少なくとも悲壮感満載ではなく、それなりに日々、楽しんで生きているように見えます。

これはかけがえのない我が子を育てているという親自らの存在価値を感じることができることと、普通という呪縛から解放されているからだと思います。

出生前診断のハードルが低くなった昨今、ネットを検索すれば「当院では簡単に検査が出来ます」の広告の情報が溢れています。

着床前診断も範囲が広がることになりました。もし検査を認めるのであれば、産まれても生きながらえることが難しい重い障害に限定するなど、国としてのルールを決めてほしいとと思います。

「障害があっても何とかなった」。私より背が高くなった息子を見て、心からそう思えます。

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立石美津子(たていし みつこ)  

20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など著書多数。『発達障害に生まれて(ノンフィクション)』のモデル

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